滋賀県議会2月定例会での、木沢成人議員の一般質問をレポートします。
『起立性調節障害(OD)対策について』
木沢議員
起立性調節障害が起こる原因、そのメカニズムについて伺う。
県答弁
起立性調節障害は、自立神経の働きの不調が原因とされ、交感神経と副交感神経の働きのバランスが崩れることで起立時に身体や脳への血流が低下し、立ちくらみやめまいなど様々な身体症状が出現するとされている。
木沢議員
具体的な好発年齢について伺う。
県答弁
一般的に思春期に発症しやすく、小学校高学年から中学生、高校生に多いとされいる。また、日本小児心身医学会によると、男性1 に対し女性は1.5~2と女性に多いと言われている。
木沢議員
起立性調節障害の診断はどのようになされるのかについて伺う。
県答弁
日本小児心身医学会のガイドラインによると、診察や血液や心電図検査などと、鉄欠乏性貧血や心疾患などの他の病気がないかを調べる。その可能性がない場合は、立ちくらみなどの身体症状11項目中3つ以上があてはまれば、安静時と起立時の血圧と心拍数を測定する新起立試験を午前中に実施する。起立直後に血圧低下が起こり、回復に時間がかかるタイプ、血圧低下はなく心拍数が異常に増加するタイプなど4つがあり、いずれかに当てはまれば診断が確定する。また、併存疾患として、自閉症スペクトラムの併存が35%にのぼるとの報告もされている。
木沢議員
本県における起立性調節障害の診療体制の現状について伺う。
県答弁
起立性調節障害は、県の小児保健医療センター他、県内の小児科医療機関においても診療が実施されている。
木沢議員
県立小児保健医療センターにおける起立性調節障害の診療状況について伺う。
県答弁
小児保健医療センターでは、患者の主訴に応じた診療科や専門外来、例えば、神経内科、頭痛外来、こころの診療科などにおいて、それぞれの専門医が診察を行うとともに、必要に応じ心理カウンセリングを実施している。
木沢議員
起立性調節障害の治療の具体について伺う。
県答弁
小児心身医学会のガイドラインに基づき、症状に応じて、薬物を使わない非薬物療法、薬物療法、心理療法を組み合わせている。日常生活に支障のない軽症例では、規則正しい生活や水分を多めにとることなど、生活指導を中心とした治療で2~3か月で改善。一方、中等症以上は薬物治療も必要で、不登校を伴う重症例では、日常生活に支障が少なくなる状態まで回復するには少なくとも2~3年かかっている。
木沢議員
起立性調節障害に関する受診の近年の動向について伺う。
県答弁
起性調節障害と診断された年間患者数は平成30 年度から令和4年度の5年間の平均が57.4 人で、その前の平成25 年度から平成29 年度まで5年間の平均の46.4 人に比べ約2割増加している。
木沢議員
起立性調節障害に関し、小児保健医療センターの県内小児科医等との連携状況について伺う。
県答弁
他の医療機関からの紹介患者の受入れは行っているが、この疾患に限った県内小児科医等とのネットワーク構築や勉強会の開催などの特段の連携は行っていない。
木沢議員
県下の長期病欠扱いになっている児童生徒における起立性調節障害を原因とする欠席者の実数について。
県答弁
令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査では、起立性調節障害を原因としている欠席者数の項目がないため把握はできない。また、文部科学省の「令和4年度病気療養児等に関する実態調査」では、令和4年度に病気により年間延べ30日以上の欠席をした児童生徒のうち、主傷病が起立性調節障害と報告があったものは、小学生で1名、中学生で5名、高校生では0名。ただ、現場の状況等を聞いていると、各学校において起立性調節障害と診断された児童生徒数は一定数いるものと考えている。
木沢議員
不登校児童生徒の中に、潜在的な起立性調節障害患者がいると思うが、所見を伺う。
県答弁
不登校の要因とされている「無気力、不安」とは、「無気力でなんとなく登校しない、登校の意志はあるが、漠然とした不安を覚え登校しない」という状態であると捉えている。一方で、不登校の初期段階における状況と起立性調節障害の症状が似ていることから、起立性調節障害を疑われる可能性があることは十分に考えれると認識している。
木沢議員
起立性調節障害児童生徒への、現状、どのような支援を行っているのか。
県答弁
これまで、各学校では起立性調節障害と診断された児童生徒に対し、本人や保護者の思いに寄り添いつつ、その症状や指導上で気を付けるべき点などを日本学校保健会作成の手引きなどを活用して、学校全体で共通理解を行っている。その上で、学習面の不安がある場合には、体調が安定しやすい午後の時間に別室で学習の補充を行うなど、スクールカウンセラーなどの専門家と連携しながら、本人の体調に応じた支援を行っている。
