メモリー48:「遥かなるゴールドランク」の巻 | 天然100%!今日もがんばるオレンジブログ!

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基本的にはポケモンの二次小説で、時折色んなお話を!楽しく作りたいですね!

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 遠回りもたくさんあったけど、ここから先は助けを待っているポケモンたちが待っている。ますます気合い入れていかないとな!!よーし、頑張るぞー!!



 「あっ、バッジが…………」

 「目的のフロアに着いたから反応したんだね。早いところエレキッドを見つけよう」

 「そうだね」



 ここは“ハガネやま”の5階。エレキッドが助けを待っているフロアだ。そして階段を上ってきたこの部屋には東側、西側、そして南側と三方向に道が伸びていた。さらに北側の隅っこにはキラリと輝く“ふしぎだま”も二つ見つけることが出来た。



 「これは………“ふっとびだま”と“あなぬけのたま”だ!大切に道具箱に入れておくね♪」

 「サンキュー。助かるよ」



 ボクはチカにお礼を伝える。思い違いだろうけど、そのとき彼女がほんのり顔を赤くして小さく頷いたような気がした。ひとまず南側へと向かってみる。しかし、そこはすぐに行き止まりになっている部屋しかなかった。仕方ないので一旦引き返す。



 「見つけたぞ、救助隊!」

 「しまった………うわぁ!」

 「ユウキ!?もうっ!!“でんきショック”!!」

 「ぎゃああああ!!」



 元の部屋に戻ると、西側の道からやってきた単独行動のバルキーから攻撃を受けた!しかしすぐさまチカが援護をしてくれたおかげで、すぐに倒せた。ボクたちは休む間もなく、今度は東側へと進んでいく。するとどうだろう。少しして別の大きめの部屋へと突入した。そこにはお金が68ポケ落ちていただけで、他には特に無い。更に南側へと道は続く。



 しばらくするとまた別の部屋が見つかった。ここには特に何も無く、西側に向かって道が伸びているだけ。当然ながらボクたちはひたすら歩いていく。今度は途中でL字型になってたりして複雑な造りになっていた。しかも結構な距離を歩いたので、必然的に体力を消耗することにもなったのである。それでも他のポケモンと遭遇しなかっただけ、マシなのかも知れないけど。



 「うーん…………」

 「特に何も無さそうだね」



 どれくらいの時間歩いたかわからないけど、また小さな部屋に着いた。だけどさらに西側に道が伸びている他には何もない。一体どこまでこの道が伸びているかわからないが、とにかく先に進むしかない。またもやL字型になっていたが、次第に右折するしかない場所に出てきた。ここから先は北側に向かって道を伸びているようだ。



 (一体エレキッドはどこにいるんだ………!!)

 「見て、ユウキ!!あそこにいるのってエレキッドじゃない!?」



 しばらくしてボクたちは今まで遭遇してきた種族とは明らかに違うポケモンの姿を目にした。容姿からして間違いない。エレキッドだ。自然と駆け足で近づいていく。



 「すみません!救助隊“メモリーズ”です!さ、早く脱出しましょう!」

 「ありがとう!!助かったよ!!」

 「どういたしまして♪」



 ボクたちは天井に向けてバッジを掲げる。すると温かな光がエレキッドを包み、そしてその場から姿を消した。“ペリッパーれんらくじょ”に向けてワープしたハズ。バッジが光を放たなくなったのもそのためだろう。



 「よし、これでまずはひとつ依頼を達成したぞ。あそこには階段もある。先に進もう」

 「うん!!」



 ほっと一安心も束の間、ボクたちはすぐに6階への階段を駆け上った。




 「あっ、またバッジが反応しているね!」

 「よ~し!頑張らなくちゃ!」



 ダンジョン内の造りが岩石から鋼に変わって来たことや山頂が近づいて光が差し込んできているのか、周りの雰囲気が薄暗い感じから、光沢なんかでやや眩しく変わってきた。この6階にはマイナンが助けを待っている。モチベーションが高いとはいえ、ボクたちの体力もだいぶ厳しくなってるのは事実。



 階段のあるこの部屋からは西側、東側、南側に道が伸びている。ボクたちはまず南側に向かって見ることにした。道は直後にL字型になっていたが、すぐに小さな部屋に突入した。しかしその先は行き止まり。お金が86ポケ落ちていた以外に収穫は無く、ボクたちは来た道を戻ることに。



