前回karte.194「僕らはやらかし続ける」14巻12話目

次回karte.195「僕らは回り続ける」14巻13話目

ついにkarte.195が完結しました
14巻の各話ページ数は
10、10、10、10、8、10、10、8、10、10、10、10、10、
13話で合計126ページ消費しています
14巻の総ページ数は176ページだと判明していますから
残り50ページ
これには目次なども含まれますから残り話数は4話と推測できます
(あるいはここから話数は12ページ以上の長尺が連続するなら3話)

どちらにしろ、次回karte.196から始まるエピソードが
僕ヤバの最終エピソードになりそうですね
そこで、これまで書いてきた感想投稿のまとめ、振り返りをやってみたいと思います
伏線を整理してみる記事ですが、
新しい内容などはないので以下を読んでいただけているなら不要な内容かもしれません

 

僕の心のヤバイやつ 12巻考察
僕の心のヤバイやつ 感想karte.169~karte.178
karte.179「僕は後押ししたい」感想 13巻11話目
僕の心のヤバイやつ 12巻考察番外編:表の解釈
karte.180「私は積もり積もる」感想 13巻12話目
karte.181「僕はくそゴミ」感想 13巻13話目
karte.182「僕らはまた愛おしくなる」感想 13巻14話目
13巻読了
karte.183「僕は戦闘開始」感想 14巻1話目
karte.184「僕は腫れ物」感想 14巻2話目
karte.185「僕は支えられている」感想 14巻3話目
karte.186「私のできること」14巻4話目
karte.187「僕は決戦前夜」14巻5話目
karte.188「僕らはいつも一緒だ」14巻6話目
karte.189「僕はひとりじゃない」14巻7話目
karte.190「僕は発表する」14巻8話目
karte.191「私たちは祝う」14巻9話目
karte.192「僕らは進路が決まらない」14巻10話目
karte.193「僕はいつもはぐれる」14巻11話目
市川香菜物語
karte.194「僕らはやらかし続ける」14巻12話目

わたしが感想、考察をやり始めたのは11巻12巻のエピソードからでした
12巻はストーリーに2通りの解釈が可能なトリックスタイルだったんですが
あまり広まっていなかったので解説を書くことにしました

11巻のストーリーには重大なミスリードが仕掛けられていました
それは、山田の事務所に恋愛禁止令なるものは「存在しない」という事です
karte.195まで読み終えた知識で改めて読み返してみると
恋愛禁止令の不存在は明白であると思うんですがどうでしょうか

恋愛禁止なるワードが作品に登場したのは5巻karte.67
太田の台詞からでした
この時は誰からも相手にされていなかったんですが、
6巻karte.81で、諏訪さんからもそれらしいことを言われます
ただしこのとき諏訪さんが言ったのは
「彼氏が居ることで仕事に支障をきたすと判断した場合は」
と条件が提示されたものでした
ただしこの時の諏訪さんの表情は真剣で、どこか不気味さもあり、
読者に対しては大きな伏線として印象に刻まれていたと思います
11巻はそんなところから繋がっています

物語が動き出したのはkarte.143からですね
京太郎たちの第十二中学でも校内ではスマホの電源オフの校則が作られるのですが
山田が言うにはそれが自分の事務所の働きかけではないか?というんですね
本当でしょうか?
ある芸能事務所が公立中学校に何らかの申し入れをし、
山田一人のために学校は校則を新設する対応をした?
よく考えてみると現実味のない話ですよね
中学校でスマホの電源オフは当たり前のルールです
持ち込み自体が禁止でもおかしくないくらいだと思います
確かな事実は山田の動画が思いの外のヒットをし
そのことで事務所が学校での反応を聞いてきたところまで、です
それ以外の部分で山田の言っていることはあくまで推測なんですね

karte.144ではさらにショッキングなことが起こります
京太郎と山田がフラモブ事件の標的になり、
衆目の前で山田に告白するよう促されます
京太郎は今後の学校での立ち回りを考えて、
この場は嘘で乗り切り、山田に自分を振るようにサインを送ります

