一時帰国中の私に対し

父(イメージ武将:

石田三成)がある日突然

何かに気づいたかのように

「・・・あれ?お前、

今回の帰国で人に

会っていないだろう?

友だちには会って

おいたほうがいいぞ!」

 

・・・うーん・・・

まあ・・・そうだね・・・

(奥歯にものが挟まっていて

すみませんねえ)、と

出かけた先が某新宿。

 

時間があったので

某伊勢丹の香水屋に足を運び

「すみません、Kenzoの

香水は置いていますか」

 

「申し訳ございません、

現在Kenzoは

お取り扱いしておりません」

 

「ではイッセイミヤケを

試し嗅ぎしていいですか」

 

で、許可を貰って

クンクンやっておりましたら

身だしなみにこれでもかと

気を使ったお若い店員さんが

するするっと隣に来て

「お客様、日本ブランドで

香水をお探しですか?」

 

「日本ブランドで、と

決めているわけでは

ないのですが、

まずはそこらへんから

試してみようかな、と。

そういう『しばり』がないと

試しきれない量の香水が

売り場に並んでいるようなので」

 

「左様でございますか。

あの、日本ブランドの香水、

ということでしたら是非

お勧めしたいものがございます」

 

そう言って店員さんが

教えてくれたのが

ÉDIT(h) 』と書いて

『エディット』と読むブランドで

「こちら『日光印』という

朱肉メーカーが

開発した香水になります」

 

「はあ、朱肉屋さんが・・・

はあ?朱肉?

ハンコにペタンとやる?」

 

「左様でございます、

ハンコにペタンの朱肉屋さんの、

ほら、朱肉って独特の香りが

いたしますでしょう。

あの素材を使った香水です」

 

・・・私はその時思いました、

この店員さんは客を見る目がある、

そういう『ストーリー』を

持つ香水をこいつは

好むに違いない、と

初対面の一瞬で私は

見切られたということか・・・!

 

いや私実際大好きですよ

そういう『裏話』のある製品。

 

ここは私も店員さんにとって

説明しがいのある客を

演じ切らねばなるまい、と

私はあえて少し眉を寄せて

「でも朱肉のニオイが

香水になりますかね?」

 

「それがなるのでございます。

何種類か香りが出ておりますが、

その中でもわたくしが

お客様にお勧めしたいのが・・・

いえわたくしはお客様が

売り場に入って来た瞬間に

この香りをお勧めしたいと

直観いたしました、お客様の

その知的な佇まい、

凛としたお顔立ち、

この方には絶対これだ!と」

 

自己肯定感が低下中の

皆様に是非お勧めしたいのが

こちらの新宿伊勢丹

香水売り場セラピー、

店員さんはさ、

あれ、プロの判断力で

「この客はこういうお世辞を

秘かに欲しがっとるな」って

絶対わかって

やっていると思う・・・!

 

この場合のポイントは

『秘かに』、これです。

 

だから何と申しますか

お客(私)としてもこうなると

「そうか・・・私は『知的』と

言われると喜ぶ輩に見えるか・・・

まあ確かに悪い気はしない

形容詞ではあるよな・・・

そこに『凛とした』も

加点されちゃったか・・・

私はそんなに

『凛とした』感狙い

人間に見えるのか・・・?」

 

ともあれそんなこんなで

店員さんが私に

推薦してくださったのが

『ÉDIT(h) 』の

Soucheng Journey』。

 

それでですね、私は正直

この香りに

ピンとこなかったんです。

 

最初に鼻に来る匂いが

少し刺激的すぎる気がして

「これは犬(愛犬アーシー)には

辛い香りなのではないか」と

感じてしまったのと、

 

 

あとなんと申しますか・・・

 

ねえ、これってなんとなく

入浴剤臭っぽくありません?

 

『日本の名湯』シリーズに

入っていそうな・・・

 

いや、私は

入浴剤好きですけどね?

 

でも『好きな香り』と

『身にまといたい香り』は

違いますからね?

 

私がその旨伝えますと

店員さんは頷きつつも悔しそうに

「ですがこれ、お客様には

本当にお似合いなんですが・・・

コンセプトがアジアの香り、

中国茶葉が欧米で

紅茶文化として花開く、

というイメージなんです。

お客様はまさに

そういう感じじゃないですか」

 

・・・私はこの店員さんとは

本当に必要最小限の言葉しか

交わしておらず、何だろう、

やっぱり今の私のお化粧とか

ファッションって『日本に

住んでいない日本人』風で

見る人によっては

「最低限の観察眼さえ

持っていれば自明の理だよ

ワトソン君、あの女性は

国外、それも欧州に暮らして

もう10年以上だね」みたいな

様子なんでしょうか?

 

しかし勧めてくれた香水は

ちょっと外していたけれど、

伊勢丹の店頭販売員さんの

底力を見る接客であった、と

お礼を言ってその場を離れ、

で、その後会った

高校時代の友人たちに

「そういえば

こういうことを言われて」と

店員さんに持たされた

試香紙を私は

手渡したのでございます。

 

そして私はその時に

店員さんの

真の能力を思い知ったのです。

 

試香紙をクンクンやった友人たちは

「ははあ!なるほど!」と

笑った後に全員口をそろえて

「これNorizo似合うよ」

「すごくイメージに合致している」

「これ買った?買わなかったの?

どうして?Norizoが

買うならこれだよ!」

 

『好きな香り』と

『似合う香り』は違う、

そして何事もプロはプロ、と

思い知った経験でした。

 

まあ結局今回の私は日本で

香水を買いそこなう

見通しなんですが

(だってそんなに何度も

新宿には行けない)

皆さん、今度高級百貨店に

足を運ばれた際はついでに

香水売り場も覗いてください、

そしてしれっと涼しい顔で

「『エディット』置いてます?」と

店員さんに尋ね、そして

『Soucheng Journey』の

香りを試してみてください。

 

・・・正直、これが

似合う人って

どんなイメージですか?

 

その姿形は私が思い描く

私の姿とは微妙に、いえ、

かなり異なるのですが・・・

 

(私自身より明らかに

『格上』の香りだと思う)

 

(・・・待てよ、だから

私がつけるべきなのか?)

 

香水の面白さを

思い出している今日この頃です。

 

 

高校時代の友人が一斉に

肯定的意見を述べ始めた時には

本当に私はびっくりしたんです

 

本人としては「これは

私には似合わないニオイ」と

判断していたんですよね

 

日本では時々思いもよらぬ時に

ザ・プロフェッショナル

邂逅している私です

 

・・・でもなあ、私が

好きな香りは

某イッセイミヤケなんですよ

 

その香りも友人たちに

試して貰ったら

「・・・うん、わかるよ、

いいニオイだよ、でも

Norizoが使うんなら

伊勢丹の店員さんの

判断のほうを信じるべき」

 

恐るべし!

伊勢丹香水売り場!

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