10/11のエントリーでご紹介した、Yuji村上さんの作品集

  Starting Members
 ~Yuji村上 カードマジック作品集~

 ……ですが、好評につき、版元から全ての在庫を出荷したそうです。


 マジックショップ、ネットショップにある分がなくなると品切れになるため、「どうしようかな」と思ってる方は是非、お早めにお求め下さい。


(現時点では、再版の計画がありません。マジックに限らず、専門的な書籍はなかなか再版されないもののようです)
 週一回、カズ・カタヤマさんのレッスンに参加しています。

 カリキュラムは、通年のものと、1演目だけを習う場合があります。
 また、コンベンションやショーの前には特訓を行いますが、そうでない時は年間予定に沿ったカリキュラムをこなしていきます。

 これは、プロによるプロのためのレッスンです。
 基礎からのマジック教室ではあるのですが、なにしろ教材が実践派のプロが現場で改良してきたレパートリーなので、ひとつを行うのにもかなりの練習を要します。
 しかし習得できれば、他のマジックにも広く応用できる技術や考え方が数多く含まれています。

 クロースアップ、ステージをそれぞれ二つくらいずつ、順に行います。
 一般的なマジック教室とかなり違うのは、「手順を覚える」だけではない、という事です。むしろその次の、「細かな注意点に沿って行う」、「完成度を高めて実際に使えるようにする」、という段階が重要です。
 マジックはあくまで、実演できる事に意味がある訳です。

 演じる相手によって、注意点が変わるというのも大事な所です。
 たとえば、観客がイベントに来た若年層の場合、幼稚園でのショーの場合、酒場の酔客の場合と、それぞれ演技で注意する点が変わります。歳若いバーマジシャンは、たいてい子供が苦手ですが、それは「子供を制御しつつ遊ぶ」という経験がないせいだったりします。

 ……考えてみれば、エンターティメントの中でも、こんな広い観客層をいつも相手にしている職業も、少ないかもしれませんね。
 他の裾野の広い芸能、たとえば音楽やお笑いなどは、逆に言えばそれぞれのファンを相手にしている訳です。


 さて、そんな訳で、レッスンでは実践的なカリキュラムが進む訳ですが、では、何を行っているのかというと。
 
 今週を例にとると、カードコントロールを使う演目、コインのサロン向け手順、四つ玉の手順、でした。
 四つ玉は、比較的難しいとされる演目ですが、カタヤマさん曰く、こんな利点があるんだそうです。


「難しい割に地味で、これを演目として見せるには力量が必要」
 

 ……まあ、確かに、出るだけで歓声が上がる「ハト」とは対極みたいな演目です。
 四つ玉で拍手をもらうのは大変なので、これで拍手を取れるようになれば、まず他の演目もOK。
 そういった意味では「教材」兼「実用演目」にして「力量チェック」の演目でしょうね。

 常に練習を行う、というのが大事なので、おそらくレッスンの大きな目的の一つが「課題を通じて練習する習慣をつける」ことにある気がします。


 小池一夫さん、という劇画の原作者の人が「劇画村塾」というコミック作者と原作者の養成学校を持っていたことがあります。(「うる星やつら」「めぞん一刻」の高橋留美子さんが一期生でした)
 そこで最初に言われる、漫画家に最も大事な事は、「机の前に座り続ける事」だったそうです。

 漫画家ほど何日も徹夜はしないまでも、マジシャンも鏡の前や机の前にずっと居続けて練習します。
 おそらくそれは、基本にして極意なんだろうな、と思う訳です。
 ダンスやドラムをやった事がある人には、常識なのかもしれませんが……

 リズムは、体感そのままでは必ずズレるため、意識的に補正する必要があります。
 このズレには、特定のパターンがあります。
 たとえば学園祭などで聞く、ドラム初心者の演奏には「なんかズレてるよな」という感じがありますが、それは自分でやってみると、まさにそのまんまのズレ方をします。

・フィル・インでズレる
 演奏のアクセントとして入れる「ダカドコドンタン」みたいなフレーズ、いわゆる「オカズ」ですが、これをやると必ずリズムが早くなります。
 要するに、倍とか四倍とかの早いテンポを混ぜると、正確に倍や四倍では打てない訳ですが、これを正確なリズムに補正しようとすると逆に「どんどん遅くなる」感じが必要になります。「え、こんな遅くするの?」と感じるくらい、正確なテンポと体感に差があります。

・演奏していくうちにズレる
 いわゆる「走る」というヤツです。
 最初は合っていても、一曲の演奏の終わり頃にはかなり早くなっています。
 知り合いのドラマーの意見では「演奏すると脈拍が上がるから」なんだそうです。

・時間帯でズレる
 朝は遅く、夜は早くなります。
 これも想像以上の差があって、メトロノームで計ってみると驚きます。


 ドラムだけでなく、音に合わせて動く場合も同じです。BGMは正確なリズムなのに、動きのリズムがズレてると合わなくなる訳です。

 リズムの意識的な補正は、よく言う「リズムに乗る」感じとはかなり異質です。
 むしろ「理性で調節」という感じなので、それが舞台上で無意識に行えるようになるには相当な訓練が必要でしょう。
 マジックの場合は、複雑な動きを行いながらの事なので、余計に無意識に刻み込んでおく必要があります。

 リズムに限らないのですが、自分の意図と表現されたものがズレているのに気づかないと、どれだけ練習しても直りません。指摘してくれる観客や指導者が居ればいいのですが、そうでない場合は客観的に自分を見るための道具として、ビデオの活用が必要な所でしょう。
 かつて演劇の舞台に出演した時、ダンスのシーンがありました。
 上手い人のダンスは見ていて気持ちがいいのですが、その時は具体的に何が違うのかがよくわかりませんでした。

