2013年6月22日記事の再更新


レバノンにシリア難民120万人以上が流入


2011年からシリア騒乱 が続いていて、シリア政府と反体制派による

武力衝突が続き、多くの国民が巻き込まれて殺害されている。


今、シリアでは何が起きているのかといえば、

スンニ派とシーア派の宗派間の闘争である。


なかなか、この騒乱が終わらない原因の一つに

最近ではシリア国内の闘争ではとどまらずに、

レバノンのシーア派民兵組織ヒズボラが

アサド政権に加勢しており状況はさらに悪化している。

また、レバノンのスンニ派グループもシリア反体制派を

後方支援しているとみられている。



シリア総人口は2100万人

アサド政権を支持する派閥シーア派

反体制派を支持する派閥スンニ派。

そのどちらも支持しない人達もいるかもしれないが

シーア派以外の多くの人々が殺害されて行き場を失っている。


レバノンの総人口は400万人

逃げ場を失った人々は隣国トルコやレバノンなどに逃れているが、

トルコ国内でもエルドアン首相に対する反発から政情不安が続き

今、レバノンへ逃れる難民が急増し120万にまで膨れ上がっている。

これは、レバノン人口の7割近くがシリア人ということになる。


レバノン政府は120万人以上ものシリア難民について

今後、どのように対応していこうと考えているのだろうか。


暫定首相ナジーブ・ミーカティー氏が取材に答えた。



Q1. レバノン、スレイマン大統領が民兵組織ヒズボラに対して

  シリアから撤収するように呼びかけているようだが、

  シリア反体制派からの報復としてレバノンにロケット弾が

  撃ちこまれるなどしているが、どれほどリスクが高いのか?


ミーカティー首相

ヒズボラに対しては、シリア情勢に介入しないように求めている。

シリアに介入すれば、レバノンにとっては問題である。

シリア政府軍も反体制派も支持してはならない。



Q2. レバノンは中立を維持したい立場のようだが現実的か?

    シリア国内は宗派間の対立になっており、また 

    レバノンのシーハ派グループはアサド政権を

    レバノンのスンニ派グループは反体制派を支持しているようだが

    これでは、レバノン国内の舵取りも難しいのではないか?


ミーカティー首相

シリアに関与している者は、じきに理解するだろう。

こういったことは、レバノンにとってプラスにならない。




Q3. レバノンのシニオラ前首相によれば、民兵組織ヒズボラは

   レバノン国家よりも強い力を持っているというが、そういった

   意見には同意できるか?

   ヒズボラの存在が、今、アサド政権の維持にも係わっているともいうが・・・


ミーカティー首相

私はレバノンの首相である。

国を信頼している。

ヒズボラにも、それなりに目標や狙いがあってのことだろう。

今はアサド政権を支持することが重要かもしれないが、

じきに理解する日がくるだろうと思う。

一番重要なのは、レバノンの国家の維持である。

それを求めている。



Q4. レバノンでは大変な内戦が1975年から始まったが

   欧米では、レバノン内でも、再び、始まるのではないかと

   懸念の声が出ているが、その心配はないのか?


ミーカティー首相

それはないだろう。

ヒズボラもレバノン内で問題を起こしたくないと考えている。

もちろん、レバノン政府は、ヒズボラがシリアで戦うことも

受け入れていないので、とにかくシリアの情勢には関わってはならない。


今、シリアからの難民の数が増えており

現在、50万人~55万人ほどの登録難民がいるが

彼らはレバノンに支援を求めている。


さらに、以前から70万人もの難民が流れ込んでおり

サポートを求めないで生活している人々もいる。


つまり、レバンノ内には120万人ものシリア人難民が

生活していることになるが、これはアメリカに9000万人の

難民が押し寄せ、イラクに2000万人の難民が流れ込んだのと

同様のことで、どれほどのことか想像してみてほしい。


レバノンの能力を超えていることを理解してほしい。

そこで、国際社会に支援を求めたい。



Q5. そういった支援を受けているのか?


ミーカティー首相

クウェートのサミットでは16億ドルの支援を約束されていたが

その資金が現場には届けられていない。


トルコ、レバノン、ヨルダンの難民問題を解決するためだったが、

レバノンは約束された資金を全額受け取っていない。

クウェートの会議以来、財政状況は悪化する一方だ。


国連組織が資料を発表しているが、おそらく

今年中に100万人以上のシリア難民がレバノンに残るだろう。

これでは、この国の全土が難民だらけになってしまう。


社会・経済的なインフラにとっても問題だし

政府の予算にも重くのしかかってくる。

難民の生活を支えるのも大変で

財政赤字が増える一方だ。


とにかく、レバノンはサポートがなければやっていけない。


それでも、我々レバノン国家はシリア難民の同胞を受け入れる

用意があるが、我々は孤立するべきではない。

国際社会は、レバノンと共に難民を受け入れる負担を分け合うべきである。


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このミーカティー首相の回答の中に

「ヒズボラにも、それなりに目標や狙いがあってのことだろう」

という言動が心に引っかかる。


ヒズボラが、シリアでアサド政権を存続させるつもりもないなら

いったい何を考えてヒズボラはアサド政権に加勢しているのか。


万が一、シリアは反体制派が敗れて、アサド政権も崩壊すれば

新政府が誕生することはあっても、レバノン国家に吸収される

ことはなさそうだ。


けれども、民兵組織ヒズボラがシリアに住みつくことがあれば、

シーア派ヒズボラ政権が誕生する可能性はあるかもしれない。


アサド政権よりも危険なテロ国家の誕生につながる可能性すらある。


この難民問題が、まったく他人事とも思えないのが北朝鮮問題だ。


以前から、北朝鮮から大量の難民が出たらどうなるのかと

日本でも取り上げられてきたことはある。

けれども、誰もそれを現実問題として本気で考えた事はない。


国の人口の7割近い数の難民が押し寄せた場合に、

中国、韓国、日本がレバノンにのように寛容に受け入れるとも

思えないので、こういうことが現実に起きたら、受け入れを

用意する必要があるのだろう。


北朝鮮の金体制が崩壊し難民で溢れたら、北朝鮮は資本主義国家になるのか

ロシア・中国のような社会主義を保つのかどうなるのかと気になった。