映画超雑レビュー「いつのまにか、ここにいる Documentary of 乃木坂46」29点 | SayGo's 映画レビュー

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ダラダラとレビューします。

「いつのまにか、ここにいる Documentary of 乃木坂46」


公開日 2019年7月5日
上映時間 120分

ーーーーあらすじーーーー
2011年に結成されたアイドルグループ 乃木坂46。
日本レコード大賞に2年連続で選ばれるまでにグループは成長し、
メンバー一人一人も様々な場所で活躍するようになっていた。
そんなとき、初期からグループを支えてきた西野七瀬の卒業が決定する。

日本を代表するまでに成長したアイドルグループ 乃木坂46の
『悲しみの忘れ方 Documentary of 乃木坂46』から4年ぶりとなる
ドキュメンタリー作品。
2017~2019年までの活動が監督の視点で語られていく。


★★ドキュメンタリー映画として珠玉の前作★★
コンサートにも握手会にも出向いたことこそないが、
自分は白石麻衣がまだマヨラー星人を打ち出していた
グループ結成初期からの乃木坂46ファンだ。
家にはそれぞれの写真集もあるし、TV番組も毎週鑑賞している。

もちろんファン目線も存分にあるだろうが、
『悲しみの忘れ方 Documentary of 乃木坂46』(2015)は
驚くべき傑作だと思っている。

娘をアイドル(芸能界)の道に送り出した親の視点、
その『後悔』からも綴り上げた『悲しみの忘れ方』は、
理想と現実の狭間に置かれた少女の苦楽を掘り下げた。

ステージに立ち観客を魅了までになった娘と
それを目の当たりにし、喜びと寂しさを覚える親が
作品内で想いを交わし、二人三脚を歩み出すようなクライマックスは
アイドルドキュメンタリーとしてのみならず
親娘のドキュメンタリーとしても見事な着地を見せたと思う。

また、ごく普通の少女が日本を代表するアイドルになるまでの物語は
それ自体がドラマ性を帯びており、
ファンでなくとも『乃木坂46』を知ることができるバランスを持っている。
2期生として加入した堀未央奈のある行動で
少女がアイドルになるための覚悟を描きながら、
新しい風がグループに吹き込む予感を残すラストシーンも素晴らしいものだった。

『悲しみの忘れ方 Documentary of 乃木坂46』は
とにかくただのアイドル映画ではないため
ファンでない人には騙されたと思って観ていただきたい作品だ。

そんな前作に感動させられた自分は第2作目である本作に
期待を募らせない方が無理なものだった。

名実共に日本を代表するまでになったアイドルグループの一時期、
グループの中心でもあった西野七瀬の卒業というドラマを
どのアプローチから見て、なにを綴り出すのか?


★★ドキュメンタリーとして虚無に等しい活動記録★★
乃木坂46の輝かしい成功のステージ裏を見たい人、
要するにファンにとっては一定の楽しみは覚えれる作品だろう。

『0』から乃木坂46を作り上げる少女たちの姿を映し出した前作とは異なり、
すでに日本を代表するグループをなった乃木坂46に
加入した少女がそのプレッシャーと闘い、自らと向き合っていくような本作は
前作の時点では描けなかったドラマを映し出していく。

グループを支え、頼れる存在であったメンバーの卒業に覚える
寂しさと担っていく側にならなければいけない重圧を隠しきれず、
言動や表情で露見させしまうメンバーの姿は
華やかしいアイドルの裏側を映し出していく。

ただ、正直言えば、そんな彼女らを記録したのみの作品だ。
簡潔に言えば、ドキュメンタリーとしてまったく踏み込めていない。

乃木坂46の2017年~2019年の活動記録を
監督の主観的な視点で語られていく本作は、
冒頭で監督自身が乃木坂46をほとんど知らない状態で
作品構成も考えずカメラを回しだしたと説明される。

監督自身が撮影を通して乃木坂46を知っていく作風であれば、
監督の心情や見方の変化も重要なドラマになっていくと思うのだが、
本作は結局最後まで『彼女たちは⭕⭕なのだろう』と
主観的にも関わらず答えすら曖昧にしてしまう。

監督自身が撮影を通して乃木坂46の『何か』にたどり着けず、
どう纏めたらいいのかわからぬまま完成させた不完全な印象で、
要するにただ記録映像、メイキング作品という域をまったく脱しない。

故に、メンバーの裏側の姿があっても本当の顔が見えてこない印象だ。

ドキュメンタリー作品は対象者とどれだけ打ち解けられ、
本心をどれだけ見せてもらえるかが重要だと思う。
もちろん、対象者が多い本作はなかなか難しいが、
一線を越えない、踏み込んでこない監督を前に
メンバーはあくまで『アイドル』としての顔しかみせていないように見える。

そう考えると、親の視点で語る前作はやはり素晴らしい。
親という存在の前では彼女らも少女の姿を見せ、
何かを隠していても一番の理解者である親は
彼女らの本心を紐解いてしまうからだ。

確かに、今まで見ることの出来なかった
メンバーのステージ裏の葛藤を見ることができる作品だったが、
彼女らの新しい顔、本心があまり見えない作品であるため、
ドキュメンタリー作品としてはかなり優しい作品。

言ってしまえば、ファンのみが楽しめるといったところだ。

ただ、核心的な部分を納めているパートもある。

大園桃子が涙を流しながら
『乃木坂もいいかなって』と発するシーン。
その一言には彼女の苦楽のすべてが集約されているため、
そういったふとした少女の言葉には感動させられる。


★★説明過多でありながら説明不足な語り口★★
監督の主観敵な視点によるテロップ説明が
絶え間なく表示される本作は、とにかくうるさい。
最終的にそれに監督としての答えがあればまだいいが、
先も述べたようにどこにもたどり着かないため、
過多な説明にしか思うことができない。

にも関わらず、ファン以外を寄せ付けない説明不足さもある。

『このパートはこのメンバー』と分けず
時系列に沿ってメンバーの話を行き来しする展開や、
時系列をあえて混在させることで映画的なパズルギミックを
用意して見せる整理が行き届かない演出も去ることながら、

活動休止の後に卒業コンサートを行った
西野七瀬の卒業の流れに関してなにも説明もせず、
活動休止の瞬間を劇的に見せる本作は
なにも知らない人には
『えっ!卒業したのになんでステージに立ってるの?』
と混乱を避けられないだろう。

こう言ったところこそ客観的な視点を持って欲しいし、
なんならその活動休止から卒業コンサートの間を
もっと描いてほしかった。

そして、一周回ってダサいのがクラシック音楽の多用。
『彼女らのドラマは劇的です!』と明らさまに見せるこれは、
作品全体の出来も相まってか、
『劇的なドラマがなかった』『撮れなかった』ことを
必死に隠す逃げの技に見えてもしまった。

冒頭で監督自身が嘆いていたように
すでに日本を代表するアイドルのドキュメンタリー企画は
なかなか難しいところはあるが...


★★総評★★
ドキュメンタリー作品として秀逸だった前作から、
ファン向けであり、虚無な作品となった本作に失望は大きい。
それこそTVプログラムで放送されるような
『ステージの裏側に密着』や『メンバーの帰省』企画を
連ねたような作品。
前作がとにかくオススメです!

★★