カシオペアの丘で(上)(下) | きょうのいっさつ~oblique books~

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知るを知るとなし、知らざるを知らずとなす。

これ知なり。


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許してくれ、ずっと言いたかった言葉
30年越しの想いが今、届こうとしている



「肺の腫瘍は悪性」

医師から人生の終わりを告知された日、
東京の俊介は、待合室のTVで故郷の北海道を見た。

それも、自らが生まれ育った小さな、小さな町の景色を。
30年近くも帰っていない町の遊園地は、
殺害された小学生女児の想い出の景色として放映された。

その放送をきっかけに、
30年来の幼なじみ4人が、顔を合わせることになる。

皆が心に傷を背負っていた。
お互いに言えない秘密を抱えていた。

人生の最期に向かう主人公・俊介の周りに、
贖罪を願う人々が集まり、その関わりの中で、
それぞれがこれからの人生を模索し続けるストーリー。

登場人物がかなり多いにも関わらず、
全員を綺麗に描き分ける著者の筆力はまさに職人芸。

そして、何と言っても主人公の子供・哲生の心情描写は、
この作品のハイライトとも言えるぐらいに見事。
自らの父親に「死」と告げられたときの光景など、
信じられないぐらいに胸に迫る。

登場人物のキャスティングは少しご都合主義的かとも思うが、
相当に泣かされた身としてはどうこう言えない。