今日はレースリポートを書く予定でしたが急きょ予定を変更しますw
前回、Gr.4のレースに無理があるのでは?という記事を書きましたが、
https://ameblo.jp/scfromla/entry-12476475873.html?frm=theme
この中に載せたGT Planetさんから拝借した性能一覧表に関して質問をいただきました。
引用されていたBoP表の読み解き方についてなのですが、単純な車速(最高速)で言えば
「Power/Weight」の数値を基準に判断すればいいのでしょうか?
また、「Torque」は加速度の良し悪しを表す、という認識で合っていますでしょうか?
例えばGr.3の表であれば、「GT-RのPower/Weightが一番高数値のため最高速度が一番速く、
また、「Torque」は加速度の良し悪しを表す、という認識で合っていますでしょうか?
例えばGr.3の表であれば、「GT-RのPower/Weightが一番高数値のため最高速度が一番速く、
トルク値も優秀だから加速も良い」ということでしょうか。
今、現実としてストレート主体コースのレースであってもGT-R無双にはなっていないと思いますが、
今、現実としてストレート主体コースのレースであってもGT-R無双にはなっていないと思いますが、
その理由はタイヤへの負荷度合等のデメリットが上回ってしまっているためなのでしょうか。
また、マスタングよりもPower/Weightが上のアテンザが直線番長という印象も特にないため、
また、マスタングよりもPower/Weightが上のアテンザが直線番長という印象も特にないため、
今一つ車のスペックの読み解き方に確信が持てず…。
どうぞ宜しくお願いいたします!
どうぞ宜しくお願いいたします!
こういう工学的な話は絶対マッキーさんの方が強いと思うんですが、あ、そういえばマッキーさんのコラムにも
これに近い内容がありましたので先に
ゲストコラム「速さに必要なのはトルク?パワー?」
こっちを読んだら私いらないですね、さすがマッキーさん、おつかれさまでした!また遊びましょう @Zura
こちらと内容が重複する部分もありますが、内容をざっくりとまとめていきたいと思います。
なお、専門分野でもなんでもないので、間違いがあればコメント欄に書いていただければ直します^^;
・パワーウエイトレシオとは
まず質問の順序に沿って、Power/Weightの話ですが、これは俗にパワーウエイトレシオ、と呼ばれているもので、
重量出力比とか馬力荷重とか呼ばれているものです。一般に日本では
重量(kg)÷馬力(PS)= kg/PS 1馬力に何kg乗っかっているか、で表記されますが、海外では逆に
馬力(PS)÷重量(kg)= PS/kg 1kgあたり何馬力か、で表すようです。
私が引っ張って来た表もこちらになります。ややこしいですが、上の場合、値が小さいほど高性能、
下の場合が逆に値が大きいほど高性能になります。
現在のBoPで単純に並べると、Gr.3では良い方から
GT-R、アテンザ、マスタング、ヴァンテージ、ジェネシス・・・と続き、
ワースト3はフォードGT、ルノーR.S.01、GT by シトロエンとなります。
一方Gr.4では同じく
メガーヌ、シロッコ、TT Cup、RC ZとFF車から始まり、
ワースト3はNSX、ケイマン、GT by シトロエンです。
燃費レースで無双していたシトロエン、性能落とされすぎて最近見なくなりました。
みんないなくなってしまったんでしょうか。ヒロシです、ヒロシです、ヒロシです。。。
PWRは単純に性能の良し悪しの参考値になりますが、これが良いからイコール最高速が良いか、加速が良いか、
というと、そうはなりません。この数字はあくまで、その車両のエンジンの最高出力を基に出した数字なので、
例えば車が停止状態からヨーイドンで動きだす時には当てはまりませんし、車はエンジンだけを単体で回す
道具ではなく、分かりやすいところではギア比の問題もあるので、あくまで参考の値と考えられます。
ちなみに、日産GT-Rの開発責任者で現在は台湾のラクスジェンに所属している水野 和敏は、
ベストカーwebのインタビューで
いきなりですが、速さとパワーウェイトレシオの間に、関係はまったくありません。
速さに関係するのは0~4000回転領域のトルクウェイトレシオです。
私はレースに携わっていた時に、回転数が上がりすぎないエンジンを作れというオーダーをしました。
7000~8000回転の間しかパワーゾーンがないエンジンより、2000回転から4000回転の間で
トルクウェイトレシオがしっかりあるクルマのほうが速いからです。
クルマを軽くして、パワーを上げればパワーウェイトレシオの数値は下がります。
でもそれでパワーウェイトレシオが「1」とか「2」のクルマを作っても、タイヤにかかる荷重が
抜けちゃうようじゃ、まったく意味がないんです。
と語っています。

ちょうど今、水野さんの車が一番ですね^^;