   グゥゥ……………。

 (ヤバい、お腹が減ってきた………)



 ここで懸念材料が表に出てきてしまった。ダンジョン内を歩き続けてバトルの怪我を自然治癒した代償により、体力が削られて空腹を感じるようになったのだ。小さく鳴っただけなのでチカには聞こえてないだろうけど、お腹も悲鳴を上げている。



 (参ったなぁ………。確か道具箱にリンゴは入ってなかったはずだ…………)



 依頼をたくさん引き受けたのは良かったけれど、その分だけ長丁場な救助活動という想定をして準備しなかったことを今さら悔やんでしまう。



 「ユウキ、大丈夫?なんだか歩くスピードが落ちた感じがするよ?」

 「え?…………ごめん」



 悟られないようにしたつもりだが、体は至って正直だ。確かに狭い通路内ではボクが進まないことには救助活動も滞ってしまう。何とかしなくては。



 「あれ?ここも行き止まりだ………」

 「うーん、こんなに部屋があるとマイナンも見つけるのが大変だね」



 次は東側の道を進んだボクたち。だが、すぐに別の部屋に繋がっており、さらに東側に進むか南側に進む道があったのである。ということでボクたちは南側に進んだのだが、その先にすぐ見えた部屋ももぬけの殻状態という有り様。 



 省エネをしたかったボクには酷く辛く感じた。それでも戻るしかない。先ほどの部屋へ戻ってから更に東側に進んでみる。するとその先にはまた部屋が。お金が118ポケ落ちており、そこから南側に伸びる道があったので更に歩き続けた。するとまた別の部屋があったのである。



 「いたぞ、救助隊だ!これ以上先に進ませるな!!」

 『おー!!!』

 「くっ!!しつこいな!!」



 悪いときには悪いことが重なるものだ。技のパワーポイントもそろそろ底が見えてきたこのタイミングでバルキー、イシツブテ、そしてダンバルの三匹と出くわしてしまったのである。バトル的にはそんな苦労することはなかったけど、これでまた余計に体力を費やすことになったのである。もちろんチカも援護してくれてるけれど、いつまでこの状態が続くのか不安も感じた。






 「ユウキ?ねぇ、ユウキってば!」

 「えっ!?あ…………ゴメン」

 「もうっ!ふらついてるじゃん。お腹空いていたんでしょ?無茶しちゃダメだよ…………ねぇ…………」



 先ほどバトルをした部屋から、今度は西側に道が伸びていた。もちろんその先を迷わず進む。今度はかなり歩くことになったのだが、この間ボクの空腹は目が回るほどに悪化していた。そして足元がふらついていたようで、とうとうチカが補助しないと歩けない程になってしまったのである。すると彼女はまるで自分の子供を叱る母親みたいに、さっきのようなことをボクに言ってきたのだ。何となく寂しそうな表情をしていたのが印象的だったけど。



 「ひとまず“クラボのみ”でも食べて。この場所にまひ状態にさせるような技を覚えているポケモンっていないだろうから。お腹の足しにはならないと思うけど………」

 「ゴメン………」



 チカから受け取ったその木の実の味は辛かっただけで、空腹が満たされた感じにはならなかった。彼女に素直に助けを求めることが出来ず、申し訳ない気持ちになってしまう。



 「ユウキ。辛いときは辛いってちゃんと言わなきゃダメだよ…………。あなたに何かがあったら、私は一人ぼっちになっちゃうから。それが怖いんだ…………」

 「ゴメン…………」



 チカはふらつくボクの体を支えながら歩いてくれた。いや、支えてるというよりはしっかり寄り添って離れないって感じ。そしてふわふわの毛並みから温もりを感じた。凄く気持ちが癒されていく。と、同時になぜもっと彼女に甘えなかったのかという後悔が出てきたのだ。




 「ありがとう“メモリーズ”さん!おかげで助かったよ!」

 「どういたしまして♪ケガが無くて良かった良かったよ♪」



 しばらくして小さな部屋が出てきたわけだが、そこにマイナンはいた。早速ボクとチカはバッジを高く掲げる。すると温かい光がマイナンを包みこんで、この場所から無事にワープさせることに成功したのである。



 その部屋からは更に西側へと道が続いていた。今度は7階へ続く階段を見つけるべく、また道を歩き始まる。しばらくすると道は北側へとその方角を変えていった。それに従ってボクたちも歩く。それからさらに時間が経つと、部屋が出てきた。そこには階段が。



