ギフチョウを追い求めて(神奈川県藤野) | 首都圏生きものめぐり ~関東の動植物に会いにいくぶらっと散歩~

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雑誌編集者である著者が自ら首都圏の公園や自然地に足を運び、そこで出合った生きものの情報をお届けします。
都会の印象が強い東京にも、カワセミやタカ、多くの昆虫が暮らしています。「首都圏ってこんなに生きものが多いのか」と驚かされる情報が満載です。

今年の春の目標として「ギフチョウを撮る」ことを掲げた私。

早速今日、最も近場で観察できるという神奈川県藤野に行ってまいりました。

新宿から中央線で高尾へ、そこからさらに中央本線で甲府方面へ2駅。

新宿からなら、時間にして1時間強といったところでしょうか?

高尾より遠いということで、ご覧の通り結構な山間部です。

 

 

 

 

 

 

 

まずは藤野駅に隣接した観光案内所へ。

何分「そうだ、ギフチョウ探そう」程度の軽いノリで向かったので

事前情報がほとんどなく、情報収集は必須でした。

闇雲に歩き回ってその辺の草むらにギフチョウがいるわけではありません。

(だったらそもそも絶滅危惧種に指定されていない)

広大なエリアの中から頻出ポイントを絞り込まなくてはいけません。


ではどうやって調べるか?

手っ取り早いのは、素直に案内所の係員さんに聞いてしまうことでしょう。

恥ずかしがることありません。時間を無駄にしないためにも

「この辺でギフチョウのみられる所はありますか?」とダイレクトに質問すればいいのです。

左写真にもある通り、ディスプレイ他数か所に写真が置かれているほど

ギフチョウは藤野の「売り」となりつつあるので、係員さんや地元の方なら知っている可能性は高く、

とりわけ案内所の方は「仕事」ですから結構丁寧に教えてくれるはずです。

ただし、虫かご虫取り網を持っていくような奴には(多分)教えてくれないと思いますが。

 

※藤野のギフチョウは保全活動が進められており、捕獲は基本ご法度です。

 

 


 

 

案内所で周辺地図をゲット。

この手の無料でもらえる資料は、嵩張らない限り貰っておくべきでしょう。

生きもののほかにも、地元の名産や名所などの情報が入手できます。

 

 


 

 

なぜ山の中にラブレターが?

これは「緑のラブレター」といい、駅から相模湖の対岸に見える巨大なオブジェなのです。

手の形の切れ込みのために、まるで山がラブレターを受け取ったかのよう。
かつて藤野が藤野町であった頃、芸術の町を標榜していた名残かもしれません。

(現在、藤野町は相模湖町に吸収合併されています)

 

もちろん、私はラブレターなんざ32年間受け取ったことはありません。

 

 



 

さて、伝え忘れていましたが、上の観光案内所の係員さんの話によると

「今年は寒さが続き雪が多かったせいで、まだギフチョウがほとんど発生していない」

「ギフチョウの頻出エリアに行くには、本数の少ないバスを乗り継がなくてはいけない」

「ついでに名物になっているカタクリもまだほとんど咲いていない」とのこと。

時計を見れば既にお昼の12時を回っており、しかも発生率は極小。

この時点で不発はほぼ確定してしまいました。orz

 

実際、ご覧の通り雪がまだ残っている有様。

 

気温自体は結構高かったので、これから順調に溶けてくれるとは思いますけれどね。

 

 

 

 
ギフチョウに関しては完全に失敗でしたが、

 

 

 

わざわざここまで来て何もせず帰るのも如何なものかと。

せっかくなので周辺エリアの捜索に向かいました。

 

川は高い山に挟まれ、護岸はされているものの水は非常に透き通っていて綺麗です。

 

右は、河原を歩いていたダイサギ

 



 

 
どこでも四天王の皆さん。

 

……要するにどこへ行っても遭遇する鳥ということで。この日も姿を見せてくれました。

もっとも、冬鳥のツグミはこの中に入れるべきかやや怪しいですが。

(左上からヒヨドリ、シジュウカラ、ハクセキレイ、ツグミ




が、一方で新顔との出会いもあり。

草むらに隠れて頭しか映らずわかりにくいですが、これはビンズイ

セキレイの仲間で、山間部に暮らすため少々見る機会の少ない種です。

 

遭遇率 … 2

 

インパクト … 2

美しさ … 3

俊敏性 … 5

 

全身の写っている画像は……無いからこんなのを載せているんです(泣)

 

この後すぐに逃げられました。他のセキレイ同様、動きは俊敏です。

 

