16Days:「それでも信じたくて~しめったいわば#8~」の巻 | 天然100%!今日もがんばるオレンジブログ!

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 “オレソのみ”って木の実まであるんだ。紛らわしいな。本当に不思議のダンジョンって何があるかわからないね。ココロに教わったことを忘れずに次から気をつけなきゃ。それと心配だなあ。ソラがココロと仲良く力を合わせてくれることを願うよ………。



 相変わらずソラは不機嫌なままだった。それまでぼくと手を繋いで探検活動をしていたときは、本当に足取り軽く楽しそうでニコニコと笑顔が印象的だった。
 ………でも今は違う。あれだけ自分の後ろにいると安心するって言っておきながら、ぼくが視線を合わせようとするとココロの後ろに隠れてしまうし、その表情は面白く無さそうにムスッとしている。彼女のひとつのシンボル、長い耳だって右耳こそはピンと真っ直ぐ伸びているけれど、左耳は地面と平行になって折れているのがよくわかった。


 (はぁ~…………参ったもんだなぁ、こりゃ。女の子って何であんなすぐに不安そうで感情的になるんだろうな…………。良くわからないや)


 ぼくは前を向き直すが、溜息をつきながら思わず頭をかいてしまった。正直なんだかイライラしてくる。まだソラと出逢って2日目だけど、なんだか疲れてきた。勝手に自分でソラのことを好きになったくせにね。やっぱりほのおタイプだから、簡単に感情がヒートアップするのだろうか。昨日のラストらへんとかさっきに怒りをぶちまけた件とかも含めて。それならそれで話は済むけど、さっきも不安を感じたようにそんな簡単な問題じゃないような気がする。

 
 ………まあ、とにかくこのあとソラと上手くやっていけるのか心配になってきたのは事実だった。


 (………いいや。別になんでもかんでも上手くいくはずも無いだろうし。ソラには悪いけど、今は仕事をやり遂げることだけ考えよう)


 そうだ。ソラのことばかり気にしている場合でもない。早いところこの“しめったいわば”の最深部分、地下7階へ続く最後の階段を見つけたいところである。


 「へぇ~!!それでススムさんとソラさんは、プクリンのギルドで修業を始めたばかりだったんですね!?」
 「ハハハ。ま、まあね…………」


 一方でココロとの関係は良好だった。不意に彼女から「どうしてススムさんとソラさんは一緒に探検活動を始めようとしたんですか?」って質問が来たもんだから、ぼくとしてもそれに答えないわけにはいかなかった。もちろん余計な混乱を招かないようにするため、自分が「記憶喪失な元人間」ってことはココロには黙っていた。


 「でも凄いですね!ススムさんもソラさんも別に知り合いでもなんでもなくて、たまたま“ゆうぐれのかいがん”で出逢ったなんて………ロマンチックじゃないですか!ソラさんのその宝物が奪われてしまったのは残念ですけど、お互い知らないポケモン同士で力を合わせてダンジョンに飛び込むなんて…………」
 「いや~そうでもないよ。ぼくはダンジョンのこと全然知らなかったし。ソラが支えてくれたおかげだよ!」


 ぼくはココロに褒められてついつい照れてしまう。でも仕方ないさ。だってココロはぼくの隣を一緒に歩きながら、両手を合わせてキラキラ目を輝かせて羨望の眼差しで見つめてくるのだから。端から観たらソラよりも“パートナー”みたいな様子に思える。


 こうなってしまったらソラは黙っていられない…………何となくそんな嫌な予感がぼくの頭を過ったが、見事にそれは的中する。


 ……………それは、ココロがさりげなく自分の体に寄り添おうとしたときだった。


 「あーーーー!!ススムに何してるの!!」
 『!!?』


 思わずぼくもココロも耳を塞ぎたくなるような、ソラの叫び声。直後に四つ足になってダッシュしてきた。そのあとぼくの前に立ち塞がって、ココロにこのように言うのであった。


 「あんまりススムに近付かないで!“パートナー”は私なんだから!!」






 ………もうっ!!何なのこの子!何が目的なの!?いきなり一緒に行動したいって言ってみたり、馴れ馴れしくススムのそばに近寄ろうとしたり………完全に私のこと無視してるじゃない!


