ドラマ超雑レビュー『全裸監督』 | SayGo's 映画レビュー

SayGo's 映画レビュー

勝手に映画鑑賞して
ダラダラとレビューします。

『全裸監督』


英題 THE NAKED DIRECTOR
配信日 2019年8月8日

ーーーーあらすじーーーー
卓越したトークで優秀な売り上げ成績を納めていた
セールスマン 村西とおるは成人書籍 ビニ本と出会い、
アダルト業界にてその商才を発揮していく。
本から映像へと移行する時代の中で
様々な法を犯しながら業界を生き抜き、
後に彼は『アダルトビデオの帝王』と称される存在になっていく。

アダルト業界にて波乱な人生を送り、
アダルトビデオの帝王とまで称されることとなった
村西とおるの半生を虚実交えながら描くNetflixオリジナルドラマ。
主演の山田孝之をはじめ、豪華キャストがセクショナルな役どころに挑む。


★★全世界に衝撃を走らせるセンセーショナルなドラマ★★
既存大作作品の配信のみならず、
クリエイターファーストとも言えよう製作形態から
バリエーション豊かなオリジナル作品を産み出すNetflix。

これまでの日本発のNetflixオリジナル作品はいくつかあったが、
ほとんどが『アニメ』であり、実写作品に関してはインパクトの弱い印象だった。
そんな現状において本作『全裸監督』は世界を射程に入れた
日本発、日本初のNetflixオリジナル実写作品だと思う。

最近まで自分はアダルトビデオの監督をしていたわけだが、
多様なバリエーションもさることながら、
性描写に対する強い執着とこだわりが垣間見える
日本のアダルト作品は世界から一目置かれているコンテンツであり、
その量もクオリティーに関しても世界1といって過言ではないだろう。

そんな日本が世界に認められるアダルトコンテンツ業界初期を舞台に
その立役者であり、後に『アダルトビデオの帝王』と称されるまでとなった
村西とおる の半生を描く本作は、
世界でも少なからず注目される作品だろう。


★★ドラマ向き過ぎる村西とおるの半生!躊躇のない性描写★★
セールスマンであった村西とおるが紆余曲折の後
成人雑誌であるビニ本と出会い、
いつしか時代の流れと共にビデオ監督の道を歩みだす本作は
あまりに波乱で劇的な展開が1話ごとに繰り広げられるため
エンターテインメントとしてまず楽しめる作品だ。

同じ志を持つ仲間を集め、名声を掴んでいく
サクセスストーリーの高揚感はもちろんのこと、
仲間と共に法を犯し、警察を手玉に取っていく様や
業界のドンやヤクザと対等に渡り合っていく展開など、
集団ケイパー物語が緊迫感を持続していくストーリーは
サスペンスフルな雰囲気も醸し出す。

全く題材は異なるが、
まるで麻薬王やマフィアのボスの半生を描く作品とも似た
ドラマ性を有しているため、そういったジャンル作品が好きな方にはハマるだろう。

『作りたいものを作るためなら法は関係ない』
と言わんばかりのクリエイター精神を行動力を持ってして見せる
村西とおるの姿はブリーフ姿であっても格好が良い。
そんな彼と衝突しながらも身を託すように支え続ける仲間とのドラマも相まって
作品熱量も非常に高い。

また、どこかアマチュア性を覗かせ、ドタバタ感のある
序盤の撮影現場シーンは多少のコミカルさがあり笑えもするし、
シチュエーションそのものもその顛末も壮大なインフレを果たす
後半に一大事件の破天荒ぷりシリアスに演出されるからこそ笑える。

それこそ大きな出来事を坦々と、
ユーモアを交えながら流暢に語ってしまう村西とおるのトークを
そのまま映像化したような作品だ。

そんな本作は躊躇のない性描写に溢れている。
正直、アダルト作品さながらのセクショナルな演出に
見ることをやめてしまう人も多いことだろう。

しかし、この躊躇のない性描写こそこの作品の素晴らしいところだ。
アダルトビデオの帝王と称される村西とおるの半生を描く上で、
性描写を必要以上に隠しもすれば、それこそ彼の存在を否定するものだ。

