社会学系の本がお好きな皆様に

迷いなくおすすめしたい

『No Place to Call Home』

 

 

 

 

ただこれを当ブログで

どのように

紹介していけばいいのか・・・

 

私の英語力の低さから

内容を『読みそこなっている』

危険性も怖いんですけど、

章ごとに内容をまとめるのも

「ここは大学のゼミ室じゃない」

みたいな話になっちゃいますし。

 

章立てで申しますと

こちらの本は全体14章で

構成されているんですが

うち3章が『ジプシー/

トラヴェラーズの歴史』に

あてられています。

 

この章を読んでるとき

私は本当になんというか

事前予習の大事さというか

前知識の偉大性を理解しました。

 

ジプシーと呼ばれる人々の

『祖先』がどこの出身かは

いまだに諸説あるとか

欧州における差別の歴史とか

「それはイアンさんにも

聞いています!」

「あ、そこも驍

(タケシ)さんに

教わりました!」みたいな。

 

 

 

 

 

先にハンコック氏と

水谷氏の本を読んでおいて

よかったです、本当に!

 

(なんか能天気な言い草に

なってしまっておりますが、

ジプシーが受けた

迫害の歴史は一度皆様

確認してみてください、

たぶん我々が想像している

数倍は陰惨な話です)

 

で、私が『No Place to

Call Home』を読みたかったのは

現代の英国のジプシー/

トラヴェラーズ事情を

学ぼうとすると必ず出てくる

『デール・ファーム

立ち退き事件』について

知りたかったからなんです。

 

2011年にイングランドは

エセックスの

『デール・ファーム』と

呼ばれる一帯から

立ち退きを強いられたのは

『アイリッシュ・

トラヴェラーズ』と

呼ばれる人たち。

 

そういうわけでアイリッシュ・

トラヴェラーズについて

『No Place to Call Home』は

イアンさんや驍さんの

前出の本に比べてもう少し詳しく

述べてあるのですが

(注:イアンさんや驍さんの本を

批判しているのではありません、

ジプシー問題を俯瞰的に

見ようとするか、英国の問題に

焦点を絞るかの違いです)、

そもそも英国で

『ジプシー/トラヴェラーズ』と

呼ばれる人たちは複数の

集団から構成されているのです。

 

主なところを挙げると

アジアから欧州の東にやって来て

そこから西欧に移動してきた

『ロマ』を祖先とする人々

(『ロマニチャル』

『イングリッシュ・ジプシー』

『イングリッシュ・

トラヴェラーズ』などと呼ばれる)。

 

『ロマ』ではないものの

移動生活を送っていた・いる人々

(旅の行商人や芸人、季節労働者)。

 

音楽フェスなどを追いかけ

移動生活をするヒッピー系の

『ニューエイジ・

トラヴェラーズ』と呼ばれる

集団もいます(いわば

新興勢力ですがムーヴメント

としては現在下火な印象)。

 

『スコティッシュ・

トラヴェラーズ』は

『ロマ』を祖先としたり

しなかったりするものの

やはり定住地を持たずに

スコットランドで

暮らしていた・いる人々のこと。

 

『アイリッシュ・

トラヴェラーズ』は

基本的にロマとは遺伝子上の

つながりはないとされている

アイルランド発祥の

非定住系の生活者のこと。

 

 

なんのかんので

想像力に限界がある現代人の私は

『非定住系』の生活、というのが

どういうものかいまひとつよく

わかっていなかったのですが、

今回本を読んだ感じですと

たとえば作物の収穫期に

合わせる形で

「人手はいりませんか」と

その時その時に仕事の口が

ある地域を移動していくとか、

近辺では手に入りにくい品を

遠くから運んで売るとか、

鍋や何かを修繕して歩くとか。

 

人々が電車や車ではなく

徒歩や馬で移動していた時代、

こういう集団の存在は

定住者にとってとても

ありがたかったと思うんです。

 

物質面での恩恵だけではなく、

ネットはおろか新聞も

おいそれと手に入らない社会で

移動生活者が

もたらしてくれる情報は

何物にも代えがたい価値がある。

 

同時に畑仕事なんかも

手伝ってくれて

珍しい品物を売ってくれて

遠い土地の歌や

踊りなどを披露してくれて

特にアイルランド系の彼らが

売り物にする『馬』は

本当にいい馬ばかりと評判で

・・・私が地域の有力者だったら

間違いなく彼らを歓迎しますよ。

 

子どもだったら彼らが

馬車を連ねて村を訪ねてくる日を

指折り数えて待っていますよ。

 

勿論放浪者に対する偏見は

当時もあったでしょうけど・・・

 

英国でのジプシー/

トラヴェラーズの生活を

厳しくしたのが

我々日本人も

世界史の授業で習った

『囲い込み』です。

 

それまでの共有地が

地主に囲い込まれた結果

ジプシー/トラヴェラーズが

停泊できる場所が減っていく。

 

同時に『国民意識』

みたいなものが強くなり

すると定住地を持たない人々は

「君たちは『我々』なのか、

それとも『我々』ではないのか」

「なんかお前ら怪しくないか」

みたいな目を定住者から

向けられることになる。

 

輸送手段の発展によって

個人行商より

店舗販売が力を持ち

馬も生活に密着した動産では

なくなり、じゃあ

定住化するか、となっても

囲い込みですべての土地は

すでに誰かの物になっている。

 

働き口を求めて人々は

都市部へと移動し・・・

『悪目立ち』するようになる。

 

まあざっと申し上げると

このような背景・歴史が

『デール・ファーム』事件の

根底に存在しているわけです。

 

それにしても何故

アイリッシュ・トラヴェラーズ、

すなわちアイルランド系の

トラヴェラーズは

アイルランドじゃなく

イングランドに

定住地を求めたの?

という話は明日に続く。

 

 

『No Place to Call Home』では

1章使って上述の

『ニューエイジ・トラヴェラーズ』

についても語っています

 

いわゆるカウンター・カルチャー、

ニューエイジ系の移動生活者で

彼らは定住を捨て

キャンピングカーなんかに

自分の持ち物を詰め込んで

音楽祭を渡り歩くわけです

 

それだけなら

問題はなかったんですが

・・・ほら、ヒッピー文化と

違法薬物は

切っても切れぬ仲だったじゃ

ないですか・・・


彼らが構成集団の

一つとなったことで

『ジプシー/

トラヴェラーズ』の

全体的な印象は極度に悪化

 

・・・ただこう書くと

すべての『ニューエイジ・

トラヴェラーズ』が

『悪い人』みたいですが

実際はそんなこともない

 

というか本を読めば

わかっていただけるんですが

そもそも『ニューエイジ・

トラヴェラーズ』と

呼ばれる人の中にも実は

ニューエイジ系ではない人もいて

 

それこそ生活が困窮して

家賃が払えなくなっかたら

完全ホームレスになるよりは

車に身の回りの品を詰めて

同じような生活をしている人の

集団に混ざろう、みたいな

 

この物事をひとくくりにしない

著者の姿勢、私は好きです

 

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