ここで起っていたことは今一度精査しなければなりません
山田に嘘を付くよう指示を出したのは京太郎であり、
山田の行動は京太郎の指図に従った結果でした
指示がなければ山田はこの告白を受けていただろうということです
事務所は関係ないんですね
このあと、山田は京太郎に嘘を付かせたことを謝っています
山田にもここで交際を明らかにすることで
騒ぎにするのは得策ではないという判断がありました
ただしこれを山田の自己保身の行動だと解釈するのは早計です
山田が最も気にしたのは京太郎に注目が集まってしまう事でしょう
karte.191で山田ママが考えていたような目に逢わせることを危惧したんですね

しかし京太郎の中では、山田の事務所が山田に恋人ができることを
問題視しているのではないかという疑念が生まれています
それを補強してしまったのがkarte.145の足立でした
足立の言っていることは何の根拠もない推測なのですが
自分が危惧していたことをはっきりと他人からも言われたことで
京太郎の中の疑念が根拠を帯びるんですね

karte.149ではそれについて、京太郎と山田が作戦会議を開きます
ここでのミスリードは見事でした
 「スタンスをはっきりさせるために話したほうが良いんじゃないか?」
→「スタンス?誰の?」
 {事務所だ」
 ・・・(山田は賛成も反対もしない・・・)
山田からは事務所のことなんて一言も出てきていないんですね

そして京太郎のメンタルを徹底的に破壊することになるのが
karte.153からの山田の文化祭欠席でした
この出来事は、山田が京太郎より事務所、仕事を取ったことを意味するでしょうか
そうではないんですね
山田の真意は11巻のおまけページで語っている通り
山田は迷路で出会うサプライズを仕掛けたかっただけなのです
山田にとっては、文化祭に生徒として出席するのと
欠席扱いで一般として参加して催しを堪能するのに違いはなかった

これは普段から仕事で学校行事を休むことが普通だった山田の感性が

他の生徒とは違っている部分かもしれません

諏訪さんの会話の真意はなんでしょう
諏訪さんたち事務所が恐れたのは、秋野杏奈の学校が特定されて
一般の公立学校やそこに通う生徒に結果的に迷惑が掛かってしまう事でした
つまり事務所が守ろうとしているものの中には「市川京太郎の生活の平穏」も含まれているんですね

3年1組の巨大迷路を体験することと京太郎と過ごす時間は確保されていて
目的が受験生である京太郎の生活の平穏を守ることだというなら
山田には事務所の指示を断る理由はなかったんですね

山田の事務所が二人の交際に反対している証拠はどこにも見つかりません
最近のエピソードではそれが特に謙虚になっています
山田は人前で京太郎と会っていても関係を隠そうとはしていませんね
karte.183では下校中に抱き合い
karte.188修岳館受験当日は会場まで送り迎え、男子校で山田は異常に目立っていたはずですね
karte.191ではバレンタインに二人で歩道を歩いています
karte.195の「もういいじゃん」は極めつけですね
これ以上隠す意味はないと言っているんです
これらシーン、山田は事務所から恋愛禁止の命令されているのに
背信行為をしているんでしょうか
命令以前に山田が京太郎と一緒に居るところをファンに見つけられることで
スキャンダルに発展して以後京太郎と会い辛くなることは心配はしていないんでしょうか

結論から言うと「していません」
そんな心配は、はじめから京太郎(と足立たち)の頭の中にしかないからです
山田の芸能人としての実力を京太郎が過大評価しすぎているシーンなら
山田の意見ならクラスで無条件に肯定されると思ったkarte.152、
山田が卒業文集のランキングを総なめにすると当たり前に考えたkarte.177、
いくらでもあると言えますね
将来的なポテンシャルはどうとして、現在の山田にそこまでの注目度はありません
山田の事務所の恋愛禁止令の存在は11巻に仕掛けられた巧妙なミスリードでした


しかし、事務所に山田の恋愛禁止を意図はない、という事実は
反対に恐ろしい事実を浮かび上がらせます
山田の事務所は交際に反対していないとしたら
「合格するまで外で会うのを止めよう」の決め事は何だったんでしょう
京太郎はなんのために必死で二人の関係を隠そうとしていたんでしょう
その正体はkarte.154
「山田は多分さ事務所に反対されたらきっとそれに従うんだ」
に集約されています
京太郎は山田が信じられなかった
いつか山田も自分の元を離れていく
それが大人になることだと諦めの気持ちを抱いてしまった
仕事とはそういうもの、大人になるとはそういうこと、
そんな言葉で片付けて山田のプライベートに理不尽な制約をかけていたのは
事務所の大人たちでも無責任なファンでもなく京太郎の心の弱さだったのです