 「やった…………これで先に進める」

 「うん、あと少しできょうの救助活動も終わる。だから頑張っていこうね、ユウキ♪」

 「そうだね………キミの言う通りだ」



 ボクはチカの言葉に気持ちを入れ直す。何とか体力が続くようにと願いながら。



 「またバッジが光ったね」

 「うん、ここにはヒマナッツが待っている。何とか早めに見つけ出そう」

 「そうだね」



 チカがボクを後押ししてくれた。それだけでなく“モモンのみ”も食べさせてくれる。ここにはどく状態にするポケモンもいないだろうという判断だった。もちろんお腹を満たしてくれる訳ではなかったけれど、自分に尽力してくれることが何よりも嬉しかった。



 最初の部屋からは南側と東側に道が伸びていた。まずボクたちは南側に向かって歩き始める。するとすぐに小さな部屋を発見する。しかしそこは行き止まりになっていただけ。ヒマナッツがいないことを確認するとすぐに最初の部屋へ戻り、今度は逆方向の西側に向かって歩き出した。



 「あ、階段だ!!」

 「うん、だけど今すぐにこれを上ることは出来ないね。ヒマナッツを助けないと」

 「そうだね…………」

 「大丈夫?本当ならこのダンジョンにはグミも落ちていたはずなんだけどなぁ…………」



 相変わらずお腹が悲鳴をあげている。チカの言うように、確か以前この場所に来たときはグミも見かけた気もする。そのときは大した気にもしてなかったけど、今となっちゃ意地悪をされている感じがして不愉快だった。



 「仕方ないよ。倒れる前になんとかきょうの仕事をこなせば良いんだ」

 「ゴメンね、ユウキ。なんだか力になれなくて」



 しょんぼりするチカに声をかけるが、なんだか余計に元気を無くさせたような気がする。でも彼女を責めることは出来ない。むしろ懸命に努力している。なぜなら歩くのがやっとの状態でも自分の体を支えるために寄り添ってくれているのだから。そして少しでもお腹の足しになるようなアイテムが無いかと、これまで以上に辺りを伺ってくれたのだから。



 階段があった部屋の壁………つまり一番西側方面からは南側に向かって道が伸びていたので、ボクたちはその先に進んだ。



 「待て!!お前ら救助隊だな!?先に進ませないぞ!覚悟しろ!」

 「くっ…………そういう訳にはいかないんだ!“ひのこ”!!…………あれ?技が出ない!?」



 更に最悪な事態になってしまった。先ほどの道を進むうちにやがて左に曲がって東側へと方向転換したのだが、そのときにダンバルと出くわしてしまった。まあそこまでは今まで何度もあった出来事だったので、そんなに気にすることはなかったのだが、運悪く技を繰り出すエネルギー……………PPが底をついてしまったのである。ダンバルには効果的なほのおタイプ、“ひのこ”を出せなくなり、代わりに“ひっかく”で応戦しようとしたのだが、それもPP切れ。



 つまりボクは自らの力ではバトルが出来なくなってしまったのである。



 「馬鹿め!!“とっしん”!!」

 「ぐあっ!!」

 「ユウキ!!これを!」

 「これは………ありがとう!」



 その直後、ダンバルから攻撃を受けるボク。ただでさえ空腹で視界がふらつくのに、このダメージは堪える。一体どうしたら良いのか悩んでいたそのとき、チカが道具箱を開けてアイテムを手渡してくれたのである。それは“ばくれつのタネ”だった。



 「何をごちゃごちゃ言ってんだ?技の出せないヒトカゲなんか怖くもねぇ!」

 「それはどうかな?いっけぇ!!」

 「なっ!?」



 小さなタネをがぶりと噛るボク。次の瞬間、目の前で「ドガァァーーーン!!」という轟音と共に爆発が起きて、ダンバルに襲いかかった。自分の“ひのこ”にも匹敵する一撃に耐えることが出来なかったのか、苦痛の叫び声と共に相手はその場で倒れたのである!!



