そんなわけで

『No Place to Call Home』

 

 

 

 

これはね!

 

読む価値のある本ですよ!

 

どうして翻訳日本語版が

出ていないのかわからないです。

 

みずす書房とかが

ハードカバーの美装丁で

出しそうなのに・・・

 

晶文社も似合いそうなのに・・・

 

ジョナサン・コゾルの

『家のない家族』の隣にさ!

 

 

 

 

『家と呼びうる場所はなく』

みたいなタイトルでさ!

 

今時ハードカバーはちょっと、

というなら河出書房新社の

『河出文庫』のあの素敵な

黄色と白の背表紙で!

 

・・・日本でこの本が

あんまり注目されない

理由のひとつは

主題の一つである

『デール・ファーム

立ち退き問題』が

日本ではあまり大きく

報じられなかったからかな、

とも思うのですが。

 

『デール・ファーム』と

呼ばれる地域に

不法に住み着いた

『トラヴェラーズ

(移動民族集団、

広義の【ジプシー】に

含まれる)』を

2011年10月に自治体が

強制立ち退きさせたのです。

 

デール・ファームの

位置していたのは

『グリーンベルト』と呼ばれる

住宅規制が厳しい区画で、

すでにある家を改築したい、

みたいな場合でも

家の所有者は当局の許可を

得なければならず、

またこの許可が

なかなか下りない。

 

「お前の家より緑化が大事、

嫌なら余所に引っ越しせい」

という行政の指針を住人が

受け入れている地域なのです。

 

そこにある時

(2000年前後)から

トラヴェラーズが

当局の建築許可なしに

どっと住み始めた。

 

デール・ファームの外の

住人からしたら

「なんでトラヴェラーズは

許可なしに家を建てて

許されるんですか」

 

ただ同時に

トラヴェラーズ側からすると

「でも我々は

ここを出されたら

行くところがないんです」

 

この伝統的定住者対

非定住者の対立を

基軸にして、

その内外に存在する

様々な対立と緊張、

就労・貧困の問題、

子どもたちの教育の在り方、

宗教、女性問題、

立ち退き反対運動のありよう、と

多くの視点が詰め込まれた

まさに力作。

 

こういう本はどうしても

対立する勢力の片側に

著者が肩入れしてしまう

場合が多いと思うのですが、

クアンビーさんはその点

上手というかプロというか。

 

第一章はクアンビーさんが

デール・ファームに

『合法的に』住んでいる

トラヴェラーズの女性宅を

訪問する場面から始まり

(デール・ファームには

合法的に居住している

トラヴェラーズと

不法に居住している

トラヴェラーズがいた)、

「政府の提言に従い

私は定住の道を選んだのです」

「定住すれば教育を受けられる」

「定住によって

人として生きることが

出来るようになる」

という彼女の言葉を紹介した後に

デール・ファームの外に住む

伝統的定住民の主張を記します。

 

いわく「我々はそれまで

デール・ファームにいた

イングランド系ジプシーとは

うまくやっていました。

移民してきたアイルランド系

トラヴェラーズが彼らを

追い出す形になったんです」

「ごみの散乱、深酒、危険運転」

「人数に物を言わせて

彼らは地域を牛耳ろうとした」

 

第一章を読み終えた時点で

「あ、これは現代の

移民問題に通じる話だ」

という思いを強くします。

 

この『強制立ち退き前』から

『強制立ち退き執行』

『その後』までの怒涛の展開を

私はひとりでも

多くの人に

読んでもらいたい・・・!

 

問題提起としてではなく

これ本当に『読み物』として

ものすごく面白いんです!

 

不謹慎に聞こえるかも

しれませんけど!

 

全国の大学と公立図書館の

『社会学』の棚に

あったら似合う1冊なんです!

 

 

・・・本の内容について

明日にも続きます。

 

 

著者の名前を日本語で

どう表記するか、から

正解がわかっていない状態での

内容紹介になりますので

誤訳の危機は常に隣り合わせ

 

皆様どうかご興味あれば

原書をお読みくださいませ

 

BBCの英文記事が読めるなら

大丈夫な文体ですから!

 

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