本日紹介する映画は
『新感染半島 ファイナル・ステージ』
公開日2021年1月1日
上映時間:116分
-あらすじ-
パンデミックにより韓国が崩壊して4年後。
大切な人を見捨てたことを後悔しながら
香港に逃れていた元軍人のジョンソクは、
世界から孤立した半島から大金奪取の任務に就くのだった。
韓国発のパニックホラー『新感染 ファイナル・エクスプレス』の
4年後の世界を描いた続編。
監督は前作から引き続きヨン・サンホが続投している。」
◎◎単純明快!ストレートすぎるサバイバル娯楽作◎◎
新幹線という密室シチュエーションと
ゾンビ・パニックを掛け合わせた「新感染 ファイナル・エクスプレス」(2017)は
ゾンビ映画の王道展開でヒューマンドラマを展開させながらも、
そのフレッシュなシチュエーションが多くの人を惹きつけた。
そんなヒット作の続編は、前作から4年後が舞台となっており、
大金を奪取するため世界に見放された故郷に舞い戻る男を主人公に
サバイバル劇とヒューマンドラマを展開していきます。
前作のようなフレッシュさや緊迫感はないものの、
スケールを広げた世界観と様々な作品へのオマージュ、
単純明快な人物配置にストーリーは紛れもないカタルシスを放つ。
お正月映画にもってこいの一作だ。
◎◎ゾンビの存在は軽薄!?人間vs人間◎◎
前作は新幹線というシチュエーションで
逃げ場のない緊張感とノンストップな展開を演出しながら、
親子のヒューマンドラマを中心に
人が疑心暗鬼に陥る様や大切な人との別れなど
ゾンビ映画の王道要素をすべて詰め込んで見せたような最高の一作でした。
そんなザ・ゾンビ映画の続編となるわけですが、
本作はそのジャンル性がかなり抑えられた作品になっていた印象です。
大金奪取のため主人公チームが半島に降り立つ序盤こそ
前作同様にゾンビは恐ろしい雰囲気を醸しているわけだが、
"半島に棲む人"が登場した瞬間にゾンビは脅威ではなくなってしまう。
半島に棲む人間として、武装部隊と主人公と共闘する家族が登場するのだが、
彼らはゾンビの習性を熟知しており、見事にゾンビを飼い慣らす様子が描かれる。
半島においてはゾンビは脅威というより、"注意する"程度のものとなっているため
前作の一歩気が緩めば感染してしまうような緊迫感もほぼなく、
半島には生活ルーティーンが確立されているため、
ゾンビ映画にある人の疑心暗鬼が生むスリリングな展開も皆無に等しい。
本作はゾンビ映画というより異文化遭遇映画とも思えるもので、
大金のために"世界に見放された地=半島"に降り立った主人公が
そこに棲む人間の脅威にさらされていくというような構成だ。
"実はゾンビより人間が怖かった"ではなく、
最初から"人間が脅威"として語られると言えばわかりやすいかもしれない。
とは言え、中核を担う主人公には物語が用意されている。
"大切な人を守れるか"を描いた前作に対し、
本作は"大切な人を守れなかった"男の贖罪の物語となっている。
人の命を見捨てざるを得なかった過去に対する罪の意識が
あるギミックを通して現在と結びづけられる本作は
主人公が贖罪する機会を得て戦い始めるような構成となっている。
"誰も死なせない"という主人公の決意を
過去の自分と対比しながら描くクライマックスは確かなカタルシスを放っており、
同時に前作のラストとの対比にもなっているように思えた。
"おじいちゃん!ごめんさない"と思ってしまう
活かす展開も良かったです。
映像としては「ワールド・ウォーZ」以降のゾンビ映画であるものの、
ゾンビの存在は薄く、またジャンルの王道展開も軽薄な本作は
ゾンビ半島からの脱出権を巡った争奪戦映画。
◎◎マッドマックス感が楽しい娯楽作品◎◎
大金ではなく家族とともに脱出を図る主人公に
半島脱出のチャンスと知り、主人公に襲い掛かる武装部隊のソ大尉と
なんだかんだ乱入してくる武闘派 ファン軍曹。
切れ者ぽいのに全然脳みそが筋肉なファン軍曹が
最高なキャラクターとなっているわけですが、
そんな勢力がクライマックスではぶつかり合い、
ゾンビの習性を利用しながら戦っていく本作ですが、
韓国版マッドマックスと言ってもいい作品となっています。
荒くれものに追われながら荒廃した地から脱出するというシチュエーションも
「ニューヨーク1997」(1981)を彷彿としたりするわけですが、
クライマックスはまさに世界観が今に近いマッドマックス。
車列を組んだ改造車とのデスレースを
質より豪快さで見せつけてくるクライマックスは
一歩間違えればバカ映画の領域。
ゾンビの習性を利用して相手の進路を妨害していくマリオカート感や
画面を彩る"破壊描写"のために尻を叩かれるように走るゾンビたちの
見事な引かれっぷり、弾かれっぷり。
「ワールド・ウォーZ」(2013)のゾンビ壁のような
あり得なさがあれば最高でしたが、
絶妙にグラフィカルなCG感を残す映像の質感もあって
この大団円にはかなり興奮させられました。
◎◎総評◎◎
意外と書くことありませんでした。
単純明快なサバイバルサクションとしての娯楽性はあるものの、
ゾンビ映画としては少し要素が少なく残念映画な印象。
P.S
邦画であれば"おい!エモいのはわかるけど見てないで急かせよ!!"
とツッコミ入れそうなシーンで
ちゃんと"ちょっとそれは後にして下さい"と人が駆け寄ってくる演出にこそ
日本と韓国の映画の差があるように思えました。
あの人の姿があることで
(というより本作では図体がでかすぎる問題はさておき)
エモさは無くなれど、リアリティは格段に上がります!