悪夢は夜の十時に始まった
息子が戻ってこない。
ゴミを出しに、ほんの5分の距離の収集場所まで行ったきり、
高校生の息子が戻ってこない。
「なぜ?どうして?」
理解を超えた出来事に、
母親の佐知子は動転し、手がかりを探ろうとした。
翌朝の朝刊には、自らの不倫相手の死が報道されていた。
日常の中に潜み続けた闇が、
ふとした瞬間にバーストアウトする様子を克明に綴り、
ホラーともサスペンスともミステリーともつかぬ
分類不能なジャンルに仕上げた作品。
闇の描き方は深さ・見せ方とも好きだが、
ちょっとしつこいし、ちょっと現実離れしすぎ。
乱暴に言うと、「風呂敷を広げすぎ」。
ラストシーンは賛否分かれるだろうが、
個人的には好きになれない。
この作品に失望した人には、
桐野夏生の「柔らかな頬」を薦めたい。
申し訳ないが、次元の違いを感じると思う。