 「まあまあ。そこまでムキになるなよ、ソラ」
 「なんで!?あなたが自分は“リーダー”だからって言うなら、私は“パートナー”だよ!?あなたをサポートする役目があるんだから、ココロちゃんよりそばにいなきゃおかしいじゃない!それとも何!?自分だけ意見して、私の意見は尊重してくれないの!?」
 「そんなことないよ………」


 私はとうとう我慢できなくなってしまいました。始めはココロちゃんに対してのもので、あまりの変わりように彼女は目を大きく見開き、体を震わせながら小さく「ごめんなさい」って言うばかり。そこからススムが入ってきたので、彼に対しても不満の感情をぶつけたのです。


 ぼくは感情を爆発させるソラに何故か呆れていた。いや、彼女の言うことはもっともなのは確かである。しかしいつものようなちょっと恐々とした控えめな雰囲気というか、落ち着いた様子が全然見られないことが気になってしょうがない。とにかく聞く耳を持とうとしない彼女をめるのに、ぼくは必死だった。


 「どうせ私の存在より、もっと落ち着いていて知識もあるココロちゃんの方が良いんでしょ!?」
 「そんなこと無いって!さっきソラだって自分で言ってただろう!?探検隊に憧れてひとりで過ごしてきたって。今ここにいるココロだって、キミと同じようにひとりで頑張ってきたんだ!同じ想いを抱えてるんだよ!?だから放って置けなくなったんだよ!少しでもそんな寂しさが和らぐようにね!それの何が悪いんだよ!!」
 「!!?」


 ぼくの発言にソラは怒ることを止める。さっきのココロのように大きく目を見開いた。両耳も驚きを表現するように、ピンとまっすぐ立っていた。


 「ソラだって分からず屋じゃないか!キミだったらぼくの考え、もっともっと理解してくれるって信じていたのに!何だよ!?そんなにココロがぼくのそばを歩いてみたり、ぼくらの“仲間”になることがそんなに気にくわないか!?」
 「……………」


 ぼくの怒号にソラは反論してこなかった。そればかりか俯いて立ち尽くすのみ。…………それみろ。彼女が何も考えてない証拠だ。なんたってワガママなんだ。何だか彼女への想いが薄れていく感じがするよ。こんなこと思いたくないけどさ…………。


 「行こう、ココロ」
 「え、でも………ソラさんはどうするんですか!?」
 「……………」


 慌てた様子でココロが話しかけてきたが、ぼくはそれを無視するような形で黙って先を進む。当然のことながら彼女は追いかけてくる。しかしソラはしばらくの間立ち尽くしたままだった。


 (ちくしょう!なんたってぼくはこんな素直じゃないんだ!!)


 その後、ココロから何度か話しかけられたみたいだが、ぼくは全然その事に気づいていなかった。ソラに対して厳しい対応をしてしまった自分に腹が立って仕方ないのである。何もあそこまで強く言う必要はなかった。きちんと説明するだけで良かった。
 彼女はただぼくと過ごす時間が楽しくて、その時間がココロの加入によって無くなることがイヤなだけだったのだ。確かに二人っきりの時間は減っちゃうだろうけど、それは“リーダー”である自分の力次第でどうにでもなる問題だろう。それに…………


 「きゃああああああああああああ!!」
 「!!!?」


 そのとき、突然自分の耳に飛び込んできたココロの悲鳴。慌ててぼくは彼女の方へ振り返る。するとそこにいたのは“すずポケモン”と呼ばれる種族…………リーシャンだった。







 「体が………動かない………!!」
 「ココロ!!大丈夫か!?」


 ココロは声を出すのも苦しそうだった。なんとか大事な骨を手離さずに済んでるようだが………一体なぜ?何があったって言うんだ?


 「キミがボクの邪魔をするからいけないんだよ?大人しくそのヒトカゲがやられるのを見ていれば良かったのに………ね♪そのまま“かなしばり”で苦しめばいいさ!」
 「!?」
 「そ…………それは………できません!」


 リーシャンの話でだいたい状況は読めた。恐らく彼の襲撃からぼくのことを、ココロが守ろうとしたのだろう。その結果彼女がぼくの身代わりのような形で、このような状態に陥ってしまった………ということなのだろう。


 (またか…………!また自分の不注意で周りに迷惑をかけてしまうのか、ぼくは!!)


 ぼくは気持ちが一気に熱くなってしまう。似たような事が地下3階でも起きていただけに、その教訓を活かしきれなかった自分に腹立たしさを覚えた。あのときはソラが“しばられのタネ”で身動きを失っていたわけだが、今回もそれと大した代わりはない。みるみるうちにしっぽの炎が激しさを増していった。それだけ怒りの感情がぼくを支配しつつあることを意味していた。


 「ぼくの邪魔をするな!!“ひのこ”!」
 「ムダだよ♪“ねんりき”!!」
 「な…………!!」


 気がついた時にはリーシャンへと技を放っていた。何の策もない。単なる感情任せ。しかしそんな攻撃が通用する訳もなく、放った“ひのこ”はリーシャンの“ねんりき”によってその方向を変えられてしまう。…………と、ここまではある程度自分にも想定できた。問題はそこからで、その方向を変えられた“ひのこ”が向かった先には…………ココロがいたのである!!


