以前のブログで”コモンの「自治」諭”のバッドニュースとグッドニュースが相半ばする内容を紹介したので、今回は私の感想。

 

 

改めて本の位置付けを大まかにおさらいしておくと:

SDGsは現代のアヘンである。

⇒やってる感だけで解決する程、17項目の各課題は甘くない。

⇒少なくとも温暖化等の地球環境を改善するには脱資本主義が必須。

⇒その為には政府任せにするのではなく、市民が自分達で将来のありたい姿を考え、対話して政策を決めて行く「自治」が不可欠

⇒日本で実現させる上での問題点と可能性は?

という様な流れで、バッドニュースとグッドニュースが紹介される訳だ。

 

私は斎藤教授の姿勢には感銘を受けて居り、同氏の説く脱資本主義が実現出来れば多分良い世の中になるだろうと感じる。

 

但し、斎藤教授の目指す「自治」の為には大多数の人が傍観者では無く自分事として行動する事が必要になるが、直観的には「2:6:2の法則」(末尾の※参照)が頭に浮かんで気になってしまう。これは良い悪いではなく、人間のDNAに組み込まれている様な気質だろうと思うだけに、一筋縄では行かない。

 

但し斎藤教授も言っている様に、最初に3%の人が本気で動き出せば物事は大きく変わり得る、という考え方もある。

そう言えば以前見たTEDの「社会運動はどうやって起こすか」は3分で面白く纏まっている印象的なプレゼンだが、最初の1人よりも同調する2人目が鍵になる、という様な内容であり、斎藤教授の考えに通じる。

 

此処で私の経験したマンションの理事長の話。

以前東京のマンションに住んで居た時に、当初は管理組合の理事会活動には無関心で全く参加した事が無く、自分の住んでる建物の維持管理も災害対策もコミュニティ活性化も全てお任せ状態だった。10年近く済んだ頃に「抽選で理事役に選出されました」との案内が来て、エッ面倒だな、と気乗りがしなかったのだが、仕方なく最初の理事会に出席した。自己紹介の次に役割決めの抽選があって、たまたま副理事長に当たってしまい、1年間務めた後の2年目は持ち上がりで理事長を務めざるを得なくなった。

当初は逃げ腰だったものの、2年間理事会運営に携わりマンション管理の諸問題を理解し議論を進める内に、自然と問題意識は強くなり主体的に取り組む様になっていた。任期2年の理事退任後も施設部会という下部組織に留まり、施設全般の課題解決・長期修繕計画の見直し等に継続して取り組んだ。要するに理事になる前と後では意識が様変わりして、自分達の住む場所は自分達で管理するという当たり前の事に気が付けた訳だ。此の心の変化は押しなべてどの理事にも共通している様で、「コモンの自治論」に出て来る杉並区長の話に比べると細やかな自治意識だが、日本人の自治を考える上で少しは希望を感じられる処だ。

 

言ってみれば、人は置かれた立場で2:6:2のグループを上に移動する事も出来るし、それもDNAの一部という気はする。但し、上に移動した人と入れ替わりで、下に移動する人も出て来るだろうからモヤモヤは残るが、TEDプレゼンのメカニズムにも期待したい。

 

(※)262の法則:

「262の法則」 とは、 人間は集団になると必ず、自分で考えてリードする人(主体的・優秀)・指示に従う人(受動的・凡庸)・従わない人(不満分子)に分かれ、その比率が2:6:2になるという様な考え方 。不満分子2を除外しても残った人の2割が新たな不満分子として現れるし、逆に優秀な2を除外しても残った人から新たに優秀な2割が現れる。主体的で優秀な人ばかりを10集めても、その内6は受動的になり、2は不満分子になる。逆に不満分子ばかりを10集めても、その内2は主体的にリードする人になり、6は受動的に従う様になる。人は相手との間合いを見切って、無意識に自分の振る舞いを決める本能的なものがある様だ。