人中短縮術+口角挙上術 術後6ヵ月 | 医師の技術教育指導担当 Dr村松@湘南美容クリニック

医師の技術教育指導担当 Dr村松@湘南美容クリニック

湘南美容クリニック新宿本院主任医長兼技術指導医Dr.村松が日々の症例や美容外科に関することを分かりやすく解説します。

本日ご紹介する症例の患者様は40歳代の女性、鼻の下が長い状態を改善したい、とのご希望でした。

 

鼻の下を短くする手術として鼻の下で皮膚を切除する人中短縮術(リップリフト)がありますが、この手術を昔から執刀してきた私としては、この数年でこの手術は随分と多くの人に知られるようになってしまったなぁと感じています。

 

主な要因はSNSの普及にあるわけですが、以前はこの手術は非常にマイナーな手術であり、「様々な整形手術をやり尽くした人が最後に辿り着く手術」という印象でした。

 

この手術がメジャーになることに関して、私は正直あまり良い傾向ではないと考えています。

 

何故ならこの手術には人中が短くなるという大きなメリットがあるものの、デメリットの面があまりに大きいからです。

 

8年も前のブログ記事になりますが人中短縮術におけるデメリットの詳細を記載しておりますのでご参考になさってください。

 

もう一つ、この傾向を宜しくないと考える理由としては、この手術がメジャーになるにつれて多くのクリニック、ドクターがこの手術を施行するようになってきたことです。

 

なかには縫合技術が微妙であったり、適応の判断をしっかり行っていなかったり、デメリットの説明をしっかりとされていなかったり、術後にトラブルとなっているケースがかなり増えた印象です。

 

縫合技術に関しては最低でも形成外科専門医のなかでも相当上位レベル、或いはそれに準じた縫合技術を有した医師を選ぶべきですし、カウンセリングで大したデメリットも説明されない場合はそのクリニックでの施術は考え直した方がよいでしょう。

 

 

なお、話が少し反れますが「人中」の読み方に関して。

 

最近はカウンセリングに訪れる患者様のほとんどが人中のことを「じんちゅう」と仰っている気がします。

 

国語辞典的には「じんちゅう」「にんちゅう」、どちらでも良いようですが、形成外科医は「にんちゅう」と呼ぶことが多いと思います。

これは学会の発行する「形成外科用語集」ですが、こちらには「にんちゅう」のみ記載されています。

 

人中のことを「じんちゅう」というドクターは、もしかしたら形成外科のベースがない美容外科医かもしれません(完全に憶測なので全く責任は持てませんが…)。

 

 

さて、症例に戻りますが人中短縮術後の問題点として口角が下がって見えるようになる、という問題があります。

 

ですので術前の段階で口角がやや下がっているケースでは、口角挙上術が必要になることも多くなります。

 

今回の患者様も口角挙上術を同日に行いました。

 

術前→術後6ヵ月です。

 

人中が短くなり、口角も下がることなく寧ろ若干挙上されました。

 

術後の詳細経過です。

 

術後1週抜糸直後

まだ口も閉じ切らない状態です。

 

術後1ヵ月

傷が非常に目立つ時期であり、傷の拘縮により人中稜および人中陥凹がくっきりしてしまっています。

 

術後3ヵ月

術後1ヵ月と比べると傷も拘縮もかなり緩和してきました。

 

術後6ヵ月

傷、拘縮ともにかなり落ち着きました。今後更に目立たなくなります。

 

なお、口角挙上術にも幾つかの術式がありますが、人中短縮術を併用する場合においては、人中短縮術に伴い口角が下がって見える状態を相殺するのみならず更に挙上させるため、挙上効果が最も高いPerkins法(私が現在行っているのはPerkinsの方法に口角下制筋の部分離断を組み合わせた変法)を推奨しています。

 

口角の外側に裂けたように見える傷が出来ますが、術後6~12ヵ月でかなり目立たなくなります。

 

ご参考になりましたら幸いです。