 しかも、わずかではあったけど空腹を満たしてくれる感覚もあった。恐らくチカはこのことも見越してタネを手渡してくれたのかもしれない。



 バトルを乗り越えたボクたちは更に東側へと進んだ。少しすると部屋を見つけたのだが、そこにヒマナッツの姿があった。



 「あなたたちは!?」

 「救助隊“メモリーズ”です!助けに来ましたよ!」

 「今、私たちが“ぺリッパーれんらくじょ”にワープさせますからね♪」

 「ありがとう!助かったよ♪」



 ここでもボクとチカが天井に向かってバッジを掲げる。すると優しくて温かい光がヒマナッツを包み込み、そしてこの場から姿を消させることが出来たのである。



 これで3つの依頼をクリアしたことになった。



 「よし、さっきの部屋まで戻ろう。早いところ8階に向かうんだ」

 「うん。ありがとう、チカ」



 力強くチカがボクを励ましてくれる。それが自分には頼もしかった。正直技を使えなくなってしまったことで、ボクの「チカが笑顔でいられるようにしっかり守る」って想いはガタガタになって悔しかったけど、苦しいときはちゃんと彼女に力を貸してもらおうって考えになれただけでも良かったような気がする。



 やってきた道を戻る途中に今度はイシツブテと出くわすことになったが、このときはチカが自分と場所を変わってバトルをしてくれた。ニガテなじめんタイプがあって得意のでんきタイプの技が使えないだけでなく、いわタイプのおかげで打撃系の技でもあまりダメージを与えられないことから、一筋縄ではいかなかった。それでも彼女は屈すること無く、懸命に努力をしてこのバトルを乗り越えたのである。



 「ありがとう、チカ」

 「ううん。気にしないで。私はあなたの“パートナー”だから頑張るんだよ」



 今まで何度もチカが口にしてきた言葉。たったそれだけの理由で頑張っているのかと思うと、何だか自分が恥ずかしい。果たして自分は彼女の頑張りに匹敵するようなことを果たしたことがあっただろうか。序盤は彼女を引っ張っても中盤から終盤にはいつも彼女に守られてばかり。バトルやダンジョン、アイテムの知識もからっきし。



 (こんなんで良いのか…………?やっぱり自分には“リーダー”になる資格なんてなかったんじゃないのか?)



 再び戻ってきた部屋に存在する階段を上りながら、ボクはまた不安や迷いを生んでしまうことになった。









 いよいよ8階にたどり着いた。このフロアにはニドラン♀が待っている。まず最初の部屋からは東側、西側、南側という三方向に道が伸びている。相談した結果、まずは西側に向かうことにする。いきなりL字型に道が変形していていたが、その先には部屋があった。



 「いた!救助隊だ!この先に進めさせないぞ!」

 「だからって引き返すなんてしないよ!“でんきショック”!!」

 「ぎゃあああああ!!」



 前方からやってきたココドラに、チカはすかさず攻撃をした。気持ちが入っているおかげか、威力もなかなかのものに感じる。そんなこともあってかココドラを一撃で倒したのである。



 その部屋では“モモンのみ”と“なげとばしだま”を見つけたが、ここでもチカは“モモンのみ”は使う見込みが無さそうだと言うことで、ボクに手渡してくれる。ギリギリの状態は変わらないが、少しだけ気持ちはラクになった。



 そこから更にボクたちは東側に進む。するとすぐにまた別の部屋が見えてきたが、特にそこは何もなく南側に道が続くだけだった。



 (早いところニドラン♀を見つけたいな。きっとチカだってかなり疲れを溜めているだろうし………)



 ボクと話しているときのチカは笑顔である。しかし、時折息を切らしているようなシーンもあるのが気がかりだった。もっともそんな風にさせたのは自分がせいだが。



 「いたぞ!アイツらどれだけ荒らせば気が済むんだ!」

 「やっちまえ!!」



 次の部屋では厄介なことになった。なぜなら現れたポケモンはイシツブテが2匹だったから。今のボクやチカには一番出くわしたくない種族だった。



 「くっ!!こんなところで諦めるもんか!“でんこうせっか”!!」

 「イテ!!」

 「やりやがったな!“いわおとし”!」

 「きゃああ!!」

 「チカ!!ちくしょう!!」



 部屋に入ったので縦並びだったフォーメーションは橫並びになっており、数字上では1匹対1匹という状態。しかし繰り出す技に一撃で倒せるほどのパワーが無ければ、別の相手から攻撃を受けるリスクもあった。最悪なことに“いわおとし”を覚えているイシツブテもいたようで、チカはかなりのダメージを負ってしまったのである。



 「この野郎!よくもチカのことを!!」

 「なんだぁ!?何しやがる!!」

 「うわぁ!!」



 ボクは感情任せにイシツブテに突っ込んでいく!だってこんなことになったのも自分がしっかりしてなかったせいなんだから!!不甲斐なくて悔しくてたまらなかった!だけどすぐに弾き飛ばされてしまい、ボクは地面に叩きつけられることになる。