12巻は京太郎の窮地を知った山田が
京太郎を救うべく立ち向かう反撃のエピソードとなります

京太郎の異変を察した山田が自宅に呼び出し、
京太郎が病を患っていたことを判明させるのがkarte.155~karte.157

原因が仕事への印象にあると目星をつけた山田は調査を開始
ドラマの印象を聞くことで探りを入れたkarte.159

京太郎のことには誰よりも詳しいおねえに相談したのがkarte.160

karte.161の山田が萌子に嫉妬しているなんて、最初に誰が言い出したでしょう
山田は自分の次に京太郎に近づいても警戒をされない萌子に協力を求めたんですね

karte.162で行われていたのは決死の作戦でした
おねえに聞いても京太郎の悩みの原因はわからなかった
そこで女子全員で取り囲んで、京太郎から直接聞きだしたのです
萌子でなければ思いつけない大胆な作戦でした

京太郎救出作戦の締めは山田と二人でつづくのライブを聴かせることでした
京太郎を客席まで連れてくる役割は萌子、
ニコを山田から引き離し山田を客席まで送り出す役割はおねえ、
作戦はすべて順調に進んでいるように見えました
しかし山田は直前で計画の誤りに気付きます
京太郎は友達と居る時には自分と居る時にはない安らかな表情をしていました
山田は、京太郎を追い詰めていた原因が自分だったことに気付いてしまいます
自分が姿を現しても、京太郎は心からライブを楽しむことは出来ない
それが山田が立ち去った理由だったんですね

karte.167からは京太郎と山田が学校内でも外でも会えない期間が続きます
しかし山田がこの期間、何もしていなかったわけはないでしょう
おそらく山田がこの間にやっていたことはkarte.185~karte.188と同じことです
それを京太郎にストレスを与えないために京太郎本人には気付かれることなく続けていました
本当は、山田は京太郎のすぐそばにずっと居たんですね
ただ京太郎が山田の存在に気付けていなかっただけなんです
これはkarte.154、karte.168のサブタイトルにも掛かっています

根幹の原因となっているのは、京太郎が山田を一生愛し続けても
山田の愛情は大人になるまで続かない
仕事と自分を天秤にかけたら山田は仕事を選ぶだろう、
山田の愛情を信じられない京太郎の心の弱さでした

争点はたった一つ、京太郎が山田を信じられるかどうかだったんです

そして変化が起こるのはkarte.168、12月24日です
問題が解決したのは京太郎が1年前と同じイルミネーションを見上げた時でした
ここで山田との思い出、
karte.1~karte.140までの間に育っていた京太郎の山田像と
karte.141~154の間に出来上がった山田に対するイメージが
京太郎の中でぶつかり合います
「山田は多分さ事務所に反対されたらきっとそれに従うんだ」
↑こんな世迷言が京太郎の中から一瞬で弾き飛ばされたのは言うまでもないことです

瞳から曇りが消えた京太郎はすぐに山田が近くに居ることに気付きます
ただし、山田はこの日だけ京太郎を追いかけていたのではありません
11月4日から時間の許す限り京太郎のそばに居続け、
自分が近くに居ることを示すメッセージも何度となく送っていた
京太郎がそれに気付けたのが12月24日だっただけのことでした

ここで京太郎が語った愛の言葉はこれからどんな苦難が訪れても、
ずっとそばにいる、離さないの決意でした
これはそのままkarte.154の自分の不安へのアンサーになっています

山田は、結局京太郎が何に悩んでいたのかについては知らないままでしたが
京太郎がずっと苦しんでいた悩みが解決した
もう自分が近くに居ても大丈夫なんだ、それだけはわかりました
山田の望みはただ京太郎が健やかであることだけでした
最後のやったーは京太郎の快気祝いを喜んでいたんですね
だから京太郎と一緒に走り出すシーンでラストを飾っています

12巻は、物語を2通りに解釈することが出来る仕掛けの施されたプロットで
しかも2つの解釈で物語の印象、キャラのイメージが完全に逆転する漫画史上に類を見ない完成度になっています