 「や、やめろおおおおおお!!」


 ぼくは叫んだ。もちろんそんな声が届くはずもないが…………こうはしてられない!早くココロをカバーしないと!!…………そのように考えて急いで彼女のもとへと急ぐ…………しかし!!


 「そうはさせないよ~♪“フラッシュ”!!」
 「きゃっ!!」
 「うわっ!!!眩しい!!」


 次の瞬間、部屋全体が眩しい光によって包まれた。その影響でぼくも目を開けていられなくなり、両腕で顔を覆うことになった。その結果としてココロを助けるべく急いでいた足も止められてしまう。


 「きゃあああああああ!!」
 「ココロ!?」


 そのあとの出来事は火を見るより明らかだった。結局リーシャンの“ねんりき”によって方向を変えられた“ひのこ”は、身動き出来ないココロを容赦なく襲った。衝撃と高熱に苦痛の悲鳴をあげた彼女の姿に、ぼくは悔しさを材料にしてますます怒りの感情に支配された。


 「この野郎!!!ふざけんじゃねぇぇ!!」
 「!!!?」


 そのときの自分の表情は一体どんなものだったのだろうか。自分もこの2日間、水溜まりなどで映る姿を確認したことがあるが“ヒトカゲ”は、どちらかと言うと無邪気で時折愛らしい笑顔を見せるようなポケモンって感じがする。決して威圧的ではなく、幼い雰囲気を感じさせるような………。


 「そんなにオレのことが憎いか!?“仲間”なんてくだらねぇって言ったオレのことが!?他人なんて信用しないで………独り生きてきたオレがそんな面白いか、この野郎!!!」
 「うわあああああ!!!何を言ってるんだ!?誰か………誰か助けてくれ!!!」
 「へ、逃がすかよ!!てめえもくたばりやがれ!!“アイアンテール”!!」


 しかし今は違うだろう。殺気じみていて………とてもじゃないけど話しかけることはおろか、そばに近寄ることさえ拒絶して、自分に従わない相手は全員焼き尽くさないと気が済まない……………そんな残酷非道な雰囲気が全面に現れていた。


 でもまあ、炎は周りを暖める優しさと周りを破壊して傷つける残酷さ…………そんな矛盾するような両面を持つもの。それを扱っているポケモンなのだから、自然とその矛盾するような両面を兼ね備えていても不思議ではないのだが。






 (二人とも大丈夫なのかな…………?遠くから悲鳴や叫び声が聞こえたけど………)


 その頃私は息を切らせながら、ススムたちの声のした方へと急いでいました。青いスカーフにつけてもらった“スペシャルリボン”を揺らしながら。


 …………正直な話、さっきのススムに怒鳴り付けられたことを受けて、私は“トゥモロー” を脱退しようかと考えていました。だってススムと二人っきりで探検活動が出来ないと、何も意味が無いと思ったから。


 ……………でも、やっぱりそんな勇気は私にはどうしても持てませんでした。昨日の夕方、あの海岸で彼と出逢うまでの時間を振り返ったとき、どうしてもそんな気持ちにはなれなかったのです。


 (…………確かにココロちゃんは私より探検活動のことも詳しいし、バトルの経験だって豊富だと思う。でも………それで自分の好きな男の子を諦めたくない。私は………私はススムにとっての一番の理解者になりたい!頼りなくて臆病で上手く体を動かせないときもあるけど、私は…………ススムに一番寄り添える…………“パートナー”になりたい!)


 そうして私はススムの「好きだ」という言葉を信じて、二人のもとへ戻ろうと考えたのです。しかし離ればなれになってから相当な時間が経っていたので、彼が今どこにいるかはわかりません。レーザーの役目をしている自分のハート型しっぽも無反応。それでもとにかくこのダンジョンを進もうと考えました。それには理由がありました。


 (もしススムたちが地下7階に進んでいるのなら、このバッジの“集合システム”が作動して私も自動的にワープになるはず。だからまだこの地下6階にはいるはず………。諦めないで探そう!)


 そうやって自分の気持ちを落ち着かせた………そのときに、ススムとココロちゃんの悲鳴と何か爆発音が私の耳に飛び込んで来たのでした。


 (ココロちゃん!?…………ススム!?)


 ……………それからどれくらいの時間が経ったのか正直わかりませんでした。しかし、自分がようやくススムやココロちゃんと合流したそのときには、既にバトルが終了していたようです。……………でもなんだろう。この殺伐とした重苦しく嫌な雰囲気は。


 「ススムさん!!もうあたしなら大丈夫ですから!!そこまで相手を傷つけないで!!」


 ……………え?


 「………………」


 …………ウソでしょ…………?


 …………ススムがココロちゃんを抱き締めてる…………?



          ……………17Daysに続く。