そこをしっかり描くことで、彼の功績そのものを称える本作は
後にも考えを述べようと思うが意義深いものだと思う。

すべてが『疑似絡み』であったという初期の撮影形態や
『駅弁』の誕生秘話など、
アダルトビデオで監督をしていた自分には衝撃的だったが、
アダルト産業の変化を通して時代、景色の変化を見ることもできる部分は
その時代を生きた人にとってはノスタルジックであり、
知らない人にはやはりフレッシュでもあろう。

山田孝之の言うように電車では見てはいけない。
家で一人で楽しむことを推奨するドラマ作品だ。


★★今回も山田孝之はスゴい!村西とおるにしか見えない★★
最近までアダルトビデオの監督をしていた自分は、
様々な理由があって季節に関わらず『上裸』になって
ディレクションを行っていたわけだが、
時々、先輩に『村西とおるかよ!』とツッコまれていた。

村西とおるという存在は自分が物心つく前、親世代の人物であったため
知るよしもなく、興味すら持っていなかったわけだが、
このドラマの製作が発表されてから
彼の出演したTV番組をいくつかネット上で鑑賞したわけだが、
それもあって本作で彼を演じる山田孝之の演技に驚愕した!

容姿こそ完璧には似ていないのだが、村西とおるにしか見えなかったからだ。

もうとにかく喋り方の寄せ方が半端ない!
下品且つ丁寧な言葉遣い、流暢なトーク技術を
しっかり我が物としいるような山田孝之、半端ない。

そんな山田孝之と同等の存在感を放つのが
村西とおると共にアダルト業界を生きた
女優 黒木香を演じる森田望智。

これまた全然似ていないのだが、
喋り方、佇まいが黒木香を見事に体現していると思う。
作中にも登場するAV『SMぽいの好き』の冒頭のみ鑑賞したが、
憑依加減が半端ない。

もちろん黒木香をほぼ知らない自分だが、
自分の母親も『似てた』と言っていたのでやはりすごいのだろう。

他の豪華キャストの面々の好演も良い。
個人的にはいるだけでリアリティを底あげてしまう
ピエール瀧の役者力にまた感服させられた。


★★この作品が大々的に配信されたことの喜び★★
出来の良し悪しはひとまず置くとして
セクシャル極まりない本作が日本代表さながらNetflixで世界配信され、
国内で大々的にPRされていることに喜びを覚える。

というのも、日本はアダルト描写に対する偏見、恥意識に対し
個人的に大きな矛盾を感じていたからだ。

アダルト産業の巨大化という事実はさておき、、
『高校教師』や『失楽園』や『昼顔』などセクシャルTVドラマが
高視聴率を叩き出した事実からもわかるように
日本人の多くは性に対して強い興味を持っていると言えよう。
しかし、性描写が少しでも過激であれば今やタブーだと非難する。

一辺倒には断言できないが、
日本は世界で最も『性』に興味を持ちながら『性』恥じる国だと思う。

そんな現状において、恥とされるアダルト業界を舞台に
セクシャルな演出をなす本作の世界配信と
その大々的なPR宣伝は、

『アダルトも日本が誇るコンテンツのひとつ!』

と胸を張って言っているようで
それは自分が抱いていた『矛盾』を払拭してくれるようで嬉しい。


最近までアダルトビデオの監督をしていた自分は、
業界に入ったからこそ、そのクリーン化を目の当たりにしたからこそ
偏見がなくなったというのももちろんあるが、
『アダルト業界』を一括りにタブーとし、
そこに興味を持つこともそこで働く人も恥とする強い偏見意識に
風穴を開けようとしているように感じた。

もうなに言ってるか自分でもわかりませんが、
アダルト業界にも、アダルト描写にも日本は必要以上に偏見ありすぎ!
三大欲求のひとつでしょと。
なら寝るシーンも食事シーンもタブーよ(笑)

★★総評★★
傑作というまでではないが
サクセスストーリーとしても
ケイパーものとしても楽しめるドラマ作品。
虚実あるが、破天荒、波瀾万丈な村西とおるの半生は衝撃的だ。