ゴム製のボールは、マジック用として売られているものもありますが、今回の話はマジック用品ではなく「単なるゴムのボール」についてです。


ボールのサイズ

 ボールの演技のタイトルに「増えるビリヤードボール」と書かれたものをよく見ますが、実際のビリヤードボールは公式競技用で直径57.1mmあります。
 これはさすがに、指に挟むには大きすぎます。
 名人・カーディニは、このサイズに近いものを使っていたそうですが、映像で見る限りは四個ではなく、一個の扱いが主なようです。

 素材として手に入るゴムボールは、だいたい1cmごとのサイズが多く、ステージで使えるものは直径4cmか5cmです。
 玩具店やガシャポンで手に入る、いわゆる「スーパーボール」も3cm、4cm、5cmというサイズになっています。
 東急ハンズで売っているスーパーボールは、なぜか47mmです。マジック用品のサイズである45mmに近いので、私はこれをよく使います。


色が様々

 マジック用品として売られているような45~50mmの白色の玉は、他の分野ではまず見つかりません。
 シンプルな形状なのであまり意識されていませんが、あれはあれでマジックの世界でしか使わない品物だと思います。

 白いゴムボールも無い訳ではないのですが、たいていはサッカーボールのミニチュアなど、模様が入っています。
 シンプルな白がない代わりに、ゴムのボールには、赤・マゼンタ・青・緑・黄・黒・透明といったカラーバリエーションが豊富です。
 玩具問屋に行くと、ラメ入りや梨地、マーブル模様のものもあります。スポーツのボールを模したものもありますね。
 黄色や緑なら明度も高いので、舞台でもよく見えます。

 ただし、ゴムボールは時間が経つと色が変わる、という事には注意が必要です。一個無くしたりして後から買い足すと、色がぜんぜん合いません。だんだん透明感がなくなって、プラスチックっぽい質感になってきます。
 演出によっては、逆に数年置いて、色がスーパーボールっぽくなくなった所で使う、という手もあります。


値段が安い

 玩具卸なら一個数十円、ガシャポンで100円、東急ハンズで170円。
 ただ、卸では色が選べないので、同じ色を数個買うだけなら、東急ハンズが割安かもしれません。
 いずれにしても、マジック用品として売られているものよりは、はるかに安いものです。


使い方の注意

・摩擦が大きいため、シルクと一緒には使い辛いので、この場合は通常のマジック用品のボールを使う方が良いようです。

・やはり摩擦のせいで、ボールホルダーなどの道具がひっかかって使えない事があります。




 正直なところ、伝統的なマジック用品の四つ玉は、滑って手から落としやすい上に、角度に強くないため、演じる場所や演じ方には相当な熟練が必要です。

 すべらないので使いやすく、安価で色も豊富なゴムボール。
 気楽に四つ玉を演じるのに、かなりおすすめです。

 なぜ、市販のゴムボールで行う演技があまり演じられないのかよくわかりません。
 単に手順の解説が売られてないせいかもしれませんが、一個から四個まで増やすシンプルな手順としてなら、非常に実用的だと思います。
 マニピュレーションの代表的な演目である「四つ玉」の話を書こうとして、はた、と気づきました。

 ネタばれになりすぎて書けません。

 このブログではマジックの事を、ネットで公開できる程度にいろいろぼやかしたり例えたりしながら書いてる訳ですが、演目によってはちょっと限界があるようです。

 他のマニピュレーションの演目だと、そもそもバレるような仕掛けが何もない、ほとんど純粋にテクニックだけで成り立つものがいろいろとあります。四つ玉の場合はちょっと違って、過去発表された資料では、シンプルな秘密をそこまでやるかというくらいに使い倒しているのが要点なので、どうしてもその「秘密」に触れないと話にならない訳です。

 では、秘密や仕掛けがないと出来ないのか、というと実はそうでもなく、私も自分の手順では、東急ハンズの素材売り場で買ってきたゴムボールをそのまま使うものもあります。たまたまなのですが、サイズが私の手にはちょうどいいのです。
 また、これはこれで、角度に強く実用的です。文献やDVDでは発表されたものが非常に少ないと思いますが、実演しているパフォーマーは時々見るので、実はそれなりにポピュラーなのかもしれません。
 マニピュレーター魂として、タネや仕掛けのないものを使って不思議を作る方が楽しい、というのもありますね。

 仕事の現場では、むしろこの「ただのゴムボール」の方が出番が多いので、当面はこのあたりの話をいくつか書く事にします。
 マニピュレーションの分野では、あまり教科書やDVDがないため、「伝承」によって技が受け継がれている事がよくあります。

 以前、いろんな人に教わったのが、トランプを手から出す方法。
 これはもう、それだけで一冊本が書けるくらいの種類がありますが、その多くは「ある特定の時代」や「ある特定の団体」で使われたものです。

