嫌いなものの話よりも好きなものの話の方がたのしい。
嫌いなものをイヤそうに話している姿よりも好きなものを嬉しそうに話している姿の方が魅力的なンです。
……と、そんな枕でニガテだったものについて語ってみようじゃァないですか。天邪鬼なので。
幼少期から好き嫌いの多い子供だ、と蔑まれておりました。
ともすれば存命の親族は皆今でもそう思っているやも知れません。
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●●は米飯のおかずにならない。
諸兄は●●にナニを当てハメます?
お好み焼き、たこ焼き、焼きそば、すきやき、おでん、刺身、豆腐、肉じゃが、天ぷら、コロッケ、シチュー、ポテトサラダ……。
これらのすべてをおかずにして米飯を食べるのがニガテで御座いました。
思えば幼少期にそのニガテなものをおかずに「ご飯を食べろ」「米の飯を食え」と言われ続けて苦手意識が根付いてしまいまったンですね。
仕方がないじゃァないか! 美味しいと思えないンだもの。
幼かったぼくは一計を案じそれら『おかずにならないおかず』どもはそれらだけで食べて、ご飯は漬物や味噌汁で消費することにしました。
ところがぎっちょん「重ね箸はやめなさい」とくらァ。べらぼうめ。
「無理なもンは無理なんじゃァ!」とちゃぶ台を引っ繰り返すこと叶わず。
しぶしぶと従い『おかずにならないおかず』で米飯を食べ続けることと相成ったわけであります。
気づいたら『おかずにならないおかず』は元よりご飯もニガテになっておりました。
食べるのが遅いため「残さず食べろ」と昼休みまで食べさせられた給食もニガテさに拍車をかけてたね。
体格などを考慮せず一律に同一の時間で食事を終わらせる給食って教育的にどーなのよ、とも思いますがそれはまた別のお話。
そのようなわけで『食』で快楽を得られない少年時代を過ごすことになってしまいましたとサ。
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そんなぼくも今では食べるのが大好きな食いしん坊(&飲んだくれ)に育ちました。
コロンブスの卵のようなシンプルなパラダイムシフトを経て……。
「ご飯のおかずにならないのならご飯を食べなければいいじゃない」
成人してしばらくして、ぼくはお酒を嗜むようになりました。
すると『おかずにならないおかず』どもが実はお酒のアテとしては非常に優秀な存在だったことに気づくわけです。
それらをおかずに米飯を消費することさえ強要されないなれば、とても美味しいものであったと。
幸い一人暮らしですから主食に米飯を食べない選択肢を採ることも自由でした。
お酒は最初はビールでしたが後年日本酒を嗜むに至りとある気づきをもたらします。
「(米を原材料としている)日本酒に合うおつまみが米飯に合わないはずはないのではなかろうか」……と。
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おでんや豆腐をアテに飲むと日本酒がとても佳く進む。
冷奴やら湯豆腐をおかずにご飯を食べるのは苦痛でも、それらをアテに飲む日本酒は格別。
炭水化物をおかずに炭水化物を食べるのは辛くとも、炭水化物を発酵させたジュースを飲むのは最高なのでした。
刺身定食や天麩羅御膳などというものがあります。
それらを食べる時、幼少期の嫌な記憶を思い出しますが食べてみると意外とイケるのです。
一体ナニが違うのかある時、気づきました。
それらのご飯はほどよく冷めていたのです。
なるほど、ほかほかのご飯に刺身を乗せて食べたら変色もするし生臭さも際立つであろう。
(海無し県で過ごしたぼくの幼少期は昭和末期、お刺身は高級品であったと思われますが哀しいかな……ドリップが出まくってたのよねェ)
おでんなんかも冷ご飯だとおかずになってしまうことにも後年気づきました。
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炭水化物をおかずに炭水化物を食べる。
これが最後の関門となるのであろうか。
ああ、そうだ。
肉じゃがもコロッケもじゃがいも部分を除けば力強いおかず力があるではないか。
ソース味や醤油味でご飯を食べていく感じですけれども。
お好み焼きやたこ焼きもビールのアテにはピッタリだし、おでんと日本酒は良く合います。
熱々のコロッケをかじりながら煽るビールなんて最高ではないですか。
炭水化物と炭水化物の掛け合わせは……これからの課題ですな。
「ほかほかのごはんがニガテ」という結論に着地しそうではありますが、熱々の牛丼も親子丼も炒飯も好きなんです。
それはそれで佳いものなのですが、冷めた丼ものの残りで日本酒を飲むのも美味しいものです。
冷めたすき焼きも佳きアテですし。
そんなこんなで気を良くしていたぼくは昨年、話題になっていたシュクメルリ定食なるものを某所に食べに行ったわけです。
今のぼくなればシチューをおかずにご飯を食べるくらい容易いことぞ、と。
食べ始めて間もなく撃沈致しました。
完食こそしたのですがそこにシナジーを得られたとはとても言い難かったのです。
パンといっしょならとても美味しかったであろうことは想像に難くありません。
ひょっとしたらこれも冷ご飯のおかずとしてなら充分に美味しく食べられたのかも知れません。
炊きたてのご飯は美味しいものです。
でも炊きたてのご飯が何にでも合うというわけでもないんじゃァないかな。
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好き嫌いの多い子供だ、と言われておりました。
しかしながら今現在のぼくに食べ物の好き嫌いはありません。
そもそも思い起こせば幼少期から食べられないものはなかったのです。
ニガテな食べ合わせがあるだけだったのです。
炊飯器に保温機能なんぞが付いてさえいなければ防げた悲劇も多かった気がします。
炊きたてが美味しいのであって温かいから美味しいわけではないのです。
米飯は冷えても美味しいもの。
むしろ程良く冷ましてくれる機能のほうが有り難いように思います。
炭水化物×炭水化物、米×米。
そこにシナジーを感じられる組み合わせがあるなれば佳いものではなかろうか。
そんなわけでね、冷ご飯にアレをかけてすすると美味しいンですョ。
冷酒を。
夏の暑い日にネ、こうサラサラっと。堪らんネ!
こんな怪文書を最期まで読んでしまう奇特な読者もヤるしかないョね、冷ご飯に冷酒。