昨日は力尽きて途中で終わってしまった

横浜音祭り18区コンサート 最終レポ 前編


初日、2日目のレポはこちら

初日青葉区フィリアホール

2日目旭区サンハート

 

今日はコンサートの後編をお届けします。

 

今年リニューアルした金沢公会堂で

阪田知樹さん自身が選定したスタインウェイのグランドピアノでの演奏

 

後半は

ショパン バラード1番

リスト 3つの演奏会用練習曲第3番 ため息

ベートーヴェン ピアノソナタ第32番

 

ショパンバラード1番

最も印象的だったのは

やはり緩急のつけ方でした。

タッチを自在に操る演奏は

とてもドラマティックだけれども

揺れすぎていない

ホントにバランスの取れた演奏でした。

 

見るもの、聴くものを惹きつける演奏

これは奏者の臨場感によるものが

とても大きいと思います。

奏者がどんな世界観をもって演奏しているのか

それが聴衆に伝わります。


 

もちろん奏者の世界観そのものを

正確に感じることはできませんし

聴衆の受け取る世界観も

ピタッと一致するわけではないけれど

私たちは言語化されていない

場の臨場感を共有する能力が

もともと高度に備わっている生き物

 

その場の臨場感が最も高いものの影響が

最も強く表れるのです。 

 

阪田さんの演奏は

並外れた集中力と表現力

でもその中に入りすぎていない

常に自分の中にいて

音楽を客観的に奏でている自分と

曲の中に入り込んでいる自分が同時にいる

そんな感じがいつもします。

 

いつか阪田さんのインタビューで

音楽家とは、ある意味シャーマン的な存在

と、おっしゃっていました。

そういった姿勢で

音楽に取り組まれているからこその

この演奏なのだと思います。

 

演奏家の中には

いろいろなタイプの演奏家がいます。


多くを見てきたわけではありませんが


表面上の美しさのみで

中身が伴っていないように感じる方


パワーでピアノをコントロールしよう

としているのが分かる方


自分の中に入り切ってしまい

客観性が感じられない方


音色が単調な方 


音を聞かずテクニックに走り

演奏が雑になってしまっている方


音楽を奏でるのではなく

音を並べているだけの方

 

これはプロと言われる方々の中にも

普通に感じられるものでした。

ご本人の自覚はどうか分かりませんが

伝わってくる印象は

上述したような方がいることは事実です。

 

これらの演奏スタイルが好みの方も

たくさんいることも事実。


ですが、私の印象としては

人気のある方の演奏が

必ずしも素晴らしいものではないんだなと

たくさんのコンサートに足を運んできて

実感しています。


もちろん私の好みが

多いに影響しているとは思いますが

この感覚に共感する方も

多いのではないかと思います。

 

何を目的として

コンサートに行くのかによっても

満足度が変わるので

一概にどの演奏者がいいとか

悪いとか言えるものではなく

 

ただ

私の満足度は、奏者が

音楽を楽しんでいるか

音楽とともにいるか

そして同時に自分とともにいるか

それを客観的に見て感じられるか

これらの根底には

高度な演奏技術が担保になっているのは

いうまでもありませんが。

 

そういう視点で見ているのだと思います。

 

和声進行がこうだから

こういう弾き方がいいとか

曲の解釈の違いなどの

専門的なことについては

はっきり言って分かりません

 

でも、

専門的なことが分からないからと言って

音楽が楽しめないわけではない

 

もっとシンプルに

奏者とともに

楽しみを喜びを共有する場に

自分を置きたいと

私は思っているのだなと

改めて思いました。

 

だいぶ話がそれました。


 

次はリストの3つの演奏会用練習曲 

第3番 ため息

 

音源のみ聞いていたので

演奏を生で見て

なんてトリッキーな奏法なんだろうと

手元から目が離せませんでした。


主旋律を右手と左手が一音ずつ

交互に奏でている!!


