自分の家でのんびり過ごすことを
なによりも好んだ父だった
外食よりも、私たちの作った料理を好み、
頂きますと手を合わせてから
ご飯を頂いていた父だった
礼儀正しく、
規律を重んじ、
他人に迷惑をかけないよう生きてきた人だった
母を大切にしていた
母は父の一番の理解者で、
父が唯一心を許し、
癒される場所だった、と思う
お金を自分のために使うことがなく、
いつも質素で倹約だった
もったいない、とか
わしにかまうな、とか
壊れたメガネを自分で直して
使い続けた
父が入院した翌日に
メガネを拝借して、メガネを注文してきた・・・7日程度で出来上がる
その時は、父は元気で退院するとしか思っていなかった
血液検査はずっと正常値だったし
ほんのちょっと入院するだけで
またいつも通りのバトルが繰り返されると
確信していた
通夜の日の朝、電話が入った
「ご注文のメガネが届いております」
なんとも言えないこの感情・・・声が出ない
かろうじて、伺いますと答えた
メガネを受け取り、自転車で帰路に向かうが、
涙が流れて、前が見えない
そのまま父が安置されている部屋に行き、
父に報告した
ジイジ、起きてください
新しい眼鏡が出来ましたよ
かけ心地はどうですか
気に入ってもらえましたか
やっぱり前の方がいいですか
返事して下さい
冷たい父の寝顔に、
メガネをかけてみた
お鼻があってないね
ごめんね
何も返事ないのは、当たり前だけど
奇跡が起きないかって期待していた
大きな声で
鼻水ヅルヅルで
泣くしかなかった
