ジョン・ウィックが頭なら、ニックスは金玉!最高のヒロイン映画『ガンズ・アキンボ』レビュー | SayGo's 映画レビュー

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勝手に映画鑑賞して
ダラダラとレビューします。

おつかれさまです。
SayGoです。

本日は犯罪者を殺し合わせ、その様子を配信する闇サイト『スキズム』に
クソリプで憂さ晴らしをするネット弁慶男が強制参加させられ、
最強の殺し屋から命を狙われることになるアクション映画
『ガンズ・アキンボ』をレビューします。

公開日:2021年2月26日
上映時間:98分

監督/脚本:ジェイソン・レイ・ハウデン(「デビルズ・メタル」)
主演:ダニエル・ラドクリフ/サマラ・ウィーヴィング


上司からのパワハラ、唐突な失恋の憂さ晴らしのため
ネットでの誹謗中傷を日課にしていたゲームプログラマー マイルズ。
 

彼はある日、犯罪者が殺し合う様子を配信する闇サイト『スキズム』を見つけ、
いつものように運営者、視聴者を煽るコメントを投下した。
しかし、それが運営者の逆鱗に触れ、彼の両手は銃に固定され
強制的に殺し合いゲームへの参加を余儀なくされる。
生き残るすべは襲い来る最強の殺し屋 ニックスを24時間以内に殺すことだった-



今回は久々に長めのレビューを書きたいと思います!


■乗ったら98分止まらない!コメディとアクションの乱れ撃ち!

ヘビメタバンドを結成する学生が本物の悪魔と戦うという
おバカな物語と爽快なスプラッター描写で話題をさらった
『デビルズ・メタル』(2015)のジェイソン・レイ・ハウデン監督が
『スイス・アーミー・マン』(2017)を筆頭に昨今
見事なまでに「ハリー・ポッター」シリーズの呪縛を振り払った
ダニエル・ラドクリフを主演に迎えた爽快極まりないアクション映画。


人物や舞台となる闇サイト『スキズム』の設定説明を
抽象描写とモノローグ、そしてアクションで手際よく済ませ、
可愛らしさの面影もないパンイチのラドクリフが両手に銃を固定され、
殺し屋から逃げ惑い始める<トップスピードな幕開け>

『ジョン・ウィック』シリーズや『アトミック・ブロンド』(2017)からの
系譜を感じる<極彩色なルックとスピード感溢れるアクション>
両手の自由を奪われた弱腰男の珍道中が隙間なく詰め込まれた98分は
明解なストーリーもあって<最高のB級アクション映画>たる存在感を放っているように思えました。

そして、主人公マイルズを<ターミネーターの如く>追い回す
サマラ・ウィーヴィング演じる最強の殺し屋 ニックスの
<ジャンキー且つキュート>なキャラクター性。
個人的にはマーゴット・ロビー演じるハーレイ・クインを凌駕する
ヒロインの誕生
でした。
フィギュア化を強く強く願わずにはいられません(笑)

配信サイトという設定が醸し出す<ゲーム性>
見事なまでに取り入れた演出、音響効果も絶品であれば、
それにこの上なく相性の良いテクノ色強い楽曲チョイスまで楽しい。
様式美溢れるVFX表現が物語にも作風にもマッチした爽快な一作でした。
まず、おススメです。



■キーボードを打てても銃は撃てないという皮肉!

<目まぐるしいカットの量と外連の効いたカーアクション>で観客の心を掴みながら、
<それを見て興奮する視聴者>という構造で登場する闇サイト『スキズム』の説明を
早々に済ませるオープニング。


上司からのパワハラに分かれた元カノへの未練をモノローグで整理しながら、
主人公 マイルズの<ネット弁慶>ぷりを的確に描き切る人物説明。
この作品の<スタートは本当にキレッキレな手際の良さ>を見せます。

一方的にサンドバックを打ち込むが如く誹謗中傷を書き込んでいたマイルズが
IPアドレスの特定という一発の反撃に戦意喪失する様子で
マイルズのネット弁慶たるキャラクター性を確立する演出も上手いが、
面白いのは<キーボードは撃てても、銃は撃てない>という
今のネット社会を批評も皮肉りもする部分。

ネット上に生きがいを見出していたマイルズは早々にそれを剥奪され、
<現実でもやってみやがれ>と両手を銃に固定される。
しかし、マイルズは突きつけられた現実を受け入れることが出来ず逃げることしかできない。

上司や元カノとの物語が組み込まれていることからもわかるように
この作品は<マイルズが現実と向き合う>物語ともなっており、
そんな彼がクライマックスで
<逃げることをやめる>または<意思を持って引き金を引く>部分に
成長や想い変化が描かれているため、そこに注目して欲しい。

殺し合いを通して現実と向き合う物語に
個人的に深作欣二監督作『バトルロワイヤル』(2000)なんかも思い出してしまったが、
ネット弁慶が銃を持たされるという設定がコメディだけでなく
社会批評や主人公の成長となっている部分に惹かれてもしまいました。