最大の違いとなるのは主役二人の印象でしょう
自分の仕事が原因で京太郎が追い詰められ、苦しんでいる中、
山田は事務所との問題を解決せず、
不満を京太郎にぶつけ、萌子に嫉妬したり、八つ当たりでライブに来なかったりと
幼稚で成長しないヒロインに見えるように描かれています
一方京太郎は、山田のためにすべての苦難を引き受け、
陰キャ男子だった彼が6歳も年上の大学生たちの諍いまで解決するという
異常な成長を果たしています

しかし真相は反対です
妄想で周囲に心配をかけ、周りの人からフォローされていたのは京太郎のほう
karte.159のおねえとの会話が山田が仕事を辞めるかどうかの相談
だと気付いたときはわたしもひっくり返りました
バンドの解散騒動も京太郎が解決させたわけではなかったんです
山田の相談を受け、京太郎のことでかかりきりになっていたおねえは
結果としてバンドやももちゃんとの関係をしばらく疎かにしてしまっていた
それが解散騒動の真相でした
話を整理するとももちゃんが悪かっただけなのに
おねえに悪いところはなかったのになんでおねえが先に謝ったのか
karte.165まで解散寸前のケンカしていた二人が
karte.166では親友の距離感で話をしている不自然さ
すべての原因は京太郎だったんです
山田はその間、方々に頭を下げ、京太郎を助けてほしい、
京太郎が元気になってくれるなら何もいらないとわが身を惜しまず行動していました
周りを動かしたのはそんな山田の健気さだったんですね

京太郎のためにライブに来ない、という判断は正しかったんでしょうか
karte.181で山田を怒らせたと思った京太郎は、
深夜に家を飛び出し、山田のマンション前で一晩過ごしています
受験4日前にしてあり得ない行動です
さらに受験に落ちてからの京太郎の奇行はその後も続き、ある種の山田依存症になり
修岳館受験日前日は山田の声が聴けなかっただけで不眠症になってしまいます
karte.168で大きな試練を乗り越え、
13巻からの同棲編でたっぷり山田に癒してもらった後ですらああだったんです
karte.166は京太郎の病状が最も深刻で最悪の時期でした
もし、山田がkarte.166で京太郎の前に現れていたら
京太郎は13巻終盤以上の極端な行動に走っていた可能性があったという事です


12巻のエピソードは二通りに解釈可能な2重構造でしたが13巻以降も誤解を解消しません
説明せずにそのまま2通りに解釈できるエピソードが続きます
同棲編のエピソードは、救出作戦に辛うじて勝利した山田が
その地位を盤石にするために画策を続けていたという視点を持つと
別のものが見えてきます

同棲編自体が山田のためではなく京太郎のために行われたものです
京太郎を癒すためにkarte.169でおねえが企てた作戦でした

karte.170は同棲編で最も重要なエピソードでした
ここで山田は外で会わない約束の撤回に成功しています
14巻で山田は明らかに交際を隠そうとはしていないシーンがありますが
それはkarte.154の決め事がここで無くなったからです
13巻までは京太郎から距離を取ろうとするシーンがありますが
あれは受験に集中してもらうためで、仕事は関係ありませんでしたね

karte.171karte.172は、12巻の間も山田は仕事も疎かにしていなかったこと
期待以上の成果を返すことで自分と京太郎との仲にはもう誰にも文句を言わせないことを示しています
そしてこれはkarte.81で示された諏訪さんからの交際の条件へのアンサー

事務所との問題なんてとっくに解決済だったということです

karte.173karte.174では協力してくれた恩人の萌子に先勝報告をしています

karte.175の両親実家訪問の意味は言うまでもないですね
両親実家に京太郎を認めさせました


13巻の後半からは学校が再開し受験編のエピソードが本格化します
ここからの1話1話、繋がりが薄いようで

13巻のラストに向けての伏線が仕掛けられています

karte.176

萌子がすごく魅力的に描かれています
萌子というキャラクターが、実は山田より京太郎と相性がいいのでは?と思わせる演出がされていますね

karte.177
山田は一足先に高校に合格し、すでに大人の世界で働いている山田には
中学受験は単なる通過点にしか見えていないのではという疑惑を植え付けます

karte.178karte.179,萌子の家に遊びに行く話
冒頭で、別れ際寂しそうにしている山田を描写しつつ、
京太郎に浮気を疑われるような態度を取らせているんですね
さらにラストでも寂しさにできなかった山田を入れて、ミスリードを大幅に補強
ここからのエピソードに説得力を持たせます