 


 

 

 

さて、この時期必ずチェックしておきたいのが、写真のような山間部の原っぱ。

日当たりがよく、タチツボスミレ(右)やオオイヌノフグリ等の小さな花が咲きます。

こういうスポットには、一足早く活動を始める蝶――タテハチョウの仲間が

吸蜜と日向ぼっこ(?)のために多く集まるのです。あと求愛ね。

 



 

まずは王道のキタテハ

タテハチョウの仲間では首都圏で最もよく見かける種ですね。

岩肌にくっついて羽を休めています。

タテハチョウは他のチョウと違い、こういう無機物に止まっているシーンを多く見かけます。

 



 

キタテハを抑えて、今日最も多く見かけたのがこのテングチョウでした。

小柄なタテハチョウで、羽の色も地味であまり目立ちません。

名前は、口が天狗の鼻のように長~いことに由来しています。(写真を要チェック)

 

 


 

 

地面から少し離れて、梅の花で吸蜜するテングチョウ

吸蜜がたまに壇蜜に見えるのは多分私だけじゃないはず。

 




石の上で休むテングチョウ

 

翅を閉じるとまるっきし枯葉にしか見えませんね。

もっとも、こういう閉じた時の擬態自体はタテハチョウの仲間には結構よく見られます。

(例外はゴマダラチョウやアカボシゴマダラ、見たことはないけれどオオムラサキなど)

 



 

排水溝の蓋にとまるテングチョウ

これもやっぱり、遠目だと枯葉が引っ掛かっているだけにしか見えません。

 



 

アカタテハも姿を現しました。

やはり梅の蜜を吸っていますね。

さりげなく、この系統のチョウが木本から蜜を吸っているシーンは初めて見ました。

 

 


 

 

上のアカタテハが地面に降り、翅を開いたところ。

が、後翅が無残に破れてしまっており、何とも痛々しい……。

一応飛ぶことはできていましたが、やはり動きにくいのか

本来なら警戒心が強いはずにも拘らず、私が1メートルの距離まで近づいても逃げませんでした。

無事、子孫を残せることを祈ります。

 

 

 

 

 

 

そんなタテハチョウの仲間の中にも、久々に新顔が!

ご覧くださいこの美しさ。巨大な目のような、まさに目を惹く紋様。

恐らく日本のタテハチョウの中では最も美しい種のひとつでしょう。

その名もクジャクチョウ。もちろん名の由来は鳥の孔雀です。

 

遭遇率 … 2

 

インパクト … 3

美しさ … 5

俊敏性 … 4

 

このチョウは山間部の草原を好むタイプらしく、それゆえ平地の多い首都圏では

 

そうそう簡単にはお目にかかれません。高尾山とかなら可能性はあるかな?

翅の目玉模様は、田んぼによくあるカラス除け(?)の目玉と同じく、鳥への威嚇になるそうな。

 

ちなみに翅全体が写っている画像は……無いからこんなのを載せてry(泣)

 

 

 

 

 

 

 

 

タテハチョウ以外では、こんなのも原っぱで見かけました。

ナナホシテントウ(左)とツチイナゴ(右)。

どちらも全く珍しくない種ですが、春の訪れを告げる大切な存在です。

 

ギフチョウとは会えなかったものの、暖かい陽気の中で初春らしさを実感できましたし

 

本ブログでは初となる2種(ビンズイ、クジャクチョウ)を確認できたので、収穫はあったと言えます。

もっとも、2種とも写真が大分アレなので、またリベンジする必要はありそうですが。

 

 



時間が押してきたし腹も減ってきたので、そろそろ駅に向かおうかと引き返していたところ
途中にカタクリの群生地があることを知ったので立ち寄ってみました。

 

 

もしかしたら一輪くらいは咲いているかも――などと期待しつつ行ってみたはいいですが

結果はご覧の通り。規制は破れないので、そのままスゴスゴ退散いたしました……。



最後に、駅から望む相模湖一角。

この後、隣の相模湖駅に向かいます。相模湖の美景観はそちらでお送りします。

また、ギフチョウ捜索に向けての反省と今後の対策についても次回で書きます。少々お待ちください。

 

(相模湖編に続く)

 

 

 

【3/22 神奈川県藤野で撮影した生きもの】

 

 

鳥類・・・シジュウカラ、ダイサギ、ツグミ、トビ、ハクセキレイ、ヒヨドリ、ビンズイ、ホオジロ

昆虫類・・・アカタテハ、キタテハ、クジャクチョウ、ツチイナゴ、テングチョウ、ナナホシテントウ