■目まぐるしいカメラワークと外連に富んだアクション演出

本作の映像でもっとも印象を残すのが
映像酔いしそうなまでに目まぐるしいカメラワークです。

スキズムの運営陣に両手を手術されたマイルズが目を覚ますシーンの
天地を逆転させる回転と落ち着きないモーションで映し出す演出。

銃が両手に固定されている様を目の当たりにした瞬間に
カメラワーク落ち着くという演出もあって、
正に<酔いが覚めた><現実と認識すた>瞬間を見事に切り取って見せている

そして、そんな目まぐるしいカメラワークが強烈に打ち出されるのが
アクションシーンです。
特に序盤にあるニックスの銃撃戦は作中で最も印象的なカメラワークを見せる。


カットをカメラワークの動きを持ってしてシームレスに繋いでいく
昨今でいうところの<B-ROLL>演出を多用で演出されるこの銃撃シーンは
カット数の多さやアクションそのもののスピード感も相まって
ライド感の凄まじいシーンとなっている。
このシーンは以下のYouTubeでの鑑賞できるため是非!



それだけでなく、本作のアクションは外連もたっぷり。
マイクロUZIやおそらくだがデザートイーグルの両手撃ち
極彩色が印象深いルックとVFX感を隠さない外連ある映像描写
残弾数を画面にデカデカ表記までする本作には

<リアリティよりもゲーム性を強めた様式美的な映像>に高揚感を覚えました。

ゲーム感と言えば音響効果使いも超クール!
マイルズは吸引機が、ニックスはコカインが
<回復アイテム>や<パワーアップアイテム>となっており、
それをバトル中に補給するという演出もさることながら、
その瞬間に<耳馴染みのある効果音>をつける遊び心が楽しく、
ゲームに親しみのある方であれば強制的にテンションを上げられることでしょう。

監督の前作である『デビルズ・メタル』(2015)のような
過剰なスプラッター描写はないものの、
ユーモアと爽快感に富んだアクションシーンは本作の見どころ。


■下品さがクールにも見えてくるコメディセンス。珍道中も面白い

両手を銃で固定されたパンイチ+むさ苦しい男の珍道中。
もちろん、面白いです。


無理のある言い訳で何とか場を凌ごうとする強行突破感や
助けを警察に求めれば、容姿から銃を向けられ、
上手く逃げたと思ったら悪党の取引現場に遭遇。いきなり窮地に!
なんていうドタバタ珍道中がアクションとアクションの間を繋ぎ、
その滑稽さが緩急となり、エンターテインメント性も高めていきます。

そして、やはり最高なのがマイルズとニックスの掛け合い。
<闘いの最中、敵に銃の扱い方を教わる>というフレッシュな抜け感をはじめ、
後半の<ある一発>を巡った口論にしろ、
<あるパーツの喪失>というちょっとしたグロ展開を
下ネタで笑いに変えながら、クレイジー且つ乙女チックなニックスの一面まで露見させる
ユーモアは日本人が見ても笑えます。

おそらくここに関しては日本語訳のセンスも光っており、
それによって面白可笑しい名言が散りばめられていたように思えます。

ひとつひとつはギャグでありながら、
マイルズとニックスの距離感描写にもなっていくという
クールさも内包する本作のコメディパートは最高でした。



■最高にクレイジーでキュートなヒロイン ニックス誕生

本作で登場する殺し屋 ニックスのファンになる方はかなり多いことでしょう。

<もっとセクシーにするか、ハーレイ・クイン風しろ>というプロデューサーの反対を押し切って
監督が作り上げたというニックスの容姿はとにかくカッコいい。

ボロボロになるまで着崩されたTシャツにジャケット。
コカイン中毒者という設定に見合った細身のシルエット。
加えて、<ジャンキーでありながらキュートさ>もしっかり印象付ける
サマラ・ウィーヴィングの顔立ちに表情。

個人的にはドストレート、ド直球の美女でした。

ロケットランチャーにアサルトライフルでミリタリー感を演出しながら、
カラフルにペイントされた印象的なグロックや
レゴブロックで作られたカイザーナックルと言ったアイテムで
それこそ<ハーレイ・クインのようなポップなヒロイン性>をも両立してしまう
武器によるキャラクター演出はもはや完璧!

<ジョン・ウィックが頭なら、私は金玉>
と金玉をトドメにシューティングしていくスタイルもたまらん。
そこに当てられる<金玉スプラッター>という和訳も素晴らしい!

このヒロインの誕生を劇場で見ずしてどうする映画です。



■総評
物語に対するツッコミどころやバトルの爽快感、カタルシスを
少し減退させてしまったように思えた結末など
不満がないわけではないが、
98分にこれぞB級アクションたるエンターテインメントを詰め込んだ本作は
ジャンル映画としてかなりの傑作かと思います。
是非、おススメです。