木沢議員
当該児童生徒への配慮の状況はいかがか
県答弁
当該児童生徒は、朝の始業時間に登校が困難であるため、登校時間を遅らせたり、登校後も急に調子が悪くなることもあるため、別室や保健室で休養しながら授業に参加することを認めるなど、児童生徒それぞれの状況に応じた配慮をしている。
木沢議員
起立性調節障害に関し、教職員にどのような研修等を実施しているのか。
県答弁
これまでより、学校保健関係者に対しまして起立性調節障害の児童生徒を正しく理解するため、研修等において専門医から症状や治療について説明を聞く機会や、事例を通した演習などを行っており、適切な配慮につながるよう努めているところでございます。また、生徒指導、教育相談担当者に対しましては、特に不登校児童生徒の中に頭痛や朝起きられない等の症状がある場合、スクールカウンセラーや学校医等に相談して、適切にアセスメントをするよう様々な機会を通じて周知をしているところでございます。
木沢議員
保護者に対する情報提供の状況はいかがか
県答弁
出席状況や本人の学校での様子から起立性調節障害の可能性が疑われる場合、家庭での状況を確認し専門医への受診に向け、情報提供を行っている。また、遅刻が多い、という事象だけをみて、生活習慣の課題がある、怠けていると判断することなく、治療の対象となる場合があることを家族の皆様に理解いただけるようその周知を図っている。今後も学校からの文書や資料等を用いて広く周知に努めていく。
木沢議員
対象者のクラスメート等、児童生徒への病気理解促進の取組の現状はいかがか
県答弁
起立性調節障害だけでなく、アレルギー疾患等、様々な病気への配慮は、本人の意向等を踏まえた対応が必要で、事前に保護者、本人の思いを確認した上で、周囲の児童生徒への説明や理解を求めるように対応している。具体的には、起立性調節障害は本人の意思とは関係のない体調の問題であること、登校できない時間の授業内容は放課後やオンラインで学習していることなどを発達段階に応じて丁寧にクラスメイトに説明する等、対象の児童生徒が不安なく学校生活が送れるよう取り組んでいる。
木沢議員
学校現場と医療機関との連携状況は
県答弁
学校では、該当児童生徒の保護者を通じて医療機関との連携を図っており、主治医からの指示や配慮が必要な事項等を必要に応じて保護者を通じて学校も共有することで、適切な支援や配慮に取り組んでいる。
木沢議員
岡山県等先進事例に学び、対応ガイドラインを策定すべきではないか。
県答弁
現在、小児保健医療センターのHPに起立性調節障害の説明、また問い合わせ先が記載されており、相談のあった場合にはこちらを情報提供している。今後、学校や保護者が正しい情報を知り対応できるよう、県教育委員会のHPや保護者向け教育情報誌「教育しが」での周知を検討している。先進県の事例を参考とし、不登校対策を一層進める中で、この潜在的に起立性調節障害のある子どもへの配慮を含め、適切な対応につながるように努めたい。
木沢議員
対応ガイドラインは作成しないのか。
県答弁
岡山県の資料にあるチェックシートの利活用を含め、今後も学校や保護者の皆様に正しい情報を伝え、学校や家庭で適切な対応ができるよう、現場の先生方や医療関係の皆様の御意見も伺いながら、次年度できるだけ早く試案の取組ができるように検討をしたい。
木沢議員
起立性調節障害対策を「しがの学びと居場所の保障プラン」の柱の一つとして、科学的アプローチに基づき不登校対策を進めてほしいと考えるが所見を伺う。
県答弁
不登校の背景は多様。「しがの学びと居場所の保障プラン」は現在策定中で、この案では特定の態様を取り上げていませんが、起立性調節障害を含め、医療的または福祉的なアプローチが有効なものがあることを踏まえ、子どもの目線に立ち、分野横断的に「チーム」で支援する視点を掲げている。次年度設置予定の医療の専門家を入れた協議会の中で、医療的観点を大切にした施策を検討していきたい。今後も、子どもたち一人ひとりに寄り添った、誰一人取り残されない滋賀の実現に取り組んでまいりたい。
木沢議員
プラン案に医療の2文字を明確に位置付ることをお願いしたいが、再度所見を伺う。
県答弁
大事な視点だと思う。今回学びと居場所の保障プランを策定する際にも、議員と同じような視点からご指摘をいただいたところ。当然医療的な観点から寄り添い、また支援をしていくこと治療をしていくことも、人によって時によって必要なこともあると思います。そういった視点を盛り込みながら、対応をしていきたい。