狂気!堀貴秀の独創的なイメージを浴びる99分のストップモーションアニメ映画「JUNK HEAD」 | SayGo's 映画レビュー

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勝手に映画鑑賞して
ダラダラとレビューします。

お久しぶりです。
お疲れ様です。
SayGoです。

本日は、
ひとりの男の独創性と狂気が詰め込まれた
SFストップモーションアニメ

「JUNK HEAD」
をレビューしようと思います。


公開日:2021年3月26日

上映時間:99分
監督・原作・脚本・撮影・編集・音楽・ect/堀貴秀

-あらすじ-
環境汚染により地上に住めなくなった人類は地下開発を進めるため、
人口生命体 マリガンを創造。
しかし、人類に反旗を翻したマリガンによって地下の大半は占領されてしまう。
ウイルスとの生存競争の末、永遠の命を得るとともに生殖能力を失った人類は
新種ウイルスによって危機的な状況に陥ってしまう。
人類は生殖機能を宿した可能性があるマリガンの調査のため
ある一人の男を送り出すのだったが...



人類生存のため地下世界の調査に向かった男が
人口生命体 マリガンの協力を得ながらサバイブしていく
SFストップモーションアニメーション
堀貴秀が監督のみならず、原案、脚本、撮影、編集、音楽などを
ほぼ一人で手掛け、制作に7年の歳月を費やした本作は、
今現在大きな話題と興奮を呼び、早くもカルト映画として存在感を放ちだしている。


各所で話題沸騰のストップモーションアニメである本作ですが、
<製作者の狂気>が画面の隅々に宿っている一作となっていました。

堀貴秀という男がほぼひとりで作り上げたと言って過言ではない本作は
まさにインディーズ映画であるわけだが、
<エッジの効いたアート性ではなく娯楽性が強く打ち出された>この作品には
「一人で作ったにしては...」などと言った下駄が一切必要ない
ただただ、最高の映画でした。

生活費を賄うために地下調査員に応募した主人公のパートンが
地下に至る過程でマリガンに撃墜され、頭のみ=ジャンクヘッド状態に。
マリガンによって幾多の体に乗り換えながら、
また協力を得ながら地下をサバイブしていくというのが大まかな物語なのだが、
まず驚くべくは<セットがもたらす説得力>

緻密に作りこまれた<スチームパンク>感溢れるメカメカしい造形が
立体感あるセットに所狭しと配置されているセットの数々は
その圧倒的な情報量をもってして本作のSF世界を見事に演出していく。
隅々までリアリティが行き届いているかと思えば、
<有毒ガスを浄化する装置として巨大マリガンの呼吸が用いられている>などの
独創性が取り入れられているもの魅力
となっており、
堀貴秀さんの<イメージを99分間浴びるだけで楽しくて仕方がなかった。

また驚くべくは<広大な地下世界を演出する計算力>だ。
本作は広大な地下世界を映像化するために
簡単に言えば<同じセットを使いまわす>ことで世界観の拡張を図っていくわけだが、
その演出力・計算力には頭が下がる。

<迷宮さながらの廊下>というシチュエーションは見事という一言。
その無機質さはSF感を醸しながら
景色が変わらないことこそが迷宮たる演出ともなっており
地下世界の広大さを見事に語っていく。
また計算高いのが、登場するクリーチャーによる<景色の差別化>
現れるクリーチャーの違いや、クリーチャーの縄張り描写をもってして
同じセットでも異なる階層に見事に仕立て上げる。

思い返せば、そこまでシチュエーションが多いわけではないのに
<広大な地下世界をサバイブするSF>として見終えられるこの作品は
そんな堀貴秀という男の計算力の高さにあったと思います。


この作品最大の魅力はキャラクターだ。
リアリティ追及のために<目を失くした>という部分にも
堀貴秀の計算力の高さとその精度を感じざるを得ないが、
目がなくとも、<喜怒哀楽の表情豊かな>キャラクターには驚かされるばかり。


堀貴秀さんは「技術の未熟さからからシリアスではなくコメディに寄せた」
というだけあって、随所でキャラクターたちがユーモアを振りまく
そのユーモアとストップモーションが内包するあどけなさの愛称はとてもよく、
最初こそ不気味なキャラクター達も終盤では愛しくなること必須だ。
だからこそ、クライマックスは熱くなり、うるっともさせられる。

そして、デルトロが目をハートにしている姿が浮かぶクリーチャーたち
その<独創的かつ奇怪な造形や彼らのグロテスクな生態>
好きな人にはたまらないほど魅力的な存在だ。

その怖さがサバイブ劇に緊張感を与えるのはもちろんのこと、
彼らの放つ食う食われるという<弱肉強食世界>
総じてキャラクターたちの<生>を強調していくような作りにもなっているように思えた。

フード理論の先にあるう〇こ描写もたまりませんでした!

<可愛らしくてユーモラスなのにグロテスクさと背中合わせ>
キャラクターから放たれるそんな世界感がこの作品の最大の魅力ではないでしょうか。

長くなったので最後にしますが、
この作品は終始、堀貴秀の狂気に満ち溢れた作品だ。
それを再度認識されるのが<エンドロール>
自分はこのエンドロールでうるっと来てしまいました。

<制作過程>が本編と切り離せない作品はそうはない。
近年なら、本作と「DAU.ナターシャ」くらいではないでしょうか(笑)

また、パンフレットは購入できれば絶対に買うべきです。
こんなにも面白く読みいれるパンフレッドは久々でした。
堀貴秀という男の狂気とそのクリエイター魂を
読めば読むほど知れるものなのでぜひとも。

何はともあれ、今劇場で見ないと損する映画にして、
見たら応援したくなって仕方ない快作。
何らかの形で貢献して残り2作を完成にもっていってもらいたい!