本日紹介する映画は、
『銀魂 THE FINAL』
公開日:2020年1月8日上映時間:104
-あらすじ-
地球滅亡が迫る中、坂田銀時、高杉晋助、桂小太郎は
師である吉田松陽の人格を宿す虚との戦いを余儀なくされていた。
志村新八、神楽、真撰組が加勢するものの、
虚はついに復活を遂げてしまう。
空知英秋の大人気コミックを原作にしたアニメの劇場版第3弾。
原作のラストをベースに構築された本作は、
アニメならではの勢いと大団円でシリーズを完結させる。
◎スタッフ、キャスト、ファンに愛されたシリーズ、完結◎
全77巻と長きに渡るコミックが最初から最後までアニメ化されたという事実。
深夜帯に追いやられ、半ば中途半端に終わりを迎えたTVシリーズに
寂しい気持ちを抱いていたファンにとってこの完結作は最高の一作としか言えない。
漫画のみならずアニメ版のファンが非常に多いこのシリーズにおいては尚更でしょう。
そんなファン待望の完結編は再構成がなされてこそいるものの、
掟破りなギャグまで掟破りな演出で忠実に...
いや、アニメだからこそ漫画以上に再現しにかかる。
この笑いながら「大丈夫かよ!?」と心配してしまうヒヤヒヤ感が
「銀魂」が愛される一つの要因かと。
SPYAIRにDOESという最高の楽曲布陣で担がれる
坂田、高杉、桂と師である松太陽のハードボイルドな物語に
銀時、新八、神楽の絆ドラマも完結作に相応しい大団円を見せる。
「アベンジャーズ/エンドゲーム」よろしく、
この作品もスタッフ、キャスト、ファンの愛が呼応する一作となっていた。
◎主題歌まで!掟破りにもほどがある!オープニングの衝撃◎
「銀魂」シリーズにおける起承転結の「結」の途中から幕を開ける本作は
原作同様、ある超人気コミックのパロディで幕を開けるわけですが...
その主題歌までそのまま使用するという開幕早々、掟破りを仕掛けてくる。
(今回はしっかり許諾を得ているという事なのでDVD化できるとかw)
これまでのパロディ楽曲ではなく、本家本元を使用するこのオープニングから
スタッフの銀魂への愛、完結という神輿を担ぐ気満々が伺えることでしょう。
また凄いのが、その人気作パロディによるあらすじパートの”力”入れよう。
作画、演出に至るまであの人気作を忠実にパロディしていく本作は
“目で見る楽しさ”がとにかく強い、強すぎる。
作中でも「全然入ってこない!」と突っ込まれているわけだが、
銀魂シリーズ内でも複雑なこの最終章のあらすじは
整理されながら丁寧に説明されているわけだが全く入ってきません(笑)
(週刊からGIGAに移行した自虐などを省略しわかりやすくしている)
TVシリーズの第4期は必修科目といった作品でしょう。
◎入りは乗りづらくも、クライマックスでは感涙のハードボイルド◎
前記したように、本作はTVシリーズと地繋ぎ、
銀魂の起承転結の”結”内のさらに”結”から語られ出す物語となっている。
ある意味で親切、ある意味で不親切なあらすじはあれど、
複数の勢力が入り組むこの最終章は最低限、原作かアニメを予習している必要があるでしょう。
加えてこの構成は一本の映画作品として非常に物足りないものにしていた印象です。
自分は全アニメを鑑賞しており、なんならこの作品に向けて予習鑑賞していたわけですが、
クライマックスのターミナル戦から始める本作に、
スタート直後は気持ちが着いていけなかった。
スクリーンではついに訪れる銀時、高杉、桂の共闘という
エモく激しいアクションが繰り広げられるものの、
映画として助走不足な本作に、テンションのズレを余儀なくされてしまった。
そのズレも時間と共に合致し始めたわけですが、
これは正直、映画として残念なポイントでした。
しかし、知っているとは言え、
物語が描かれるにつれ、進むにつれ、アニメ版ファンとして歓びを覚えました。
原作を読んだときは
複数の人物行動が同時進行していくこの物語を行ったり来たりする構成に
個人的にジョージ・ルーカス監督の「スター・ウォーズ」さながら
ごちゃつき感を覚えてしまったわけですが、
坂田銀時、高杉晋助、桂小太郎は師である吉田松陽に主軸を置く構成や
単調さやシリアスな雰囲気を絶妙なタイミングにギャグで破壊するバランスなど
この劇場版はうまく整理されているように思えました。
そんな構成だからこそ最後の戦いとその結末は感傷しました。
ここに関しては映画というより空知英秋さんの手腕ですが、
本当にハードボイルドの構築がうまいなと心底思います。
また、アニメにすることで特に”目に移ろいや揺らぎ”があるため
あの別れのシーンはとにかく素晴らしいものだったと思います。
明らかに作画のクオリティが
TVから映画に上がるラストバトルも必見です。
◎銀時から銀さんへ。楽曲が彩る感動場面◎
うまいのが、銀さんと新八、神楽の物語のバランス。
それこそ”銀時から銀さん”に変わるシーンですらうるっと来たわけですが、
作中で涙必須なのは吉田松陽とのある掛け合いでしょう。
このシーンは原作でも感動的でしたが、
坂田銀時、高杉晋助、桂小太郎の物語を主軸に絞った構成があるからこそ、
その物語が終わった後に訪れるこの万事屋のシーンは
「夜叉であった銀時が人となる」感動的な物語が明確になっていたと思います。
松陽と銀時が映し鏡、継承と言った関係により見えたような気がします。
そして、漫画との最大の違いは楽曲です。
銀魂と言えば”SPYAIRとDOES”と言う方は多いと思いますが、
この黄金布陣が物語をひとつにまとめあげ、
また、抗う事の出来ない疾走感をもたらしたのは確実です。
銀さんとして新八、神楽の元に向かうクライマックスは
SPYAIRによる主題歌「轍~Wadachi~」によって高い跳躍を見せます。
こんなのファンなら泣かずにはいられないでしょう。
◎エンドロール後も着席。最後のロゴまで遊び心!◎
シリアスでウェットな結末に行き着くわけですが、
もちろんそこでは終わらせません。
大団円から団欒。映画からTVに戻ってきたような。
そんな陽気な雰囲気のもとキャラクターが集い、
そして、貶し、放置され、殴り、殴られ合います。
3人の門出を馴染みある楽曲で祝うラストカットも言うことがありません。
最高のラストだ...
そこでも終わらせてくれないのが銀魂!
エンドロール後に相変わらずのことを仕掛けてきます。
本編を台無しにするギャグの面白さもさることながら、
本編のラストパートで提示されたギャグを回収し、
「最悪のラスト」で冷ややかに終わらせる銀魂らしさ。
これこそ、本当に最高なラストでした。
最後にワーナーブラザーズのロゴでひと遊びして
爪跡を残すところまで、もう言う事ありません。
◎総評◎
シリアスな物語をバラエティでウェットに寄せない本作。
「映画」に相応しい銀魂でありながら
「TV」でお馴染みの銀魂でもあり続けたこの完結編に
ファンとして歓びと寂しさを覚えました。
ファンなら絶対に必見の一作です。