 漠然と意識していたリズム感というもの。
 言葉で言えないものは体験しないとわからない、という事はよくあります。
 おそらく、リズム感もその類いのものでしょう。

「気持ちのいい」リズムの正体を探ってみよう、と思い立ちました。
 マジックも音楽に合わせて動くのはダンスと同じです。体験してみて何かが掴めれば、きっと舞台で役に立つはずです。


 リズムと言うならば、とりあえず思い付くのは楽器のドラムです。これを練習してみてはどうか?という訳で、まずは入門の本を読んで、初心者向け練習をやってみました。

 膝を手で叩いてみる。
 雑誌を棒で叩いてみる。

 ……2分で飽きました。単調すぎてむしろ苦痛です。
 これはたぶん、実際のドラムを叩いた事がある人が、それをイメージしながら復習するための方法でしょう。

 飽きない方法と言うなら、これか?という事で、ゲームセンターにあるドラム演奏のゲームをやってみました。
 とりあえず、ドラマーっぽい動きはできますが……リズムの方はそんなに正確でなくてもいいみたいです。
 あくまでゲームなので、リズムを身に付けるためのものではなかったようです。

 それじゃあ!という訳で、楽器メーカーから出ているドラム練習パッドを買ってみました。
 正確なリズムで叩いた時だけ音が出る、というものです。

 ……え?ぜんぜん鳴らない?こんなに難しいの?!
 いきなり高レベルを求められました。ゲームと演奏練習の差はかなり大きいようです。

 うーむ。
 いやこれはなかなか。

 ……ちょっとハマりました。難しいと、つい練習してしまうのはマジシャンの性のようです。


 しばらく練習してみて、わかった事は。
 リズムに沿って動くのではなく、リズムを生み出す、と言う感覚が必要なようです。
 叩いて音を出す行為には、いろいろと予備動作が必要なんですね。その必要な動作にかかる時間も計算に入れて動かないと、正確なタイミングになりません。
 頭の中で刻んでいるリズムと、それが手を通して外に伝わった時の動きには、微妙なズレが起きるのです。

 おそらく、この「一連の動きを計算して、結果を正確なリズムにする」感覚が、リズム感の中でも大きな要素なんじゃないでしょうか。
 そしてこの感覚の有る無しが、ダンスの動きが見ていて気持ちいい人とそうでない人の差なんじゃないかな、と思いました。

 そしてもう一つ、体験して分かったのが、「リズムはズレやすいポイントがある」、という事です。

(続きます)
 何度か演劇の舞台に立ちました。
「マジシャン」とか「魔導師」みたいな役です。
 暗示にかかりやすい体質なので、それを利用して、芝居に出る時は自己暗示をかけまくります。

 白戸三平さんの「カムイ伝」で、忍者「赤目」が蝋燭の炎を見ながら自己暗示をかけ、町人になりきるシーンがありますけど、そんな感じです。

 うまく行けば、普段の自分とはかなり違う感じの、リアルな役作りができます。
 ただ、この方法には弊害があるんですよね。

 自己暗示は、解けない事があるのです。
 しかも、一週間くらい経ってから、より強くなっている事があります。

 最初にこの方法を使った時は、本番の舞台の10日後に天からの啓示が降りてきました。
 これから世界に起こる厄災が見えます。
 おお、これより7年の後のクリスマス、空を渡るものは地をえぐり、海は赤く煮え、人は慟哭を・・・


 ってノストラダムスかッ!

 えー、どういうワケか、自己暗示が暴走した結果、預言者になっていたようです。たぶん、浮かぶイメージは映画とかTVの、今まで見たものを脳内でテキトーに合成したものですね。

 それにしてもまあ、この手の宗教的な神秘体験って、簡単に実現できるものですねぇ。むしろその簡単さに驚きますよ。
 小学生向け入門書シリーズとして「あなたは預言者」とか「あなたも教祖」とか、そんなトンデモ本を書いてみたくなります。間違いなく親御さんからの苦情続出でしょう。

 とりあえず、こいつは自己暗示を解かないとヤバい、という訳で買って来たのが加藤留吉・高木重朗著「催眠技法の事典」。
 高木先生はマジックの解説書で有名な方ですが、こんな所でもお世話になっております。
 加藤留吉さん、某マジックコンベンションで行ったという催眠レクチュアには行けませんでしたが、この本はとてもわかりやすかったです。

 自己暗示は、暗示のかかるシステムを理解するだけでも解けます。理解をするという事が、かなり深層の心理まで影響します。
 幽霊は正体が「わかる」と、もう恐くはないのです。
 さらに「解く」暗示を行うと、はっきり解くことができます。

 読み始めて30分くらいで元通りになりました。ふぅ。
 自己暗示はほどほどにしないと、心身に悪いですね。


 なお、この話を実家の母にした所、「フツーは啓示は女性に来るものだけど、まさかあんたに降りてくるとはねぇ!」と大笑いされた上、うっかりそういう事言うと、田舎にある社とか祠とか掃除するハメになって大変なんだからやめてくれないそういうの、というまったくもって不信心な注意のされ方をしました。

 いや、別にこれは宗教とか関係ないんですが・・・
 まあ、「実用として」は、そういう用途にも使われてるので、うかつにそっちの道に行かないよう気をつけなさい、という事でしょう。

 田舎の信心深い年寄りって、別に疑う事を知らない純朴な人とかではなく、それはそれで現実的なんだよな、と思う所です。