ローストポークを作ったついでに
アップルパイとブロッコリーのキッシュを焼き
返す刀でスコーンも作成したら
完成品の置き場が
台所になくなってしまった今日この頃、
誰か食べに来ませんか。
ところで数ヵ月前
私はブログで偉そうに
「パイ生地の極意は見切った」
とか言っていた 記憶があるんですが
・・・人の技術は劣化するものです、
私ったらすっかりコツを忘れてしまいまして。
生地を練っている途中で少々
水を入れすぎた予感はしたんですが
パイを切り分けようとした夫（英国人）が
「・・・妻、これは・・・」
「すまん。硬いな、どうも」
ナイフを持つ手に全体重をかけて
やっとパイ生地が割れてくれるという
これはもう食後のデザートなんだが
筋トレなんだかよくわからない有様で。
まあ主たる目的であった
豚肉のほうは
つつがなく焼き上がったので
それはよかったな、と。
「僕は思うんですけど、正直な話
君のローストポークは
僕の人生で最高のローストポークですよ」
「それは褒めすぎだろ。こんなもの、
ただお肉に塩をすりこんで焼くだけだし」
「君、そういうふざけた発言をするなら
今度一緒に近所の大学の食堂で
ローストポークを注文してみますか」
「・・・私が悪かった、褒めてくれてありがとう」
夫はおかわりのお肉を切り分けながら
「それでですね、
君のお母様の作るローストビーフは、
あれは僕の人生で
最高のローストビーフです」
「そうか」
「・・・これ、
君のお母様に伝えておいてください」
「わかった」
「君のお祖父様にも言ってくれて結構です」
「お前は誰の点数を稼ごうとしているんだ？」
ちなみに夫に言われたとおり素直に
わが祖父（東京在住９５歳）に
「夫にとって私のローストポークが
人生最高のローストポークで、
わが母の作るローストビーフ、
あれが人生最高のローストビーフらしいですよ」
と伝えたら、祖父は間髪いれず
「牛と豚なら、それは豚が次点だな！」
・・・祖父よ、切れ味鋭くて何よりです。
閑話休題。
さて、食後。
コーヒーを飲みながら
夫は何事かを考え込んでいたのですが
「ねえ妻、君のローストポークが
僕にとっての最高のローストポークだとして、
で、君のお母様のローストビーフが
最高のローストビーフだとするでしょ。
もうひとつこれに、
僕の母の作る何を加えたらいいと思う？」
「・・・君は多方面に心を配る人だな」
「ペストリー（パイやキッシュも含む
焼き菓子のこと）にしたらどうだろう、
とは思っているんだけど・・・」
「いいんじゃないか？」
「それを聞いて君のお母様は
ご機嫌を損ねたりはしませんかね？」
「しないんじゃない？だいたい私の母は
パイなんて作ったこともないと思うし」
「ところで夫、君は私の作る
カレーが美味しいと
常々おっしゃっておりますが」
「はい、僕は君のカレーは大好きです」
「あれは君の人生最高のカレーか？
それとも君のお母様の作るカレーのほうが
実際のところは好きだったりするか？」
「・・・カレーはわが母の
得意料理のひとつだったりするんですよね」
「うむ、知っている。
正直に答えていいぞ、怒らないから」
しばしの黙考のあと
夫は奇妙な笑顔を浮かべて
「それについては
僕にも考えがあるんですけどね。
誰かにそれを尋ねられたら僕としては
『僕が母のカレーを好きなことを知っているから
妻は懸命にそれと同じだけ美味しいカレーを
作ろうと努力してくれているんですよ！』
と、まずは答えようと思うんです」
「ふむ」
「それで母がその場にいるときは、
『妻のカレーの味はだんだん
母さんの味に近づいてきたよ！
あともう少しで同じ味になるね！』
とこれに付け加えようかと」
「・・・ほほう」
「そうしたら僕の母は絶対に
『貴方はどうしてそんなことを言うの！
駄目な息子ね、
馬鹿なことを言うもんじゃありません！』
って僕のことを叱ります。
こうして僕の発言により
母は君に対し申し訳なく思うと同時に
君のことをいっそう憎からず思うわけですよ！」
「・・・」
「どうですか！」
わが夫は少々
策に溺れるところがあると懸念されるのですが、
これは私が心配し過ぎでしょうか。
おかげさまでとりあえず
これまでのところ
嫁姑問題で悩んだことはないんです
だってほら義母よりも先に義（以下略）
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