karte.180からの3話が13巻の最終エピソードです
山田が突然怒り出すエピソードで物語は非常に納得感の薄い決着を迎えることに成ります

状況を並べるとこうなります
karte.178 山田は別れ際に寂しそうな雰囲気で京太郎を見送る
karte.179 寂しさに耐えきれず、ワン太郎のせいにして電話してくる山田
karte.180 昨晩は萌子の家に行っていたことを知り、表情が曇る山田
karte.180 怒ってんだよ!!
karte.181 萌子の家に行ったことを黙っていたことを謝る京太郎→違うよ
karte.182 山田の怒った原因は寂しいのサインを少しもわかってやれなかったことだ!
karte.182 そうだよ→杏奈呼びで仲直り

話の流れとして何の矛盾もありません
なのに納得感が薄いのは読者の倫理観がこれでいいのかという疑問を発するため
山田が一時寂しい想いをしていたのは事実だとしても
それには受験に集中するためという正当な理由があるんですね
萌子の家に行ったのも「つづく」のためなんですから元を辿れば山田のため
京太郎に疑わしい点があった事は認めますが
読者は京太郎が潔白であることを知っています
怒りの原因は山田の我儘なんですから山田の成長で解決してほしかった

しかし12巻では、山田の仕事が原因で二人が自由に会えなくなったことが発端のトラブルなのに
原因は何も解決させないまま京太郎の「愛している」で
山田の気持ちの部分だけ鎮めて解決とした(ように見せた)前例があります
ミスリードのための偽装プロットなのに流れが完璧すぎますね
山田の心理描写はちゃんと説明できます
創作としてこれでいいのか?という疑問はありますが、
ストーリーは成立しているんですね

しかし12巻同様、これもフェイクですね
12巻の真相が、疑心暗鬼でおかしくなった京太郎を山田が救う物語だったとしたら
山田はこんな子ではありませんよね

謎を解くためのヒントは1年以上前から仕掛けられていました
12巻の最初まで遡って京太郎の行動を追いかける必要があります
karte.155で、京太郎は模試で壊滅的な点数を取りました
直後の小テストも同様で、成績の下落は一時の過ちではなかった
karte.163でも成績は多少回復してきた程度です
しかしkarte.167では京太郎は萌子に合格圏内であると語っています

巻の冒頭でショックな成績だったのに同じ巻の終盤では合格圏内だというのは矛盾しています
(karte.167は11月ですが、11月模試は10月より良くなっているしても)
京太郎の本当の成績は合格圏内でも何でもありませんでした
karte.176で合格率64%という数字を絶妙と評したことからもそれが分かります
1月模試の64%が京太郎にとって「絶妙」だったのは
11月12月の模試もそれと同じ程度か、あるいはそれより悪かったためです
karte.167で京太郎が言った合格圏内は「嘘」なんです
この時の京太郎は悪い成績を隠すようになっていたんですね(karte.159)

おそらく京太郎自身には、嘘を付いている自覚が薄かったのではないかと思います
karte.167と言えば京太郎の心の病が最悪だった時期です
13巻終盤からの奇行は読者に見える形になったのがそのあたりからというだけで、
本当はkarte.154から始まっていたんですね

京太郎の成績が順調だと信じていたのは萌子だけではありませんでした
karte.183ではおねえと市川母も合格圏内だと話しています
なんと京太郎は親や家族にも嘘を付いていたんですね
本命の合格率64%だったのになぜ(勉強時間15時間の)おねえが
karte.178では試験日直前の外出を許したんでしょうか
おねえはこの時も京太郎の成績をA判定だと疑っていなかったからです
しかし京太郎の本当の成績を知っている者が居ました、山田ですね
山田はkarte.183ではっきり渋谷幕有はA判定だと言っています
山田は1月3日に模試があることは知っています(karte.174)
山田は留守番を任される程度に市川家から信頼されていますから(karte.182)
京太郎の試験の成績がバレていても不思議はないでしょう
つまりkarte.180の時点で山田だけが
京太郎の本当の成績はC判定とB判定を行ったり来たりで
それを姉や両親にはA判定だと嘘を付いていて、
騙して遊びに行く許可を貰っていたことを知っていたということです

