映画雑レビュー「The Witch/魔女」78点 まさに魔女!絶対に敵に回したくないヒロイン誕生 | SayGo's 映画レビュー

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勝手に映画鑑賞して
ダラダラとレビューします。

「The Witch/魔女」


公開日 2018年11月3日
上映時間 125分

ーーーーあらすじーーー
ある施設から命からがら脱走した8歳の少女 ジャユン。
記憶を失った彼女は行き着いた酪農家夫婦のもとで
第2の人生をはじめるのだった。

無事、高校生まで成長した彼女だったが、
激しい頭痛から自らの死を察知しはじめる。

自らの手術費を工面するため、賞金5億ウォンを掲げる
TVオーディション番組に出演するのだったが、
その彼女の姿に組織が動き出す。


パク・フンジョン監督が放つSF・サイキック・アクション。
主演のキム・ダミは、本作で
ファンタジア国際映画祭で最優秀女優賞を受賞した。


★★中二病心をくすぐってくるSFサイキックアクション★★
特殊施設で幼い頃から超能力兵士として育てられた少女が
平凡な暮らしを求めるも、それを邪魔する追っての魔の手に
『覚醒』するというプロットを見せる本作は、
海外テレビ『ダークエンジェル』シリーズが大好きな自分には
もうたまらないものだった。

物語にもアクションにも、もの新しさはなく、
それこそ全体的に『漫画ルック』ではあるが
韓国作品らしいノワールな雰囲気とバイオレンス描写で
大人を楽しませるエンターテインメントに昇華しており、

主人公が不気味な笑みを浮かべ、魔女たる本性を覚醒させる瞬間の
敵も味方も、はたまた作品自体も手玉にとる
その『すべては私のシナリオ通りに』感は
中二病にはたまらないクールさ!

個人的にはこれが見たかった!という映画だ。


★★我慢が必要な前半。我慢が実る後半★★
施設から血まみれで脱走する少女 ジャユンの姿と、
断片的な記録写真の羅列、その絶妙たるゴア描写など、
歴史、実態を匂わせながら明るみに出さない演出で
特殊施設を不気味に見せ、興味を引かせるオープニング。

脱走した少女と酪農夫婦の出会いから、
『少女が記憶を失っている』ことなど
最小限度な説明台詞と最短距離な展開で基盤を築き、
物語を『今』にジャンプさせるテンポの良さ。

その無駄なさでソリッドなサスペンス臭を漂わせる
開始十数分に、とにかく期待は募らされた。

しかし、そこから1時間弱は我慢の時間とも言えるだろう。

高校生となったジャユンが同級生の誘いから
賞金の獲得のためTVのオーディション番組に出演し
ステージを進めていくのだが、
その仲良しガールズ模様が牽引する
スター誕生サクセスストーリー展開という
作品の急なシフトチェンジに戸惑ってしまうこと必須だ。

激しい頭痛に襲われるジャユン描写や
謎の人物、謎の集団との遭遇シーンなど
本筋から決して離れさせない要素が散りばめられていくのだが、
青春ルックの強い作風にはとにかく驚かされ、

また、登場する組織関係や因縁模様をはじめ、
『見せない』『語らない』演出に
パズルが填まらないというより完成図が見えてこない。

物語が進んでいくのに反し、
その余白の多さに取り残されていってしまった印象だ。

しかし、そんな前半の我慢を実らせてくれたのが後半だ!

暗殺任務の遂行シークエンスを迎えることで追っ手が
ジャユンと同等に育った超能力集団と
それを管理する政府機関に明確に隔てられ、
ついにサスペンスが明るみとなる。

台詞ではなく、暗殺任務における映像描写で
組織関係を語って見せる映画らしい演出も光るが、
浮上する『三角関係構造』に作品は一気にドライブしはじめる。

前半の青春作品ルックがバイオレンスに変わるギャップと
目下の変貌に恐怖を覚える友人のリアクションを持ってして
演出されるジャユンの『覚醒』には
『よっ!待ってました!』と声を上げてしまうだろう。

匿ってくれた酪農夫婦を守るため、ジャユンは自ら投降し
ついに舞台はラストステージである施設に至る。

『ついにサイキックアクション来る!』と思っていたのだが...
もうひとつ衝撃を残しておいてくれるというのが最高だ!

それは明かされる ジャユンの真の姿だ。

ここではじめて、敵も味方も、前半を我慢して見ていた観客も
彼女の手玉に足られていたことを知る。

『すべては私のシナリオ通りに』と言わんばかり
微笑を浮かべるジャユンはまさに『魔女』としか言いようがない。

その衝撃は作品を確実にワンランク上のものにしているのだが、
彼女の真の姿を露見をクールに演出するのが、
前半の余白を視点の切り替えで補完していく演出。

視点を変えることで前半で隠されたいた部分を見せていくのだが、
それがジャユンの描く『シナリオ』を完成させていき、
また、有される『ゲーム』『遊び』感覚すら垣間見えるため、
彼女を絶対的な存在、それこそ神のようにも描かれている。

絶対に敵に回したくないヒロインの誕生だ。

本作が『第一章』で明かされることを知れば、
もう見たくて見たくてしょうがない。

こんな魔女たるジャユンを見せられたら、
彼女の『シナリオ』の完成形を拝みたくなってしまうからだ。


★★焦らされたからこそアがる!サイキックアクション★★
前半でだいぶ焦らされたこともあって
ジャユンが覚醒、真の姿を現してから幕を開ける
SFサイキックアクションはアがる!アがる!

バトルシーンに関しては既視感あるもので、
狭い空間での戦闘ということもありスケール感は大きくはないものの、

頭を潰さないと死なないというようなゾンビ無敵感と
多くの銃器を前にしても表情ひとつ変えず、
超人的な跳躍力や華麗な戦闘技術で乱舞していくアクションは見所満載。

サイキック能力をポイントのみに留め、
(ポイントとなる超能力が中盤のシーンでしっかり説明され、
 それが因果応報的なカタルシスとなっているのもGOOD!)
バイオレンスアクションのエンタメのバランスが絶妙なのも良く、

また、後茶つかせず的確にカットが割わられ、
スピード感や人物の危機的状況を描いているもの
お手本的なアクション演出としか言いようがなく、
超能力を有する集団の冷酷さ、
それこそ戦いを一方的な殺戮にも見せる
『遠くから覗き見る』ような画面演出もスタイリッシュ!

カメラが動くと人物の後ろに...!
というようなホラー映画のような演出を持ってして
ジャユンの『魔女』たる存在感を与えているなど、
もう隅々まで抜け目もない。

気になっていながら、なぜ映画館に行かなかった!俺!
そんな後悔の残ってしまうほどだ。


★★キム・ダミの怪演★★
主人公ジャユンを演じるキム・ダミが見せる
クライマックスの魔女にしか見えない怪演は凄まじい。

この先、彼女にラブストーリー作品の依頼が来なくなるのでは
と心配になってしまうほど恐ろしい(笑)

個人的にその顔立ちに
笹野鈴々音さん演じる『トリハダ』シリーズの
女キャラクターを多少思い出してしまったこともあるが、
特別誇張された表情もないのに
不気味さがこの上なく漂ってくる彼女の演技は圧巻だった。


★★総評★★
前半は我慢が必要だが、その我慢をしっかり実らせ、
焦らされた分以上の興奮をもたらしてくれるアクション映画。
韓国映画やっぱりすごい...

★★★★