薬物と性が入り乱れ、死が躍り出すパーティー映画『みんな死んだ』レビュー | SayGo's 映画レビュー

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勝手に映画鑑賞して
ダラダラとレビューします。

おつかれさまです。
SayGoです。

本日は若者による年越しパーティーが

惨事に陥っていく

『みんな死んだ』をレビューします。

配信:NETFLIX
監督:ヤン・ベルツル


大晦日に年越しの瞬間を祝うパーティーのため
一つ屋根の下に集った大勢の若者たちの出会いと
酒、ドラッグ、SEXに満ちたひと時。
しかし、ある事件を機に歯車が狂いだし血の海と化していく様を
多分な人間関係パズルを展開しながら描いていくダーク・コメディとなっています。





<至る所が壊され、至る所に若者の死体>
事件が起こった現場を2人の刑事が訪れ、
様々な疑問を抱くオープニングからはじまる本作は、
映画『ハングオーバー』シリーズのような
<なぜこのような状況に至ったのか>
を時系列を戻して辿っていく
<答え合わせ構造>を持った作品となっています。

シリアスに映し出される現場に反して
噛み合わなさが抜け感を醸す2人の刑事のやり取りは
この作品がコメディ作品であることを匂わせながら、
このオープニングで起きる<証拠の誤廃棄>
クライマックスで盛り上がりを作る伏線演出など、
掴みとしてはGOOD!な滑り出しを見せる。


多数の主要キャラクターが登場し、
そのカップル関係を説明しながら相関図を一気に畳みかける序盤こそ
情報量が多く、着いていけるか心配になったものの、
恐ろしいほどの<物語整理力>に混乱を抱くことは皆無でした。

キャラが立っていることのほか、
主要キャラクターのほとんどを<カップル>に設定し、
<恋愛観><価値観>で対比させ仕切っていくという人物設定の上手さと、

"このカップルの次はこのカップル"とストーリーを行き来しながらも
特に序盤は<時間や空間をシビアに用いる同時進行展開性を極力抑え>
テンポは良くも、それそれの物語をしっかり認識させる的確な人物説明によって
後半に待ち受ける<惨事の連鎖>に必要な土台をしっかり作ってくれたと思います。


人物間の<秘めたる不満>が露見すると同時に
酒にドラッグ、SEXの匂いが漂い始める中盤。

畳みかけるような編集のテンポで
この上なく盛り上げた瞬間に<事件>が起こります。
高揚感とともに背徳感を内包する<浮気関係>を用いて
テンション高鳴りと不吉な予感を最高潮に持って行った後に
一瞬で冷まさせるという演出の妙も光る部分です。

ここから<負の連鎖>が起こり出し、
刻々と冒頭で見せたられた<惨事>へのカウントダウンがはじまります。

多少なりとも<スロースターター>な作品となっているわけですが、
露悪的でありながらユーモアに富んだ手数の多いエログロギャグで畳みかける後半は
好きな方にはたまらないコメディに発展していきます。


ドラッグによる<神との婚前交渉を巡った対話劇>
<豊胸>をゴア描写をもってフレッシュに見せる暴力演出、
そして、オープニングの伏線が回収される<ピザ屋の想い>
露悪でありユーモアに溢れた本作の白眉たるギャグに思えました。


そして、<死が躍る年明け>たるクライマックス。
目に見えておぞましい惨事を
こんなにもポップに軽快に描いた作品は珍しいかと思います。
それぞれの物語風呂敷を畳もうとする急ピッチな忙しなさが
またこのクライマックスを盛り上げていたように思えます。


大きく舵を切り、SFさながらのオチも個人的にはいいアクセントでした。
強いて好みを言うのであれば、
<あの絵にまた赤が塗られる>方が音やセリフと合致し、
明確なエンターテインメントとして締めくくられたのかなと思います。

男女の欲望が一夜のパーティーで絡み合い、
いつしか血みどろな年越し祝いに発展していくダーク・コメディ。
おススメです!