前庭の芝生を手入れするついでに

発声練習をすることを思いつきました。

 

我が家の芝刈り機は

エンジン付きの手押し式、

使用の際は防音イヤーマフをつけるので

己の悪声に気を取られることなく

腹式呼吸を繰り返せるではないか!と。

 

イメージ画像:

 

 

すみません、ただ単に

芝刈りルーティーンに飽きていたんです。

 

まあそんなわけでマフをつけて

リコイルスターターでエンジンを始動

(紐を勢いよく引っ張るとエンジンが動き出す)、

あとは前庭の芝部の上を

行ったり来たりしながらの25分。

 

ドレミファソファミレド、に合わせて

「ナナナナナナナナナー」と声を出し

キーを半音上げてまた

「ナナナナナナナナナー」

 

あら、思いのほか

心肺機能に負荷がかかって

発汗作用もあって

これはこれでいい感じではありませんか!

 

芝生の最後の列を刈り終えて

イヤーマフを外してロングトーンに挑戦、

おっ練習前より声が出ている、

とちょっといい気になった私は喉慣らしに

ホルストの『木星』の有名な第4主題を

朗々と歌い上げ一人悦に入ったのでございます。

 

 

 

 

ところがなんと。

 

わが歌声が夕空の風にたなびきつつ

消えていったその瞬間、

丘の向こうの雄鶏が対抗してきたのです、

喉も裂けよとばかりに「コオーケコッコー!」と。

 

・・・おのれ、やる気か!

 

我が家の前庭は現在雄鶏不在

いるのは未亡人であるメンドリ2羽のみ、

そういう寡婦に対し貴様という雄鶏は

いったい何を仕掛けようというのかけしからん!

 

私は雄鶏の声が聞こえてきた丘に向き直ると

お腹から喉までの直線を意識しながら

腹筋に力を込めてもう一度

『木星』第4主題を朗唱。

 

すると負けじとばかりに雄鶏もまた

高音の限界に挑戦するかのような

時の声をぶつけてくる。

 

ならばこれでどうだ!と

今度はビブラートをきかせてまた『木星』。

 

雄鶏は雄鶏で血管も千切れよとばかりに

「コケコッコー」を絶叫。

 

よし、そう来たか、と今度は私が

半音キーを上げて再び『木星』、

さらに我ながらくどいほどに

最後の音を伸ばしてみたところ

・・・どうやら雄鶏は白旗を上げたらしく

丘の向こうには静寂が広がっておりました。

 

わっはっは、見たか、

雄鶏閣下亡き後もあの方の帝国

(前庭とメンドリ夫人たちのこと)は

私が守っていくんだよ!と

視線を丘から足元に戻したところ

・・・メンドリ2羽が妙に熱い視線で

私のことを眺めておりまして。

 

 

そう、雄鶏の時の声の大きさは

ニワトリ社会において『雄の魅力』に直結、

つまり声が大きければ大きいほど

その雄は異性として魅力的。

 

・・・ちょっと待ってご婦人方、

あなた方もしかして今、

何か勘違いをなさっちゃった?

 

「そういえばこの不格好な生き物は

最近よく私のためにミミズを掘り返してくれる

朝には穀類もくれるし夜は小屋の戸を閉めるし

・・・尾羽はないけど、トサカもないけど、でも

今の喉自慢はこれ・・・うむ、間違いない、

私たちったら・・・口説かれている・・・!」

みたいな目つきをするのは止めてください。

 

皆さんこう聞いてまた私が

勝手な妄想を逞しくしているとお思いでしょ?

 

この日以来、メンドリ夫人がた、

特に白黒夫人は

機会さえあると私の鼻面に

そのお尻を近づけてくるんです・・・!

 

 

それも、こう、『偶然を装って』みたいに・・・!

 

私が雄鶏であったら間違いなく

据え膳食わぬは何とやらで

彼女の背中に飛び乗ったことでしょう。

 

「でも私は雄鶏じゃないし

すでに結婚しているからなあ・・・

私はやっぱり不倫は嫌なんだよ」

 

葛藤する私にわが夫(英国人)は

「僕は時々君のことがわからないというか、

君、何を本気で悩んでいるんです」

 

だって雌鶏達の気持ちを考えたらさあ!

 

閣下がご他界なさった後も

相変わらずメロドラマな前庭なのでございます。

 

 

メンドリが近づけてくるのはお尻だけではなく

私がこう草をむしるために屈むでしょ?

 

その私の鼻の2センチ先に

自分のクチバシを突き出してきて

じっと上目づかいにこちらを窺う

こんな口説きのテクニックを

彼女は一体どこで身に着けたのか

 

無視してシャベルで

ぐいぐい雑草を掘っていると

今度はシャベルの先を覗き込むようにして

常の如くお尻を突き出してきて

そして何かの拍子に非常に自然に

かつ芝居っ気たっぷりに

私の手の上にちょこんとお尻を乗せ

「ふう・・・ちょっと疲れちゃった・・・

あら、いやあん、アナタの手が

ここにあるとは思わなかったんですう~、

ちょっとお尻を下ろそうと思っただけでえ~

ひゃだ~ワタシ恥ずかすい~

お邪魔してごめんなさあ~い」

 

媚態として満点の可愛らしさではあるのですが

かかずらわっていたら仕事にならないので

無言で彼女の体を横に除けたところ

メンドリはしばらく考え込んだ後に

『物凄く気分を害した声』をあげて

私の背後からわが無防備な腰骨に齧りつき

痛い痛い痛い本気で痛い!

 

ごめんなさい、恥をかかせてごめんなさい!

 

・・・私はそろそろ雄鶏の

求愛の踊り』の練習を

すべきなんでしょうか

 

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