【特別記事】1時間の制限付き昆虫探索記(向島百花園の場合) | 首都圏生きものめぐり ~関東の動植物に会いにいくぶらっと散歩~

首都圏生きものめぐり ~関東の動植物に会いにいくぶらっと散歩~

雑誌編集者である著者が自ら首都圏の公園や自然地に足を運び、そこで出合った生きものの情報をお届けします。
都会の印象が強い東京にも、カワセミやタカ、多くの昆虫が暮らしています。「首都圏ってこんなに生きものが多いのか」と驚かされる情報が満載です。

 

仕事が昼過ぎから入っていて中途半端に時間があったため、

ちょうどハギが見頃だった向島百花園(墨田区)

ぶらっと出かけた……のまではよかったのですが

出発の遅れや電車の乗り違えなどBAKAなミスがあり

2時間ほどのんびりするつもりが、その半分、

たった1時間しか確保できなくなってしまいました。

 

向島百花園自体は浜離宮なんかと比べ面積が限られているため

単に散策するだけなら1時間どころか30分もあれば十分です。

ただ「生きものめぐり」となると話は別。

普段のようにハギやオミナエシに張り込んだりしていては

あっという間に1時間過ぎてしまいます。

 

仕方ないので、今回は制限時間を設けたゲーム(?)を実施。

1時間という限られた枠内で、何種類・何匹の昆虫が撮れるか?

挑戦すると同時に、こういう時間が限られている時に

効率よく昆虫を探すテクニック(?)をお教えしましょう。

 

 

 

 

 

秋の草原といえば、ホシササキリやエンマコオロギ等の棲み処。

とりわけ向島百花園は自然派の日本庭園となっており

道端に写真のようなそこそこ背丈の高い単子葉類が多数見られます。

あくまで「庭園」として大切に維持管理されていますため

園路の外に踏み出したり植物をかき分けたりするのは

禁止となっていますので、耳と目だけを頼りに探しました。

 

 

 

 

 

 

鳴く昆虫のほとんどは草むらの奥深くに隠れていますが

絶対数が多いため、たまに見える位置に出てきてくれる個体もいます。

鳴く時は翅を震わせているものの、それだけで見つけるのは大変。

どうしても運に左右される面があります。

 

鳴き声は方々から聞こえましたが、

この日撮れた鳴く昆虫はホシササキリのみで3匹です。

さすがに住宅街の真っ只中なので、ウスイロササキリはいない模様。

 

ちなみに向島百花園では昆虫の鳴き声を楽しむ催しとして

夏場にスズムシの放虫も行われていますが、

ホシササキリはどうやら普通に野生で暮らしているようです。

(……っていうかよく考えたら本ブログではまだスズムシの撮影記録がない)

 

 

 

 

 

たまたま足元に着陸したヒメアカタテハ

この時期は至ってポピュラーな存在です。

 

こうして地面に降りてきてくれるのは稀なケース。

少ない時間で多くの昆虫を狙うなら

やはり素直に「花」を狙いましょう。↓

 

 

 

 

 

 

この時はまだオミナエシ(左)やキキョウ(右)が咲き残っており

キキョウの花でキンケハラナガツチバチを撮影しました。

オミナエシの株数もそこそこ多かったのですが

さすがにここでオオセイボウやルリモンハナバチを期待するのは

酷というものでしょう。

 

 

 

 

 

 

ツルボで吸蜜するモンキチョウ(左)と

アザミにやってきたイチモンジセセリ(右)。

イチモンジセセリがこの日最も遭遇回数が多く(5匹)

都会進出に成功していることがよくわかります。

 

実際、街中の植え込みなんかでもよく見ますし。

 

 

 

 

 

鎌倉の寺社さながらに、こんもりとしたハギの株が

園内随所に植栽されています。大きいチョウは期待できませんが

呼ぶ昆虫の「数」に限っていえば恐らくダントツ。

オミナエシと違い変な臭いもないので人のウケもいいようです

 

 

 

 

 

 

