みなさんも、そろそろ「受験どうしようか?」「どの学校を受けようかな?」と考えだしていると思います。看護師を目指すとき、学校選びではどのように考えたり、調べたりするとよいのか、考えていきましょう。
③社会人入試を積極的に狙いたい
受験勉強を始める際に考えておくことの一つに、社会人入試・推薦入試を受けるべきかという問題があります。
今、皆さんが高校生の場合、推薦入試を受けられるなら受けることには、それほど不安はないと思います。問題は、皆さんが社会人の場合です。
一般に社会人入試は、受験科目が小論文だったり、国語と数学だったり、学校によっては国語だけだったりというように、一般入試よりも科目数が少なくなる場合が多いです。その反面、倍率は一般入試よりも高くなります。一般入試階が2倍くらいになるとしたら、社会人入試は3〜4倍ほどになります。
倍率が高くなりやすいことから、社会人入試を突破しようと思うなら、ある程度の対策は必要になります。
特に小論文が試験科目に課されている学校の場合、「小論文を書いたことがないから自信がない」「書き方がよくわからない」「仕事や家庭で忙しくて対策する時間が取れない」といった理由で、あえて受験を避けるという人が一定数います。
「一般入試でやる国語や英語や数学なら、大学受験のときにやったから問題ない(自信がある)」
こう言って、あえて時期の遅い一般入試に絞るケースです。
ただ、多少自信がなかったとしても、受けられる機会があるのであれば、社会人入試は受けた方がよいと思います。たしかに対策は少し必要ですが、もし受かれば、受験のストレスを抱える時間を短くできますし、仕事をいつ辞めるかといった調整もしやすくなります。
仮に社会人入試に不合格になったとしても、その後に一般入試も受けられるようにしておけばよいだけです。つまり、本番を一般入試と考えて、その予行練習のつもりで社会人入試を受けるというスケジュールを立てれば、仮に社会人入試が不合格だとしても、メンタル的なダメージは抑えられます。
ここでは、社会人入試を受けることのメリットとデメリットを考えてみます。メリットとデメリットをよく考えた上で、社会人入試を受けるかどうかを決めてください。
(1)志望動機や自己PRを早めに準備する必要がある
社会人入試は一般入試より時期が早いため、志望動機や自己PRを早めに準備する必要があります。これは、メリットでもありデメリットでもありますが、今このブログを読んでいる皆さんなら、メリットの方が大きいと思います。というのは、早めに志望動機や自己PRに取り掛かり、時間をかけて準備できるからです。
社会人の場合、どうして今の仕事から医療の仕事へと移りたいの?という志望動機は、かなりの場合、面接のときに聞かれます。
「どうして今の仕事を辞めてまで医療の仕事に興味があるのですか?」
くらいならいいほうで、
「今の仕事をつづけたほうがよくないですか?」
のような、否定のニュアンス多めのことを言われることもあります。
志望動機は、そのときにどう答えるかという準備になります。
漠然と「人の役に立ちたい」という志望動機ではダメなのです。それでは、上のような質問に答えられないですから。
今から社会人入試を意識し、それまでに何度も志望動機を考え、人に説明できるくらいまで早めに準備すること。何を突っ込まれても「そういう理由なら目指すよね」と言われるところまで仕上げること。
そこまできちんと仕上げることができれば、面接本番での受け答えをしっかりできるようになります。
ここまでするには、どうしても時間がかかります。そして早めに取りかかるためにも、実際の受験の時期を早めに、つまり社会次入試の時期に設定することは、行動を起こすうえで、意味があります。先に、メリットの方が大きいと述べた理由です。
(2)文章を書く練習になる
社会人入試を受けない方には、小論文が苦手なことを理由に挙げる方が少なからずいます。小学校のときの読書感想文の宿題の影響で、文章を書くこと自体がトラウマになっている方も少なくありません。
小論文が苦手という方は、「何がかっこいいことやきちんとしたことを、きちっとした形で書かないと駄目」だと思っているのだと思います。
そんなことはありません。
小論文は美文コンテストではありませんし、プロの作家になれと言っているわけではないのです。自分の考えていることを、きちんと相手に伝えられれば、それでよいのです。
