映画雑レビュー「ファミリー☆ウォーズ」25点 最低最悪不謹慎映画!でも最高にエネルギシュ! | SayGo's 映画レビュー

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勝手に映画鑑賞して
ダラダラとレビューします。

「ファミリー☆ウォーズ」

 

 

公開日 2018年8月25日
上映時間 75分

ーーーーあらすじーーーー
祖父を含めた7人家族で暮らす福島家。
しかし、認知症を発病した祖父が
ドライブ中に引き殺した近所の少女死体を
持ち帰ってきたことを機に一変する。
その事実を隠蔽するため遺体を埋め、
餅を食わせて祖父を殺そうとする家族だったが、
募る不満に壮絶な殺し合いに発展していく。

ゆうばり国際ファンタスティック映画祭や
学生残酷映画祭などでグランプリを受賞してきた阪元裕吾の
大学卒業後初の監督作品であり、商業デビュー作。


★★出来は最悪!しかし、最高にエネルギッシュ!★★
『認知症を発病した祖父を餅を食わせ殺そうとする』
劇中内にもある描写を前面に押し出したポスタービジュアルが
『それはそうだろう!』と言わんばかりに炎上したわけだが、
道徳観念をぶっ壊す本作を観たらそれ以上の衝撃が走るに違いない。

『老人が車で少女を引き殺してしまう』展開や『認知症』などの
火傷しそうな現実問題を題材に掲げながら、
それをこの上ないステレオタイプなキャラクター描写と
エログロ・バトルロワイアルで料理してしまう本作は不謹慎極まりない。
よくR-18で済んだな...と思うばかりだ。

加えてそんな不謹慎な物語を
誰の目にも明白な低レベルとしか言い様のない
撮影、演出、編集で見せられたら、言葉を失ってしまう。

そんな最悪な出来、映画とも言いたくない作品のですが、
放たれるエネルギッシュさにはとにかく魅了される。

阪元裕吾監督の世間を気にせず
『撮りたいものを撮る』『作りたいものを作る』
という激流じみた勢いのみで牽引さえていくような本作は
映画だけでなくコンプライアンス意識の強いメディア業界に
大きな風穴を空けるほどエネルギッシュさを有していた。

不謹慎であり、最悪な演出に最初は嫌気を覚えていたが、
そのエネルギーに終盤は『もっとイッタれ!』と思わされ、
勢いを留めることなくゴールテープを突っ切るラストに
高揚感すら覚えてしまった。


★★全員、キ○ガイ!不謹慎度MAXな物語★★
認知症の祖父が少女を引き殺してしまい、
それを隠蔽することを決めた家族が
次第に不和に陥り、挙げ句の果て
殺し合いに至ってしまうという物語も恐ろしいが、
キ○ガイとしかいいようのないキャラクター設定と
そのステレオタイプな演出に驚かされ続ける。

それこそ餅で祖父を殺そうとする展開を
オープニングの現実における
餅の死亡事故統計の引用することでより不謹慎なものとする
ブラックユーモアも一発退場ものの『アウト!』だが、
キャラクター1人1人が『アウト!』な行動を露見していくという
健常者なきストーリーテリングぶっとび方が凄まじい。

こいつはDV!
こいつは性異常者!
こいつはメンヘラ!
こいつは...ただのとちくるい!

もう細かいことを書きはじめればきりがないのでやめるが、
1人1人に託した異常性のみを走らせるような脚本と
『これはこれ!』と割り切り個性のみを映すステレオタイプな演出は
誰の批判も受け付けない、耳をかさない!

そんな中途半端さなく振りきった作風に
後も先もないブラックコメディーとして受け入れていってしまった。


★★バカでも監督演出の光るバトルロワイアル★★
そして、祖父を起点とした家族の『異常者オムニバスストーリー』と
タブー知らずな描写でも彩られた
『少女の親夫婦とその仲間』『宗教団体』『謎の近隣』が
一点に交わることで『ひとつ屋根の下バトルロワイアル』が
展開されていく。

撮影方法や準備を隠さない大胆さや
エフェクトの雑さ、馬鹿馬鹿しい効果音を黙認して突っ走りながら、
凝られた特殊メイクなどでスプラッター演出で
残虐性を高めていくのもいいのだが、
勢い勝りなだけでなく、
意外にもしっかりキャラクター性が担保された殺し合いが
展開されていくのが面白い。

ロマンスにしっかり終止符が打たれるし、
恋人を殺された復讐として『あれ』を伐するなど、
殺害行為の中にそれぞれの『美学』というか
一応にもロジック担保されている。

阪元裕吾のオ○ニー感は強いが
『殺し方』にしっかり焦点しているのは監督性だろう。

そして、最高だったのが、
『健常者ぶる父』による感動演説エンディング!

『みんな思い出してくれ...』と心に訴え、
場を納めようとする父の演説は まぁ、馬鹿馬鹿しいのだが
その後に仕組まれた『ある演出』の顛末で
『そんな道徳観いらねぇ~よ!美しくねぇ~よ』
両断してみせる作品演出は最高だった。
『ごめんで済むなら警察いらねーよ』の映像化だ!

そして、最後に生き残っているのが『彼』であることが...
最後の最後までブラックだなと。

お前一番ヤバイんだからな!
とツッコミどころを用意してくれるラストもGOOD!


★★総評★★
物語だけでなく、脚本も演出も
最悪最低不謹慎だ。
でも、『見れてしまう』なんなら『楽しめてもしまう』。
それはすべて阪元裕吾の放つ映画に対する
エネルギッシュなバイタリティーによるものだろう。

★★