この日は妙に人が多いなと感じたのですが

ちょうど「ハギのトンネル」が見頃だったみたいです。

Webサイトでも出ていますが、ここの秋の風物詩として

野草ファンから高い人気を得ていると聞いています。

 

 

 

 

 

トンネル内はこんな感じ。

最近の曇天と違いやたらピーカンだったため

ハレーションを起こして影が濃くなってしまったのが残念。

とりあえず、ハギのトンネルらしい雰囲気は伝わりますか?(汗)

 

 

 

 

 

 

トンネルだろうが何だろうが、

昆虫にとってみれば蜜源であることに変わりはないので

クマバチが中まで入ってくることも多々あります。

トンネル通過中の来園者の頭上でブンブンしていることも多いですが

知っての通り放っておけば至って無害なハチです。

実際、いちいち怖がっている来園者さんもいませんでした。

 

 

 

 

 

 

ハギといえば、やはりお馴染みのウラナミシジミ

ご開帳シーンも押さえることができました。

 

ちなみに左右の写真は別の個体。

彼らの幼虫はマメ科の植物を食べて成長するらしく

結構な数がこの園内で生まれ、成長し、子孫を残すという

ライフサイクルを繰り返しているものと思われます。

(注:ハギはマメ科です)

 

 

 

 

 

お馴染みのヤマトシジミと……。

 

 

 

 

 

キタキチョウにも遭遇。目の前でジッとしていたので

ちょいと捕まえて撮影してみました。

 

 

 

 

 

ご開帳のツバメシジミ♂。天気が良かったので日向ぼっこ中。

 

そういえばここ1週間スッキリしない天気が続いていますが

その分、天候が回復すると一斉に昆虫も活動を再開するはず。

次に日が差すのは水曜と聞いていますが、

できれば日曜午後にでも少し回復してほしいんですけどね……。

 

 

 

 

 

 

園内には日本庭園らしく池もありますが

他の都立庭園と違い、畔までかなり近づくことができます。

所々から顔を出す注水植物では、

翅を休めるアジアイトトンボの姿も確認できました。

 

一方、この時点ではまだいわゆる「赤とんぼ」は確認できず。

ちょうど今くらいの時期から見られるようになるかもしれません。

 

 

 

 

 

最後に、熟したミツバアケビです。

市販のアケビよりもやや小さいですが、食用にはなる模様。

ただ、アケビって食べられる場所が少ない&種多くて食べにくいんですよね(汗)

当たり前ですが、園内で育てているものなので

これを食べたら怒られます。っていうか通報されます(爆)

 

単に昆虫だけを追いかけるのではなく

同時進行で秋らしい植物や風景なども撮影し

園内を満遍なく歩き尽くしたところでちょうど1時間。

カマキリや水鳥(たまにカワセミも来る)などが

撮れなかったのは残念ですが、それでも大分収穫がありました。

 

 

 

 

【9/30 向島百花園に1時間滞在して撮影した生きもの】

アジアイトトンボ・・・1

アメンボ・・・1

イチモンジセセリ・・・5

ウラナミシジミ・・・3

キタキチョウ・・・2

キンケハラナガツチバチ・・・1

クマバチ・・・2

コバネイナゴ・・・1

ササグモ・・・1

ツバメシジミ・・・3

ツマグロヒョウモン・・・2

ナミテントウ・・・1

ヒメアカタテハ・・・1

ホシササキリ・・・3

モンキチョウ・・・1

ヤマトシジミ・・・1

 

マトモに撮影できた昆虫は延べ29匹

(同じ個体を撮影している可能性もあります)

大体2分間に1匹くらいのペースといえますが

この間に当然ハギのトンネルや風景写真も撮っていますので

実際はもう少し高頻度で撮影できるものと思われます。

都立9庭園、好みの差は個々人で異なって然るべきですが

私のイチオシは今も昔もこれからも、この向島百花園です。

 

 

 

 

ちなみに向島百花園の立地はこんな感じ。

都会に残された緑の孤島という雰囲気です。

(こんな所でもカワセミやアオサギなんかが飛んでくることがあります)