小論文の試験で求められる水準は、決して高くはありません。問われていることに対して、しっかりとした理由をつけて、自分の意見をきちんと説明する。この点がクリアされれば小論文のテストで壊滅的な点数を取ってしまうということは、普通はありません。採点する側もこの点は強く意識していますからね。そしてこのことは、普段から意識して練習することで、誰でもできるようになります。「できない」という方は「やっていない」方だけです。
看護師は、一般の方がイメージするより、事務作業の多い仕事です。とにかく記録を付け、根拠をもって説明する能力が求められます。入試の小論文はその練習だと思っておけばよいです。学校に入ってから文章が書けずに苦労するということがないように、前もって練習しておくというイメージでいくとよいと思います。
(3)受験の回数が増える
社会人入試を受けることで、単純に受験回数を増やすことができます。受験回数が増えることには、メリットがいくつもあります。
単純に受験を確率と問題とみなし、例えば倍率が2倍で、合格の確率が1/2だとしたら、2校受ければ、どちらかの学校に受かる確率は3/4になります。3校受けた場合、いずれかの学校に受かる確率は7/8になります。もちろん、試験の点数や面接の答弁などが入ってくるので、純粋な確率というわけにはいきませんが、実際の受験生を見ていても、今なら、3校受ければ、たいていどこかしらの学校に合格しています。それも複数。
ただ、考え方として、受験回数が増えるとどこかしらに引っかかる可能性が高まるということは、間違いありません。デメリットは、受験料がかさんでしまうというところでしょう。それでも医学部受験よりはだいぶ楽ですが……。
(4)受験科目が増えるということは、勉強の負担が増える
社会人入試と一般入試を両方受けると考える場合、確かに勉強の負担は重くなります。過去問演習に取り組む場合は、それを集めたり、たくさん解かなくてはいけないことになって、やはり大変です。これは明確なデメリットと言えるでしょう。
勉強に関して言えば、社会人入試の負担が国語、英語、数学あたりの、一般入試とかぶるものであれば、負担を増やすことなく、受験回数を増やすことができます。(負担増は過去問を解く回数を増やすくらいですね。)
しかし、社会人入試の受験科目に小論文や一般教養科目あるいは生物や化学が含まれる場合は、新たにそれらの勉強をする時間を確保する必要があります。勉強時間の確保が、社会人受験者の最大の課題になりますから、受験科目の増加は死活問題です。
どうしても勉強時間が作れないから、一般入試だけ、あるいは社会人入試だけ、どちらか点数を取りやすい科目がある方で、という戦略は成り立ちます。
もし一般入試向けの国語、数学、英語の勉強と、社会人入試向けの小論文や一般教養の勉強を同時に行わなければならないのであれば、時間を最大限有効に活用できる方法を模索しましょう。
例えば、すき間時間をうまく活用するのです。5分の空きがあれば、方程式を一問解けるでしょう。英単語を一つ暗記することもできるでしょう。平日、出勤のために電車に乗ったら、下車する駅までスマホアプリで英単語や漢字の勉強をするというのでもよいですし、会社の昼休みの時間に、食事を少し早く終わらせて、英語の長文を読んだり、数学の文章題に取り組んだりするのもよいでしょう。そして、土日や休日のまとまった時間が取れる時に、小論文を一本書いてみる。
また、小論文でも他の英語や数学等の科目でも良いですが、特に苦手とする科目を勉強する曜日や時間を決めてしまうというのも手ですね。学習塾に通うとか、図書館やカフェに通うという日時を決めてしまい、一週間のうちこの曜日のこの時間にこの勉強をする、ということが実践できるようにする。
高校生ほどではないにしても、勉強をやろうと思えば、意外とできる時間は見つかりますよ。時間管理は、社会人には必須のスキルです。うまく実践できれば、長所などのアピールポイントとになります。
(4)勉強の負担が増えるだけでなく、受験にかかるコストもかさむ
受験校や受験回数を増やすほど、受験にかかるコスト、費用はどんどんかさみます。
看護学校の場合、受験料は1回30000円~35000円程度ですから、3校併願し、それぞれ社会人入試と一般入試を受けるだけで、20万円ちかくかかってしまいます。
さらに、入学金の問題があります。入学金はだいたい20~30万円程度ですが、合格したら、手付金の代わりにそれを支払う必要が出てきます。
人によっては、強気に学校と交渉して、入学金などの支払いを先延ばしにする人もいますが、それができるほど交渉能力の高い人は、少数派。大半は、入学金だけは払っているようですね。
