【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】キリル文字の宛名 | シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you 島ちゑ

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シナリオ・センター大阪校代表取締役 小島与志絵 ペンネーム 島ちゑのブログです。

 センターのみなさんの取材になればとクラスのあとの呑み会にウクライナ人の友人に参加していただいたことがありました。現在の侵攻がはじまるずっと前のことでした。とても丁寧に郷里のことや、日本での仕事、子育てのことなどをはなしてくださいました。そのころ彼女の父上がご病気になられ数か月ウクライナへ戻られることが決まり、クラスでお見送り会を開催しました。後日、母国にいる彼女を励ます為に元遊郭を居酒屋にされている『百番』の二階座敷で、模造紙二枚に、彼女の似顔絵やへんてこりんな絵入りのレターを描きました。

 さて、住所。彼女からもらったメモを頼りにわたしが手書きでキリル文字を書いたのですが慣れない文字。幼児のいたずらのような拙さで、果たして届くのやらと心配していた処、のちに伺うと届いていたとのこと。でも可笑しさを隠しきれない笑顔でした。

 あの宛名の土地に暮らす人たちは今、辛い想いをされていないのかと想いをはせればせつなくも哀しみに覆われます。今、彼女は可愛らしいお孫さんも成長されて、日本でお元気にお医者さまをなさっています。

 月刊新潮に連載されていた坂本龍一氏の原稿『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』、二月号最終回を拝読しました。なおもビッグスケールの芸術活動を続けてらしたご姿勢に感動しました。そして次の文章に惹かれました。

「訪れたことがない国でもひとりでも知り合いがいれば、そこはただの異国ではなくなります」

 坂本氏はテレビでウクライナの青年ヴァイオリニストが地下シェルターでウクライナの伝統民謡を奏でている姿に胸を打たれたとのこと。気になっていた処、ウクライナ支援のアルバム制作の話が重なり、その青年のために作曲されたそうです。直接会われたことはなかったそうですが…

 ひとりへの想いの強さ、純粋さ… それは世界を変えてゆくことにつながります。