 もっと言うと、名人・達人クラスの人々は、それぞれ固有の技を持っています。
 ノーム・ニールセン師、サルバノ師、ジョニー・ハート師のカードの保持と出現は、それぞれが違うものです。
 通常の方法との違いは微妙ですが、「角度に強い」とか「スピードが早い」とか「他の技との繋がりがよく考えられている」など、効果の違いがはっきりあります。

 ただ、それは正直、微妙であるがゆえに解説しづらいものが多いのです。手に手をとって教えるような形でないと、伝えるのは非常に難しく、さらに個人の手の形や可動範囲にも影響されます。
 これはつまり、教わった通りにやるというよりは、むしろ自分の手に合わせて育てるもの、なのでしょう。

 マニピュレーションの技術の伝承は、例えるなら「畑に葡萄の苗を植える」ようなものだと思うのです。
 どの畑からどんな実が生りどんなワインになるのかは、かなりの年月の後で熟成してみてはじめてわかります。
 年に1~2回ですが、ライブハウスでパフォーマンスを行う機会があります。
 劇場とライブハウスは、どちらも大都市に集中する施設ですが、ライブハウスの方が数が多く、規模や設備もバラエティに富んでいます。
 だいたいはロックバンドを想定した場所が多いのですが、ジャズや弾き語り専門の所もけっこうあります。

 基本的には音楽演奏のための場所ですが、間口が狭く縦に長い空間は、最近の全体的に横長になっている劇場には、あまり見られない作りでしょう。
 そしてそれは、かつてのヴォードヴィルのような、トークや小物を扱う手練の奇術にもよく合います。

 欠点としては、基本的に喫煙可で酒の販売があり、普段はなかなか体験しないくらいの大音響が、特にご年配の女性には不評だったりします。
 夜に騒ぐ所でもあるので、(ジャンルにもよりますが)そんなにお行儀のいい場所ではない訳です。

 劇場のかしこまった雰囲気と対称的な、自由でちょっと妖しい雰囲気。おそらくそれは「心にそういう場所の分類を持っている」人には心地好い空間なのでしょう。

 音楽を聞く場所なので音響が良いのはもちろんですが、照明機材も特徴があります。
 最近では、ぜんぶLEDライトになっていて驚いた事があります。さすがにLEDでも数百個単位だとちょっと暑いのですが、白熱灯に比べれば比較にならないくらいの発熱のなさで、かなり楽でした。
(普通のステージライトは、言ってみれば十キロワット単位の電気ストーブみたいなものなので、出番が終ると汗びっしょりになります)

 個人的には、ライブハウスの空間はかなり好きです。
 マジックの持つ、大人の洒落っ気のようなものに合う気がするのです。
 対象年齢と言うと、子供向けのマジックセットはだいたい「対象年齢6歳から」という事になってますが、まあそれはマジックを「行う」方の話。

 ここでは、見せる相手としては何歳からOKなのか、という話です。

 マジックの観客の対象年齢は、だいたい三歳くらいより上です。
 このくらいの年代だと個人差が激しいので、一律にこう、とは言えないのですが、おおまかに三歳くらいでマジックが理解できるようになります。

 それより年少さんだと、「不思議と現実に区別がない」んですね。いま目で見た事は自分もできる事だ、と思うようです。
 ここから逆に、マジックは、現実に「できない」という事が理解できないと面白くないのだ、という事がわかります。

 さて、マジックを行う現場に行ってみたら、三歳くらいの子供が多い、というケース。ときどきあります。
 結婚式でも、乳幼児がたくさん、という時はありますね。宴席にすっかり飽きて眠そうな乳児をかかえた親御さんが「さあ、この子に見せてくれ」と言う訳です。

 この場合、最も現実的な対処は……

 あきらめて他の芸能をやる事です(笑)。
 実際私は、子供の年齢が2歳までの場合、ペンシルバルーンで動物を作ります。

 三歳ちょうどくらいなら。
 出現と消失が最もわかりやすい現象のようです。
 体からコインを出すとか、カップ&ボールのシンプルな手順などもいいですね。

 五歳くらいなら、ひととおりのマジックはわかるようです。
 この年代は、非常に率直な観客なので、客席に呼びかけると返事が帰ってくるという、文字通り観客との「対話」ができます。
(これは大人の観客だと、あらかじめ「練習」してノセておかないと出来ない事ですね)

 ただし、手伝ってもらう場合は、ハサミなどの道具が使えない事がある、というのは認識しておく必要があります。大人は忘れてますけど、ハサミをきちんと使えるようになるのは、8-9歳くらいからです。

 アメリカには、五歳以下専門のマジシャンも居るようです。子供のお誕生日パーティーにマジシャンを呼ぶ、という習慣があるんだそうな。
 映像を見てみたんですが、その演目は・・・

 なんていうか、「志村ぁ~、後ろ後ろ~」という感じのものでした。
 マジシャンが気づかないうちに何かがおこる、というのが繰り返されるたびに、幼児達は大熱狂。

 かつてのドリフターズって、五歳以下の心もがっちりつかんでいたんだなぁ。
 子供向けの演技を考えていて、そんな事を思ったりします。