費用がかさむという問題は、明確なデメリットです。
これを避けるには、併願校と受験スケジュールを見直し、本命・第一志望校が、スケジュールの一番最後にならないようにすることくらいしか、対策がありません。
かといって、一番最初に受験すると、まだ準備が整っているか不安が大きいかもしれません。
本命の学校の受験を二番目か三番目あたりに設定し、受かったら、そこで受験は終了というスケジュールを組むのが、現実的なコスト対策ということになります。
(5)繰り上げ合格の可能性もある
今、看護学校の受験生は急激に減少しており、どの学校も入試の倍率は低くなっています。定員割れが常態化してきたと言ってよいでしょう。
それだけではありません。今、単願で受験する方は少数派です。大抵の方がいくつかの学校を併願します。そうすると、複数の学校に合格する方が大勢出てきます。
すると、入学辞退ということが非常に頻繁に起こります。名前は出せませんが、合格発表に挙がった番号の大半が辞退してしまう学校さえあります。
そのため、年度内一杯かけて、追加募集を行う学校が出てくるわけですが、同時にいくつかの学校を受験しておく事で、いずれかの学校で補欠合格になり、辞退者が出て繰り上がるという可能性も高まります。合格発表に挙がっている番号の方が辞退して抜けた分だけ、補欠合格の方が繰り上げ合格するわけですから。学校によっては、一旦完全に不合格とした方を、辞退者の補填のために繰り上げるということさえ行っているくらいです。
繰り上げ合格の可能性まで考えるなら、受験回数が多い方がやはり有利です。
問題は、繰り上げ合格の連絡がいつくらいになるか、ということです。多くの場合は、合格発表後の入学手続き期間(入学金などを払う期間)が終わると同時に問い合わせがありますが、学校によっては、かなり遅い時期に連絡がくることもあります。連絡の時期によっては、デメリットにもなりますね。
(6)試験までの期間が短い
一般入試は翌年の冬におこなわれますが、社会人入試は今年の夏から秋にかけて行われます。自分に自信をつけるためにも少しでも多く勉強したいと考える方には、秋の受験を見送りたいという方もいます。
勉強する期間、対策のための時間が短く、少なくなるということは、明確なデメリットです。
やはり、これをいちばん心配する方が多い。受験は準備のゲームです。どれだけ事前に準備できたかにより、結果が変わります。きちんと準備できていれば、かなりの確率で合格できますが、そうでないと、結果が伴わない場合が出てきます。
そこで、対策期間を増やすために、社会人入試を受けずに一般入試に絞ったり、今年ではなくて来年の受験を考えるという考え方が出てきます。
(7)試験までの期間が短いということは、合格した後の時間は長い
試験を終えた後のことを考えると、試験の時期が早いということは、メリットになる可能性があります。
社会人の場合、ある程度の時期まで働いて、その後に会社を退職して入学に備えるということになります。年内いっぱいで辞める方、1月前の2月で辞める方、3月の年度末で辞める方、だいたい合格後の退職のパターンはこの3つですが、辞めたい時期にうまく辞められるかどうかという問題があります。引継ぎの問題もあります。
3月まで受験を引っ張り、3月の受験で受かったから、今日で仕事を辞めます、というのでは、社会人としての振る舞いにちょっと問題があると言えます。
その点、社会人入試などで早めに受験が終わり、合格という結果を手にすることができれば、どの時期に退職するのか、その調整を会社側としやすくなります。受験後の時間を長く設定できることのメリットと言えるでしょう。
仕事や家庭生活を送りながら受験対策のための時間を作れるか、預貯金などの経済的に問題はないか、これらを軸に、自分なりのメリットとデメリットを考えて、社会人入試を受けるかどうか決めてください。
ただ、メリットとデメリットは両方ありますが、今年中に合格する可能性を高め、ライセンスを取得するまでの時間を短縮させようと思うなら、社会人入試の機会を見逃すのはもったいないと思います。条件が合えば、ぜひ活用したいものですね。
看護学校受験についてのノウハウをまとめた、「看護系入試マニュアル」をホームページに掲載しています。ぜひ一度お読みください。
看護系入試マニュアル
https://scholeascholou.web.fc2.com/contents_102110.html
社会人・大学生のための看護系受験研究会
スコレー・アスコルー