 「ユウキ!?うぅぅ………どうして?私たちは困っているポケモンたちを助けたくて頑張ってるだけなのに………」

 「あぁ!?何を綺麗事言ってんだ?お前ら救助隊が増えたせいで、俺らだって困ってんだよ。勝手に落ちているアイテムを奪ってみたり、ポケモンを助けるためだって力ずくで色んな奴を傷つけてみたり。そういうことに後ろめたさが無いってのに、みんな腹立ってんだよ!」

 「いやああああっっ!!!うぅ………」

 「!!」


 チカは再び“いわおとし”のダメージを受けた。おかげで見るに耐えないほど体がボロボロ。予断を許さない状況になってしまったのである。絶対に彼女を守る………その想いはいとも簡単に崩落したのであった。



 (ちくしょう………何とかしなくちゃ!)

 「うわっ!!何しやがる!」



 ボクはチカの道具箱から“ゴローンのいし”を雑に手当たり次第に握り、イシツブテに向かって投げつけた!!確かこのアイテムはどんなポケモンにもそれなりのダメージを与えられたはず。PPが尽きた状態の今の自分には最適なような気がした。石がぶつかる度にビックリした様子のイシツブテ。そのダメージが段々蓄積してきたのか、最終的にはその場に倒れたのである。



 「チカ!?大丈夫!?しっかりして!」

 「ユウキ………」

 「ほら、“オレンのみ”!しっぽの炎で炙って柔らかくしてあるから…………!!」

 「あ、ありがとう…………」



 ボクは相手が戦闘不能になったことを確認すると、一目散にチカのところへ向かった!声をかけて加工した“オレンのみ”を食べさせる。その次の瞬間、眩しい光に包まれるチカ。それが収まるとすっかり彼女は元気を取り戻したのである。



 「痛みが消えた!ありがとう、本当にユウキって優しいね♪」

 「えっ?いや、それほどでも無いよ………/////」



 元通り笑顔に戻ったチカの言葉に、ボクは思わず恥ずかしくなった。しかしまだ油断は出来ない。もう一匹イシツブテが残っているのだから。



 「この野郎!調子に乗りやがって!!」

 「きた!!“ぶっとびだま”!!」

 「なっ!?うわあああああ!」



 背後を振り返ったときには、イシツブテが殺気に満ちた様子で“たいあたり”をしてきたところだった。とっさに道具箱から取り出した“ぶっとびだま”を天井に向かって高く掲げるボク!!



 次の瞬間、その“ぶっとびだま”が眩しく輝きを放ったと思うと、まるで衝撃波に巻き込まれたようにイシツブテが壁の方へと吹っ飛ばされたのである!!



    ドカッッ!!

 「ぐぇっ!!ううう…………」



 壁にぶつかった反動も相当だっただろう。呻き声こそあげたものの、それからまた攻撃をしてくることは二度となかった。



 「もう大丈夫だよね」

 「うん…………」



 ボクはチカを庇うような形で、一旦周りの安全を確認する。いくら“オレンのみ”を食べて体力を回復できたとは言え、心の疲れまでは癒すことは出来ない。それを証明するかのように、彼女は疲れきった表情で返事をした。



 「あと少しだよ。頑張ろう」

 「そうだね。ニドラン♀を早く助けなきゃ………だよね」

 「うん。それにここまで来れたのも、チカが一生懸命頑張ってくれたからだよ」

 「そんなことない。ユウキがそばにいてくれたからだよ」



 ボクはチカを励ます。正直自分も弱音が出てきそうだった。けれど彼女の頑張りが無かったら、もっと大変な救助活動だったに違いない。だからこそ、今回も彼女と一緒に任務を達成したい自分がいた。恐らくこないだまでなら、そうやって周りの支えに気付く余裕も無かったことだろう。改めてチカの存在が自分にとってどれほど大切なものかと感じさせられた。




 それからボクたちは一旦通路まで戻った。そこから今度はまた東側へと歩いていく。程なくして次の部屋へ突入する。するとそこにはニドラン♀が困り果てた様子でウロウロさまよっていたのである。



 「チカ」

 「うん」



 お互いに顔を見合せて小さくうなずく。それからニドラン♀へと近づいた。声をかけるとビックリした様子を見せたが、特に傷付いている感じでもなく、すぐにホッとした安堵の表示を浮かべる。



