【特別記事】戸田市内の花壇・植込みから探る、昆虫の好む蜜源植物 | 首都圏生きものめぐり ~関東の動植物に会いにいくぶらっと散歩~

首都圏生きものめぐり ~関東の動植物に会いにいくぶらっと散歩~

雑誌編集者である著者が自ら首都圏の公園や自然地に足を運び、そこで出合った生きものの情報をお届けします。
都会の印象が強い東京にも、カワセミやタカ、多くの昆虫が暮らしています。「首都圏ってこんなに生きものが多いのか」と驚かされる情報が満載です。

最近、戸田市内の住宅街を歩いていると

公園や玄関先の植え込みなどで

ミツバチの姿をよく見かけます。

写真はセイヨウミツバチ

とまっている植物は四季咲きラベンダーです。

 

春らしくチョウやハチが活発に動く中

ふと気になるのが、彼らが何の花を好むのかということ。

幸い戸田市は戸建住宅が多い分そこそこ庭が充実しており

街中の花壇や植込みでも花の数・種類共に多いため

比較検証するにはもってこいと言えます。

 

というわけで、仕事の合間にぶらりと散歩しつつ

街中の花を訪れる昆虫を撮影して回りました。

 

 

 

 

 

 

まず、上記の四季咲きラベンダー

暑さ・寒さに強い丈夫な宿根草で

最近では各地のガーデンでよく見られるハーブですね。

写真の植え込みでは、天気さえよければ

ほぼ確実に複数のミツバチを確認できます。

(夕方以降はもちろん激減しますが)

 

所感としては、一番ミツバチに好まれているのは

戸田市内で私が見た限りだと恐らくこの花。

小さな花の集合体なので蜜腺が多く、

長時間にわたり多くの蜜を集められる模様です。

1株に数匹、時に10匹近くまとわりついていることもあり

静止してくれる個体も多いので、

何気に撮影する側にとっても有難かったり。

 

ラベンダーとしての香りも健在ですし

花も涼しげで、地植えで大きく育てることも可能なので

全国的に人気が高まっているようです。

 

 

 

 

 

 

こちらは、お馴染みのツツジ

道路沿いの灌木などとして当たり前のように植えられますが

この木も蜜源として人気が高く、

ナミアゲハ(右)が吸蜜に訪れていました。

 

アゲハのような大型の昆虫にとっては

上記のラベンダーよりもこちらの方が止まりやすいのか

こういうシーンは結構よく見かけます。

 

 

 

 

 

おっと、ニホンミツバチが来ていました。

上記の植え込みには結構な数のミツバチが来ていましたが

その半分以上がニホンミツバチだったのは驚き。

 

浮間公園のニホンミツバチの巣からは大分離れているので

戸田市内のどこかに別の巣があるのかもしれません。

荒川の河川敷など、可能性の高い場所は結構あります。

 

 

 

 

 

 

左は、上戸田氷川神社のサクラソウ

もちろん観賞用に植栽されたものです。

上記のラベンダーなどには劣るものの

元々虫媒花ということもあって

たまにチョウの類が訪れます。

 

また、ツツジ単体ではない多種混植型の植え込みも

いくつか見られます(右)。春のこの時期には、

シランなど一見するとあまり虫を呼ばなそうな植物も

多く入っているのですが……。↓

 

 

 

 

 

 

シランの中にミツバチが潜り込む所を撮影。

サイズ的にジャストフィットしていました。

最近あちこちに植えられているシランですが

何となく虫媒花のイメージが全くなかったので

このシーンにはちょっと驚かされたものです。

 

 

 

 

 

ヤグルマソウやヒナゲシなどを中心とした

路地の植え込み。一見すると地味なこの空間も

多くの昆虫に食事や隠れる場所を提供しています。

 

 

 

 

 

特にヤグルマソウは蜜源として人気が高く

チョウやハチが多く訪れます。

(写真はヒメアカタテハ

 

四季咲きラベンダーと同じく

これもまた小さな花が集合して

一つの花のような形を作っています。

ゆえに、一度止まると昆虫も長時間

留まってくれる傾向があります。

 

 

 

 

 

一方で、花数が多く香りも強いモッコウバラ

その見た目に反してイマイチ昆虫から人気が高くない様子。

戸田市内では様々な一軒家の玄関先に植えられていますが

この日(4/13)見て回った限りでは

少なくともミツバチの類は一匹も来ていませんでした。

 

あくまで想像ですが、庭植えされるモッコウバラは

ほとんどが八重咲き(花弁が幾重にも重なっている)なので

蜜腺に口吻が届きにくく、身体の小さいミツバチには

吸蜜しにくいのかもしれません。

逆に、一重咲きで蜜腺の露出している野生のノイバラは

ハチから非常に人気が高くなっています(詳細はまた後日)。

 

 

 

 

 

大型の花木になると、アオスジアゲハなどの

サイズの大きい昆虫も頻繁に訪れます。

とはいえ、アオスジはよくハルジオンなどの

小さな花も訪れるため、食事シーンの観察は結構簡単。

 

幼虫の食草であるクスノキが増えただけでなく

こういう多様な蜜源を利用できる点が

数を増やした大きな理由と言えるかもしれません。

 

 

 

 

 

 

蜜源としてのみならず、隠れる場所を提供したり

あるいは葉が食用にされたり……街中のありふれた植物も

その多くが野生生物に有効に利用されています。

(左:ニホンカナヘビ、右=クロボシツツハムシ

 

実際、カナヘビの立場に立ってみれば

小さな植込みも人にとっての雑木林のようなもの。

本ブログでは取り上げないような非常に小さな虫が

あちこちに潜んでいる上に、鳥などの天敵から

身を隠すこともできるので、まさにうってつけの環境です。

 

 

 

 

 

 

シャリンバイもミツバチからの人気が高め。

セイヨウミツバチ(右)が多数訪れていました。

香りのいい花木なので方々で植栽されており

首都圏の街中ではよく見かける植物です。

 

 

 

 

 

リナリアにも、ハナバチの仲間が飛来。

ちなみにこの植物、キンギョソウの仲間なのだと

最近初めて知りました。確かに形はよく似ています。

 

 

 

 

 

タンポポに飛来したセイヨウミツバチ。

4月でも初頭だとまだまだ花の数が少ないため

早い時期から花をつけるタンポポは

ミツバチにとっても有難い存在のようです。

 

 

 

 

 

クレマチスで、ハエトリグモが待機中。

(もう少し身を隠した方がよさそうですが)

蜜源は昆虫にとってありがたいのと同時に

常にリスクがつきまとう空間でもあります。

 

 

今回紹介した植物は、いずれも園芸用に植えられたものや

自然に分布を広げた外来種ばかり。しかしそのほとんどが

昆虫に「食事」を提供し、生態系に貢献しています。

在来種・外来種関連は頻繁に問題提起されますが

ほとんどの昆虫にとってはどこ出身の植物でも

餌場であることに変わりはないというのが「現実」です。

その点は一応留意しておく必要があるでしょう。

 

 

 

 

 

【おまけ】

ミコアイサのニセモノ

 

 

 

 

 

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