山田が激昂するのはいたって自然な反応だと言えます
「京たろッ」
「なんだよ」
「なんだと思う?」
の流れも原因が京太郎の嘘にあったから、だったんですね

karte.181でケンカ別れした後も、
山田の願いは今は自分のことには構わず勉強だけに集中してくれることでした
だからLINEにも出ません
山田にしてみれば京太郎が深夜にマンションに来るなんて、完全に想定外です
京太郎の行動は山田の意図とはことごとく正反対だったんですね

そして、karte.182
京太郎が二晩考えて出した答えは「原因は山田の寂しさを無視したこと」
京太郎は今度も答えを間違えてしまいます
山田は大きな選択を迫られました
これまでのことを全部ぶちまけるか、自分を偽って京太郎の言い分を飲み込むか、
山田はなんとしても京太郎を合格させたかった
そのためなら自分の全てを捧げても構わなかった
「そうだよ」は嘘だったんですね

京太郎のトラウマ脱却が掛かった受験を「どうでもいいこと」と言わせることは
山田にとっては尊厳を捨てさせるに等しい行為だといえるでしょう
誕生日に嘘を付くよう強要し、
外食に行っても席を立って20分も姿を消し、
外で会うな、学校でも話しかけるな、図書室で近づくな、
京太郎が山田のためと思ってしていた行為は実際には山田を傷つけることばかりでした
それでも山田は京太郎のためにならどんな苦痛にも耐えてしまうのです

もしかしたら受け入れがたいことを書いているかもしれません
京太郎が最低のモラハラDV野郎だとそう書いているように感じられるかもしれません
そう感じられたなら、たぶんそれで正しいです

14巻の前半は、第二志望校の不合格から始まり、京太郎の転落が描かれるようになります
他者に八つ当たりし、自分でメンタルを保つこともできなくなりますが
物語はそれでも必死で支えようとする山田を中心に進んでいきます
もっとも京太郎は別に最近おかしくなったわけではないんですね
本当は11巻の中盤辺りからずっとおかしかったんです
それをおかしく見えないように描いてたただけなんですね
反対に、これまでは我儘で幼稚に描かれてきた山田が
今度は甲斐甲斐しく京太郎の世話をする頼もしい女性として描くようになりました

karte.188では京太郎が山田への感謝を述べています
僕の心のヤバイやつは京太郎の一人称、京太郎の認識する世界が描かれています
キャラクターの描かれ方の変化は京太郎の認識の変化です
山田が輝きだしたのは京太郎がkarte.154から続く病から解放された証拠
試験日当日の朝にして、京太郎の成長はやっとkarte.142の水準まで戻ってくることが出来ました
これが京太郎が修岳館に合格できた決め手だったというわけです

karte.190karte.191で京太郎と山田は合格を喜び合います
しかし二人が感じている合格の喜びは「同じもの」ではないでしょう
京太郎は山田がここまでにどれだけの犠牲を払ってきたかを知らないからです

と、いうところまでは私が理解している現在までの物語の概要となります
非常に複雑に絡み合った伏線が展開されていますね
荒唐無稽な解釈でしょうか
karte.143からミスリードが始まっていた?
karte.143といえば公開は2024年の4月です
2年以上の年月、世界中の読者が騙されていたというんでしょうか
コミックは1冊50万部以上、
最新話がネットで無料で視聴可能で読者の延べ人数で言えば数百万人?
考察を扱っているコミュニティは世界中に存在します
全員が全員、気付かなかったというんでしょうか
山田の事務所の恋愛禁止令は「存在する」ものと解釈して物語を読み進めても
これまでの物語の解釈に致命的な破綻はありませんでした
二通りの解釈が可能な物語が2年以上前から密かに展開していたんでしょうか
常識で考えるならあり得ないと考えるのが普通だと思います
もし意見があればコメントにて教えていただけると嬉しいです

(2026/8/3UP)

 

次回karte.195「僕らは回り続ける」14巻13話目