 「チーム“メモリーズ”さん、ありがとうございました!」

 『どういたしまして!!』



 すかさずボクとチカはスカーフに付いているバッジを高く掲げる!!温かい光がニドラン♀を照らしたかと思うと、段々その姿が薄れて消えていったのであった。無事に脱出させることが出来たようである。



 「これできょうの救助活動は完了だね!」

 「うん、早く地上に戻ろ♪みんなが待っているから!」

 「そうだね。それじゃ…………」

 「えい♪」



 再びボクはチカの頭上、チカはボクの頭上に来るようにバッジを高く掲げる。すると今度は自分たちが温かい光に包まれた。何となく空中に浮いてる気がする不思議な感覚。しかし、それよりも今は何とか救助活動を終えたことの安心感が勝っていた。



 その直後、“メモリーズ”は“ハガネやま”より脱出したのである………。





    


 無事に地上に戻ってきた。どうやら“ぺリッパーれんらくじょ”の掲示板前のようだ。救助したポケモンたちが待ってましたと言わんばかりに、次々に感謝の気持ちを口にする。



 「助けてくれてありがとう!お礼に“ゴローンのいし”10コ渡すね!」

 「ありがとう!」

 「大切に使わせてもらうね♪」



 まずはエレキッドだ。まだ幼いこともあって、さすがに大人のポケモンのように高価なアイテムは預けてもらえないのだろう。それでも本来的には報酬目的で始めた救助隊じゃないので、感謝の気持ちを伝えてもらえるのは嬉しい。それに受け取ったこの先の冒険で、きっと役に立つはずだ。



 「マイナンを助けてくれてありがとうございました!これはお礼の100ポケ、それから“ふたかつのタネ”です!」

 「え!?“ふっかつのタネ”!?そんなアイテムくれるの!?ありがとう!」



 続いてプラスルから手渡されたタネに、チカは目を真ん丸にして喜んだ!彼女いわく“ふっかつのタネ”は道具箱に入れとくと、ダンジョンで倒れても一度だけ出口に戻されずに済むのだと言う。まだまだ未熟な自分たちにはこの上無いほど心強いアイテムになりそうだ。大切に使わないといけない。



 「友達を助けてくれてありがとう!100ポケお礼として渡します!」

 「迷惑かけてすみませんでした。“ゴローンのいし”を10コしか渡せませんが……………」

 「いえいえ!みんな無事だったから良かったよ!!」

 「みんな、気を付けて帰ってくださいね♪」



 最後にヒマナッツとニドラン♀からもお礼の品々を受け取り、みんなを見送った。その後連絡所の受付で“ふっかつメール”を四通提出し、“きゅうじょポイント”を20ポイントを受け取った。このとき受付のペリッパーが目が飛び出すほどビックリしたことをよく覚えてる。



 「一度に四つの依頼をこなすノーマルランクなんて、今までほとんど見たことないだよ!!」

 「本当に良く頑張っただよ!!」



 ここまで称賛を受けるなんて想像もしてなかったので、ボクもチカも嬉しいってより、どう反応すれば良いかわからず、ひとまずペコリと頭を下げてから退出したのであった。



 場所は変わって“メモリーズ”基地前。きょうもまた日は傾き、辺りは夕焼け空に変化している。そんな眩しい光に照らされて、チカがニッコリと笑顔を見せてくれた。



 「きょうもありがとう♪まさかあんなにペリッパーもビックリするなんて予想外だったよ」

 「うん。だけどなかなかランクアップって難しいね。もっと頑張っていかないとダメみたい」

 「まあね………」

 「あ、ごめん」



 迂闊だった。せっかくチカは明るく振る舞ってくれたのに、ボクはそれを受け止めなかったのである。途端にションボリとするチカに慌てて声をかけたけど、何だか気まずかった。



 「まあ、とりあえず帰って休もうね」

 「そうだね」

 「それじゃまた明日♪」



 チカが飛びっきりの笑顔を見せてくれた。やっぱり彼女の笑顔は最高の癒し。毎日感じることだけど、これからもそんな姿を見られるように、しっかりと彼女を守っていきたい。



 「それじゃボクも寝よっか。また寂しく感じる前に………」



 ボクはチカの姿が完全に見えなくなるまで見送ると、ポツリと呟いて基地の中へ入っていった。



        ……………メモリー49へ続く。