音源を聞いたときに

これはどうやって弾いているのだろうと

ふと疑問に思ったことが

これか!とアハ体験のように

インプットされました。


リストさん、びっくりしましたよ。

 

アクロバティックな手元とは対照的に

奏でられる音は

流麗で繊細でどこか懐かしさもある

朴訥とした美しさがあり

音の流れが止まることなく最後まで流れ

その雰囲気を保ちつつ

最後は一旦音の流れが止まり

主旋律が奏でられ

穏やかな和音の後に左手が

音階を昇り静かに終わる

 

常に柔らかくしなやかな動き

体も腕も手首も指も

全部がしなやかでなめらかで

途切れることなく音を奏でる

 

一流の演奏を堪能しました。



そして、最期

ベートーヴェンのピアノソナタ第32番


天と地を思わせるようなコントラストのある作品

第1楽章は

ザ・ベートーヴェンという

力強く情熱的で

ときにインフェルノ

烈火の地獄絵図を彷彿とさせる

激しさもあり

かと思うと

突然の救済があったり

クルクルと瞬時に変わる

景色のような演奏



阪田さんは

ピアニシモの美しさに定評がありますが

フォルテのヴァリエーションも豊富

そして体全体で弾いているのですが

腕が長いのでそれほど大きな動きでなくても

十分な音量が出るようです。

多分、力の伝道効率がとてもスムーズで

無駄がないのだと思います。

そこも魅力の一つですね。

コンサートでは奏者の演奏姿の美しさも

私は重視してます。


そう、無駄にエネルギーを

使っていない

必要な分だけ

ピアノの音を出すことだけに

エネルギーが使われている感じがします。

エネルギーが無駄に放散されていると

見ている、聴いている方も

無駄なエネルギーを使ってしまい

曲の純粋な良さを感じられないことが

あると思います。


あれ?何しに来たんだっけ?

曲を聴きに来たんじゃなかったっけ?

みたいな

何に満足してるのか

分からなくなる演奏ではなく


曲の魅力そのものが

よく伝わる演奏は

とても好きです。


阪田さんは

その能力が高い方だと思います。


第2楽章は

ジャズや、ブルースを思わせるような

コード進行、リズムが続き

あれ?ナンカチガウゾ

ナンカオモシロクナッテキタ

と、異世界へ行ったかのような展開

阪田さんがブギウギとおっしゃっていたように

突然クラシックから

ジャズへ、、、

どんどん高揚する変奏

高みに上り詰めそして

最後はやはりクラシックに戻り

穏やかな暖かな

美しいエンディング


最後の響きが

会場に溶け

消え入り

静まり返る


数秒ののち


奏者が

こちらの世界へ帰ってきた


そして一瞬のうちに

静寂から歓喜の渦へ


鳴り止まない拍手のなか


全力で演奏した阪田さんの

穏やかで満たされた表情に

胸が熱くなりました。


会場にいた方みんなが

同じように感じていたとしたら

その拍手の渦の中

その中心である阪田さんは

さながら全てを熱く燃やす赤い太陽

(衣装は鮮やかなブルーのシャツに黒のスーツでしたが笑)


身を乗り出し

手を高く挙げ拍手を送る観客も

あちこちに見受けられ


興奮冷めやらぬうちに


阪田さんが再登場しました


きてくださったお客様に

感謝の意を述べるとともに

アンコール曲選定の経緯も語ってくれました


ベートーヴェンの

各ピアノソナタの調性と同じもので

つながりを持たせたとのこと


初日は

変イ長調

シューマン/リストの献呈


2日目は

ホ長調

リストのペトラルカのソネット104番


そしてラストは

ハ長調で

ラフマニノフ の楽興の第6番

でした。


締めにふさわしい

完結の曲


よく考えられたプログラムでした。


大満足の3公演


幸運にも3公演ともチケットが取れたので

それに合わせてスケジュールを組み

楽しみにしてきました。


まさか自分が

このようなレポートを書くとは

思っても見ませんでしたが


こうやって書き出すことで

頭の中で演奏が再現され

もう一度コンサートを楽しむことができました。


これも一つの流れのようですね。


また機会があったら

コンサートレポ書いてみたいと思います。


お付き合いくださりありがとうございました😊


阪田さんのコンサートに行きたくても

行けなかった、チケットが取れなかった方も

いたと思いますので、このレポートがお役に立てば、という思いも込めて💕