・トルクとパワーの意味
で、単純にPWRの質問に答えるだけなら「参考程度です」で終わるところが、話を分かるようにしようとすると、
結局この話題に触れざるを得なくなります。パワーとトルクです。
マッキーさんのコラムを読んでいただいた方が早いですが、トルクというのは物体を動かす力です。
自転車のペダルなら踏む力、例えば今目の前に何か物があったら、どんな重さのものを持ち上げられるか、
ということです。強引に解釈すると筋力です(。∀°)
一方で、出力とは、仕事率のことになります。最近は規格の変更でカタログなんかにも単位:kwで記載されて
いますが、理科の授業なんかで出てくる奴です。
ただ、長年自動車は馬力で見てきたので、たいてい馬力が併記されており、かくいう私も、突然馬力表記が
消えたらワケが分からなくなりますw
自転車であれば、どれだけのスピードでこいだか、バーベルならどれだけのスピードで肩の上まで持ち上げたか、
ということになります。
単純に出力はトルク×回転数という式で計算されるので、エンジンに話を戻せば、馬力というのは
あるトルクの動力がある回転数で回った時に発生している力、という『仕事の結果』みたいなものだと解釈できます。
よく自動車のレビューなんかでも
「トルクを感じる」「すごくパワーがある」といった表現がなされて、あたかもトルクとパワーは別のもの、とりわけ
加速感=トルク、最高速=馬力、という概念で語られがちですが、厳密に考えると、動いている自動車はトルクに
回転をかけた仕事で動いているわけで、これらを分けて表現するのは誤り、
全ては『パワーの結果』ということになります。
ですから、単純に質問内容に返答すると、答えは『トルクの数字がイコール加速の良さではありません』
となります。
しかし科学的にそんなこと分かっていながら、なお『トルク感』といった表現が通用するのは、
『そのトルクをどの領域でもっとも発揮しているのか』というところが関係してくると思います。
なお、単純に考えて、出力を除くすべての条件が同一の下であれば、出力の大きい車の方が
最高速が速くなります。
・出力曲線とエンジン特性
パワーとトルクに関しては、JAFにも同じような説明がなされています。
JAF クルマ何でも質問箱 最高出力と最大トルクはなにが違うのですか?
ここに例題としてディーゼルとガソリンのエンジンの出力曲線が出てきます。
ディーゼルは特性上低回転で最大トルクを発揮します。ということは、必然的に出力もガソリンと比べると
低い回転域で最大となるため『加速が良い』と感じます。
ガソリンエンジンでも、最近のダウンサイジングターボだったり、排気量の大きいエンジンというのは相対的に
回転の低い領域で最大トルクに達するため、結果的に『トルクが太くて加速が良い』という感想に至ります。
一般道を走っていて、回転域の上の方を使うなんてことは、あまりなく、街中では低~中回転が中心になるため、
高回転寄りのエンジンは最大出力の見せ場が無く、『トルクが細いけど高速道路へ行くとパワーはある』
といった感想が出てきます。これが、トルクとパワーが『分離』してしまう正体ではないかと思います。
で、GT SPORTでも、ちょっと今までの作品より見つけにくいですが出力曲線は見ることができます。
いくつか即席でキャプチャーしてみました。





一方GT-Rは611PS/1311kgです。
トルク曲線を見てみると、3.8L V6ターボエンジンを積むGT-Rは4000rpmあたりで既に最大トルクで、これを
6500rpmあたりまで維持しています。
それに回転数を掛け合わせた値である出力も、回転数に比例するように綺麗に右肩上がりで、リ
ミット目いっぱいまでほぼ上がり続けます。
(グラフに線が引かれていないため定規とかで計らないと正確な 数字が読み取れないw)
燃費レースになってショートシフトを強いられた際、GT-Rは多少ショートシフトしてもまだパワーバンドを大きく
外れないため、そこそこのスピードを維持できる、というのは利点です。
グラフのスケールが車両の数字に合わせて設定されているので、本当は縮尺を合わせる加工でもしたら
もっと分かりやすいんですがそこは各々補完していただくとして、アテンザのどんなスペックか
分からんエンジンは、低回転域でのトルクが小さく、1000rpmあたりでは25kgfmぐらいしか無いように見えます。
その後の上がり方もやや不規則で、最大トルクを発揮するのはかなり高回転寄り。最大出力を発揮するのは
リミット手前のあたりで、曲線がとんがった『山』になっています。
ざっくり考えて、アテンザはエンジンの最大の力を発揮できる領域が『点』に近いのに対し、GT-Rは幅広く
『面』のイメージです。
マスタングの方は1000rpmの段階で30kgfmぐらいはありそうなので、出足のよっこいしょ、の部分での出力が
マスタングを上回っています。
どう考えても5L以上のV8と思われるエンジンはなだらかなトルク曲線で6000rpmに向かって上がっていくので、
