二人の女性が、ある農家に住み込みで、働くことにした。
仕事は、予想以上にきつかった。
毎朝、ニワトリが、けたたましく鳴きだすのを合図に
外も暗いうちからたたき起こされる。
疲れ果てて、彼女らの愚痴は、たまる一方だった。
「こんな苦しい目に遭うのは、あのニワトリのせいだわ。
あいつめ、なぜ、朝日が昇る前に鳴くのかしら」
「あのニワトリさえいなければ、もっとゆっくり寝ていられるのに!」
不幸の原因は、ニワトリだと思い込んだ彼女たちは、
とうとう、憎きニワトリを殺してしまった。
だが、その結果は反対だった。
農家の主は、ニワトリが鳴かないので、
もっと早い時間から彼女らを起こし、
山のような仕事を言いつけるようになったのである。
「ああ、ニワトリがいた時のほうが、よっぽどよかった」
二人は眠い目をこすりながら、後悔するのであった。
あまりにも苦しみが大きいと、
目の前のものに当たったり、
誰かを責めたりしがちである。
そんな私たちに、この話は
「苦しみの原因を見誤ると、何の解決にもならない。
それどころか、二倍、三倍になって我が身に返ってくる」と教えている。