映画雑レビュー「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」85点 ポップコーンが美味くする怪獣バトル | SayGo's 映画レビュー

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勝手に映画鑑賞して
ダラダラとレビューします。

「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」
原題 Godzilla : King of the Monsters

 



公開日 2019年5月31日
上映時間 132分

ーーーーあらすじーーーー
ゴジラとムートーの出現から5年。
巨大生物の存在を認知した世界の非難は
その存在を長く隠してきた組織 モナークに向けられていた。
そんな中、モナークの南極基地がテロリストによって襲撃を受け、
キングギドラが目を醒ます。
それを機に世界各地で眠る巨大生物も復活をはじめ、
世界は混沌に包まれていく。


世界的人気を誇る怪獣映画『ゴジラ』シリーズを
ハリウッドがリメイクした『GODZILLA ゴジラ』の続編にして、
モンスター・ヴァースシリーズ第3弾。
キングギドラをはじめ、モスラ、ラドンら
シリーズを象徴する怪獣が一同に会すことでも注目を集める。
監督はマイケル・ドハティ。


★★これぞポップコーン映画!大乱闘スマッシュモンスターズ★★
『軍人ドラマ』の延長線上で巨大生物アクションを見せた
どちらかと言えばシリアス色の強められた前作から
怪獣エンターテインメントに大きく舵を切られていた。

神話アプローチにより異なる自然を司られた
本作の巨大生物の戦いは、
まさに地球の存亡の懸かけられた神々の激突。
日本で生まれた『ゴジラ』は
容易く世界を射程に入れるにほど大きな進化を遂げられていた。

また、科学者を中心に展開されていくストーリーは
これまで人類と自然の関係性やその歴史を象徴してきた
『ゴジラ』の存在意義を確かに継承しつつ、
グローバルな視点における新たな解釈を持ってして
世界に警鐘も鳴らしてみせる。

問題提議をしてみせながら、
ファンの望む怪獣アクションを詰め込む本作は
『ポップコーンを美味くする』エンターテインメントだろう。


★★視点の切り替えで前作を語り直す幕開け★★
『ムートーの脅威から世界を救い海に戻る』という
日本の平成シリーズを想起させるような
ゴジラの英雄演出で美談としても幕を下ろした前作を
ある家族の視点から語り直していくことで
ゴジラに現実味を与えているのはやはり印象的。

『英雄譚』に潜む被害者の存在を汲み取り
作品やシリーズに異議を唱えてもみせる一種のアンチ演出は、
『MCU』や『DCEU』といったヒーロー作品にも見受けられ
作品のリアリティーをグッと押し上げてきたわけだが、
本作においても同様だ。

前作におけるゴジラの行動によって大事な人を失い、
分裂せざるを得なくなった家族の姿から
ゴジラを『世界を救った英雄』ではなく
脅威たる存在として語り直すこの演出によって

秘密機関 モナークを非難する世間や
芹沢博士のゴジラ擁護発言に遺憾を示す政府の言動は
人類の怒りや悲しみだけでなく、
地球の頂点に居続けたいという強欲さまでも描き出す。

多角的且つ地球の頂点に君臨してきた人間らしい視点から
語られていく巨大生物に対する『恐怖』描写もGoodだが、
言葉も通じず、裁くこともできない巨大生物への怒りを
最前線に立つ人間に押し付け晴らそうとする人類描写、
その世界情勢は確かな現実味を放っており、
『巨大生物が存在したら』『それを世界が知ったら』
という現実味ある『if』な世界を築き上げられていた。

★★グローバルな解釈により神たる存在となる怪獣★★
ゴジラをはじめとする巨大生物を再び脅威たる存在に戻した上で
グローバルな解釈を持ってして
新たな存在意義を与えていくところも魅力だ。

日本のゴジラは原爆や原発など
『人類史の産物』のメタファーでもあったわけだが、
特定された人の行為ではなく『人類』そのものを病原菌とし、
それに対する地球の『防衛機能』として
ゴジラをはじめとする巨大生物を位置付ける本作の解釈は
世界が共通して抱える問題を提議していく。
正真正銘の世界規模の壮大な物語だ。

『ゴジラは海』『ラドンは火』『モスラは大地』など
それぞれに異なる自然を象徴してみせる演出と
神話から紐解いてみせるミステリー・アプローチで
巨大生物を『神たる存在』に変貌させていく物語、演出にも
世界射程のエンターテインメントとしかいいようがない。

ハリウッドの巨大なバジェットがあったからこそ
可能となった前代未聞なスケールは圧巻の一言だ。

また、キングギドラを原点回帰たる設定にし、
『侵略者』『偽りの神』にすることでゴジラとの戦いを盛り上げ、
『真の神』それこそ『怪獣王』の誕生を描いているのも
ファンを興奮させる大きな要因だろう。