アテンザと比べて最高出力と、それによって導かれるPWRは低くても、実際に走行していれば、多くの回転域で
マスタングの方がアテンザよりも高い出力で走っているはずです。
水野さんの話も、簡単に言うとこういうところに繋がります。
FT-1はGr.3の中でトルクの値が最も小さいですが、ご覧のように10000rpmを超えてくる超高回転エンジンで、
回転で出力を出しています。筋肉はあんまりないけどめっちゃ足を回して自転車こいでるわけです。
(実際は筋力がないとむりですが)
で、マスタングでけっこう顕著ですが、トルクがリミットに向けてガクンと落ちていく車というのは、リミット付近で
出力も落ちてしまうことがあります。
これに気づかないで、何でもかんでもリミットに当たるギリギリまで回していると、パワーが出ずに損をして、
なおかつ燃料だけ消費して大損していたりします。
最近初めて使って知りましたが、マクラーレン650S Gr.4なんかもその中の1つで、こいつは8000rpmあたり
(セット固定だと次のギアが何速かで微妙に最適値は変わります)を超えて回す意味が無いのですが、
放っておくとここから先も結構上まで回ってしまうため、気付いていないとかなり損をしています。
セッティングできるなら、出力特性を考慮に入れたギアの組み方が大事ですし、逆にセッティング禁止なら、
そのギアに合わせた最適なシフトタイミングを考える必要があります。
レース車両ではあまりありませんが、市販車だと『もうパワーバンドは通り過ぎているが、次のギアが
やたらと遠くてシフトアップするとこれまた外れるから結局ギリギリまで回した方がまだマシ』なんてこともあります。
これでだいたいの説明ができたと思います。GT-Rが直線コースで必ずしも無双にならないのは、
トラクションのかかりが異常に悪い上に
(あまりにトラクションがかからないため、スタンディングスタートなら燃料マップを6にした方が
パワーが減ってリアがグリップし、マップ1より早く加速する、という珍事が発生します。
※レーシングハード トラクションコントロール有りでの計測)
前後重量バランスがかなり前寄りになっていて、前輪の摩耗も激しいためというのが主因です。
車の設計が古いし重心も高いのである種リアルなんですけどね。ただ、タイヤレースでなく燃費レースなら、
直線が元々速い上にパワーバンドが広くて燃費を稼ぎやすいので、グリップ不足を補うメリットがあると思います。
最後に、ディーゼル車と電気自動車もせっかくなのでキャプチャーしてみました。


リミットまで回すと、もはやそのパワーは起動時並みに低下、そしてシフトアップしてもすぐピークを通過します^^;
ズラさんはGT SPORTを始めたころ、デイリーレースのアテンザワンメイクで勝利を稼ぎ
「みんなディーゼルの使い方分かってないから抜ける抜けるw」てなことを言ってましたw
一方EVですが、よく言われるように、初期段階でトルクは最大になり、それがしばらく続きます。
その後は効率が落ちてトルクは落ちていきますが、エンジンと違って10000rpm以上回すのは比較的容易なので
(受け売りですが燃焼関係の部品が無いのと、エンジンのように爆音がしないので一般での使用に耐えうるから、
だと思います)変速せずに回し続けて出力を維持する形になります。
ただそれでも、一定以上になるとどんどん出力は低下していきます。
(起動後すぐ出力も最大になっているように見えますが、グラフの左端が4500rpmから始まっているので、
実際はこの左側でトルクは横ばい、出力は0に向かって直線で下がっているはずです)
『EVはギアがいらないと言いますが、フォーミュラEにはどうしてギアが付いているんですか?』てな質問が
時々あったりするんですが、これを見るとなんとなく合点が行きそうです。
高回転では効率が落ちてしまうので、一般道で80km/h程度までの範囲で走るならともなく、200km/hなんて
速度を出すのに、1つのギアでカバーして超高回転にするのは効率が落ちるし、部品の消耗なども
進んでしまいます。
テチーターとe.damsのルノーパワートレイン勢は、1ギアで昨年のFEを圧倒していましたが、
1つのギアで全ての速度域をカバーすると効率が落ちる、という観点から2速を採用しているところもあるあたりに
面白さが見て取れます。
日産は今季唯一の2モーターではないか、という噂があり、以前もNIOやDSが採用していましたが、これらも、
最高出力が規則で決まっている中で、モーターを増やしてトルクを増加させ、代わりに回転数を落とすことで
効率を上げよう、という試みだと考えられます。
非常に長くなってしまいましたが、こんな感じでいかがでしょう?みなさんも新しい車両を使う際には、
まず最初に出力曲線を調べるようにしてみてください。知らないよりたとえ0.1秒でも速く走れる、というか
スタート段階で他の人から0.1秒負けているかもしれません。