前回に続き協生農法の話。

 

無肥料・無農薬の農法として私が知る限りでは、福岡正信氏の粘土団子の自然農法が最も人の手を加えないやり方と思うが、事業としての農業としては奇跡のリンゴの木村秋則氏の自然栽培があり、福井県では既に農協が推進している。他にも私が現在取組中の吉田俊道氏の菌ちゃん農法は、菌ちゃんファームで事業性も実証されている。

 

協生農法も無肥料・無農薬であり、生態系に着目して協成農法を推進し始めたのは、“ムーさん”と呼ばれている大塚隆さんで、三重県伊勢市で実験農場を持ち、講習会も開いているそうだ。そしてソニーコンピューターサイエンスの船橋博士が、ITを取り入れてAIの力も生かした生態系構築の最適化を目指している。

(TBS放送内容のホームページ)

ITを駆使して人工的に生態系を設計すると聞くと、明らかに福岡正信氏の自然農法とは別物という事が判る。「人間の知恵は何でも自然を壊す」「一番大事なのは自然に任せて何もしない事」と提唱した福岡正信氏からすれば、協生農法も邪道に見えてしまいそうで、その辺りを少し考えてみた。

 

ジャレドダイアモンドの「銃病原菌鉄」や藤井一至氏の「大地の五億年」を思い出しながら書くと、狩猟採集民の時代では生きる為に野生動物を捕獲し過ぎて獲れる動物が減り生き人類は残りが難しくなった様だ。そして1万年前の農業革命では人口急増を補う食料を得る見返りに土壌劣化が始まった。産業革命以降では人口爆発を支える食料増産が必須の命題となる中で、ハーバーボッシュ法(空気中の窒素を反応性窒素に変えて化成肥料を生成:ノーベル賞受賞)が発明された結果、飢餓は回避されたものの、過剰に投入され始めた化成肥料により有機微生物と腐植が減少して、土壌に固定されていた炭素がCO2として待機中に放出される様になった。更には温室効果がCO2の300倍もある一酸化二窒素N2Oの大気放出も加わり、現在の地球温暖化促進の大きな要因となった。

 

要するに、人類はその人口増加に対応する都度、地球を住み難い環境にする歴史を繰り返している。そう考えると「人類という存在そのものが、自分達の住む地球の自然環境を住み難いものにする」という不都合な真実を再認識させられる。

 

人類が此処で大きく舵を切って、住み易い地球環境に戻すとすれば、福岡正信氏の生き方は理想と思えるが、地球全体をそのスタイルで覆いつくす事は至難の業と言わざるを得ない。敢えて其処を目指すとすれば、その過程では妥協というか現実的なアプローチが必須であり、協生農法はそのチャレンジとも言えるので、福岡正信氏には受けないかも知れないが、私としては期待したい農法の一つだ。

 

続きは次回