そんなようにグローバルな解釈で壮大な物語と
現実問題提議を果たしていくわけだが、
日本の『ゴジラ』が有するモノも継承しているのが素晴らしいところだ。

前記したように
日本のゴジラは原爆や原発のメタファーでもあるわけだが、
登場する巨大生物をコントロールできる機械 オルカ をもって
それに通ずるメタファーを描いているように思えてならなかった。

得た強大な力をコントロールしきれず
世界を崩壊に導いていってしまう物語展開もさることながら、
各地に巨大生物が眠っている設定、
保たれていた均衡が『一体の目醒め』により崩され
世界が地獄絵図と化していくともいえようストーリーは
核兵器の保有により均衡とその崩壊を描いているように思えた。

日本の『ゴジラ』が持つ人類史に対するメタファーを
形を変えど継承している本作には
オリジナルに対する敬意と愛に溢れているとも言える。

そして、核たる象徴とも言えよう巨大生物たちを
その存在のみで統治し、世界の均衡を取り戻してみせる
ゴジラはやはり『KING』としか言いようがなく、
タイトル通り『怪獣王』に相応しい。


★★オリジナルに対するオマージュ★★
本作はオリジナル作品に対するオマージュが目白押しだ。
ある兵器の登場、ゴジラを象徴する楽曲の使用など
目に見えてファンを楽しませるサービスもあれば、
『鳥居』を『十字架』に変えてみせる改変オマージュなど
『ゴジラ』シリーズに対する敬意と愛に溢れる
海外らしいアレンジも随所に散りばめられている。

オリジナルと真摯に向き合おうとする本作を見れば
日本人として安心させられる。
それもあって、
日本がアメリカに『ゴジラ』というカルチャーを託すような
シーンは感動的なものとなっている。

『ゴジラ』の発音を断固として譲らなかった渡辺謙。
作品内外で『ゴジラ』を守ってきた彼の演じる
芹沢博士が終盤に取る行動、放つ言葉には、
日本の『ゴジラ』を海外が継承してくれた安堵も
手から離れていく『ゴジラ』への寂しさがあった。

芹沢博士の行動がSF作品の醍醐味たるスペクタクルを演出し
エンターテインメントであることを忘れていないのも見事だが、

アメリカに『未来を託す』芹沢博士の想いと
アメリカに『ゴジラを託す』渡辺謙を代表とする日本人の想いが
完全にシンクロさせられもするこのシーンにに感慨深く、
個人的には感動的なシーンだった。

大事にしてくれてありがとう。これからも頼みます。
といいたくさせられるオマージュと演出は見所です!


★★進化を遂げる大怪獣アクション★★
言わずもがな楽しませるのは大怪獣アクション。
前作ではその量の少なさに物足りなさも残ったが、
派手さあり、物量ありな椀飯振舞さに満足感は凄まじい。

特に興奮させられたのはキングギドラ演出だ。

3つの頭それぞれが異なる性格を有し、
魂が同体に混在するような描写で神々しい存在に仕上げ、
『胴体より首が先行する』モーション演出の勢い、
闘争本能を剥き出で猛威を振るっていく様の荒ぶりで
邪神たる存在感を放つキングギドラはたまらん!

そんなキングギドラにゴジラはもう悪戦苦闘!
絶体絶命のピンチに陥るのだが...
あの『形態』を持ってして逆襲するのがかっこよすぎる!

注目は、その『形態』に化したゴジラの有する力を
派手に彩ってみせるエフェクト演出!

溢れ出る強大な力を高層ビル群の変化で見せつけ、
キングギドラすら寄せ付けない絶対領域を作り上げる
ゴジラを彩る極上映像映えエンターテインメントエフェクトは
反則級のかっこよさ!ド派手さ!

オリジナルを知っていれば
そのエンターテインメントに振りきられた『形態』演出に
多少なりもと意見を述べたくもなるだろうが、
ゴジラが怪獣王に相応しい進化を遂げるクライマックスは興奮必須だ。

『真のキング』と『偽のキング』、『守護者』と『侵略者』
という対立構造によって決着に爽快なカタルシスがもたらされているのも
エンターテインメントとして申し分なく、
平成ゴジラシリーズ好きには歓喜ものの一作だ。


★★総評★★
ゴジラの有するメタファーを継承しながら、
大怪獣アクション・エンターテインメントを突き進む本作は
最高のポップコーンムービー。

製作が発表されている『ゴジラvsキングコング』に
橋渡しするだけでなく、ヤツの復活も匂わせ、
再びの大乱闘を予感させる結末を見せられたら、
待ち遠しくて仕方がない。

★★★★★