映画レビュー「Back Street Girls -ゴクドルズ-」1000点!? 今年No1!? | SayGo's 映画レビュー

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勝手に映画鑑賞して
ダラダラとレビューします。

「Back Street Girls -ゴクドルズ-」




公開日 2019年2月8日
上映時間 87分

ーーーーあらすじーーーー
犬金組の若いヤクザ 健太郎、リョウ、和彦は、
自らを拾ってくれた組への恩義から
敵対勢力である小黒田組へカチコミに行くのだったが失敗し、
組織間の関係性を悪化させてしまうという
不始末をおこしてしまう。
土下座で謝罪する3人に組長は、
女となりアイドル活動をし
資金を稼ぐことを命じるのだった。


ジャスミン・ギュのブラック・コメディ漫画を
原桂之介監督で実写映画化。
極道から一転、女として生まれ変わり、
アイドルとなってしまった男たちの、
波瀾万丈なアイドル生活と極道の戦いが描かれる。


★★壮絶に チ○コが 消える!?東映ピンキーバイオレンス★★
「極道がアイドルに!?」という奇想天外さと、
「壮絶にチ○コが消える」のキャッチが醸し出すブラックユーモア。
そんな馬鹿げたヤクザ・コメディー匂のする作品を
ヤクザ映画の黄金期を作った「東映」が製作するとなれば...

予告編を一目見て自分は心を鷲掴みにされた。

とは言え、「気軽に楽しめればいいや」と
そんなに期待をせずに鑑賞してきたわけだが...

まだ2019年も始まって少ししか経っていないが、
自分の中で今年No.1映画は「クリード 炎の宿敵」の予感がしており、
それは今だ揺るぎそうにはないのだが、
「Back Street Girls -ゴクドルズ-」の方が、
断然好きだ!最高だ!早くもう一回見たい!

一人でも多くの人に観て欲しい!
誰かと共有したい!
見終わってそんな気持ちを抱かされたのは
「カメラを止めるな!」以来だ。


★★極上ギャグエンタメ!真剣さが誘う笑い★★
東映マークと同時に
その黄金期を連想させる劇版が流れだし、
フィルム調の粒子感あるエフェクトと
陰影あるライティングで
演出される健太郎、リョウ、和彦の兄弟の盃で作品を幕開け、
瞬く間に敵対勢力へとカチコミに雪崩れ込む本作は、
どう見たって任侠映画だ。

しかし、そのノワールな雰囲気は
突如映し出される、流れ出す
「アイドル」という日本を代表するポップカルチャーで打ち砕かれ、
作品はあまりに軽快なテンポでコメディに走り出す。

「アイドルになるか、足を切るか内蔵出すか5秒で決めろ」

驚愕としか言いようのない「究極の選択」を強いり、
待つことをしらない組長のカウントダウンのスピードをそのままに
3人がタイに飛ばされるという
有無を言わせぬブラックユーモア展開の面白さ。

大胆な演出でアイドルの下積みを演出してみせ、
美少女アイドルグループ「ゴクドルズ」に生まれ変わった3人が
サイリウムの光を受けてステージで歌って躍りだし、
「ヤクザがアイドルになっちゃった!」という
驚きとワクワク感を与えてからの
タイトルという切れ味の良さ。

アイドルとなる運命を強いられた3人の「人生」や「戸惑い」「嘆き」を
彼ら、いや彼女らの歌う曲の間に
「コール」「口上」の如く差し込むことで、
ここまでの展開を見事なまでにアバンタイトルとして纏めあげしまうという
日本アイドルカルチャーをうまく取り入れた演出ギミックの巧みさ。

この時点で自分はすでに
目が♥になってしまいました。


面白くて仕方がない。
あっという間の87分だ!

バックヤードでの拭いきれないヤクザらしさに、
「女らしい仕草」が火蓋を落とす喧嘩など、
美少女というルックと行動にギャップがあればあるほど、笑いが止まらない。

アイドルの登竜門とも言えよう「ドッキリ企画」が
彼ら3人の「任侠魂」によってメチャクチャになってしまうという
シチュエーションコメディー要素や、
これまた良く見る「暴力団撲滅運動」を
ヤクザたる3人が「アイドル」としてこなす皮肉ギャグなど
隅から隅までアイドル活動を逆手に取った笑いを量産していく。

また、素晴らしいのは「狙わない」コメディ演出だ。

「ここ笑うところです!」というわけではなく、
「真剣にヤクザがアイドルをやっている」という
勇姿を渋く、淡々にも見せる本作は、
そのシュールさが常に失われず保たれており、
そこに可愛らしい女優陣がヤクザを真剣に演じること
そのものが産み出す「ギャップ」が相まることで
「爆笑」ではなく「小笑い」を絶え間無く量産していく。

「もし、ヤクザがアイドルになったら」
という素材の味をストレートに味わえるからこそこの作品は面白い!


★★哀愁が漂うからこそ笑えてもしまう男の物語★★
女になってしまったからこそ叶わない。
そんな本作のロマンスはかっこよく、悲しく。
だからこそ、笑えてもしまう。

握手会で来た少女が、
「えっ⁉もしかして我が子!?」。

相手を重んじ別れた女と
「アイドル」として再会し、
しかも、その子がアイドルとしての自分に憧れているという物語や、
男でも女でもないからこそ相手に見向きもされない恋模様など、
この作品は切ないからこそ、笑えてしまうロマンスが魅力でもある。

そんな残酷な現実を前に酒を口にするという「男の哀愁」も
またかっこ良く、同時に笑えてしまうわけだが。


そして、男であることを忘れていないのに、
ゴクドルズ内の人気格差から
「嫉妬」が生まれてしまうという
アイドルのリアルな現実を作品内に組み込んでいる部分も面白く、

それぞれの抱く男としての、女としての葛藤が
まさに「見え隠れする自分の対話」として演出されるトイレでのシーンは、
3人のそれぞれのキャラクターの深度を深め、個性をも与えていく。

「自分が何になりたいのか?どう生きたいのか?」
3人が宿す「6人の男と女」が想いをぶつけ合い、
それぞれで自分を探していくようなこのシーンは、
トイレの「個室」というギミックを用いることで映像的にも
彼らの「葛藤」と「決意」を語って見せる。

見事なまでに計算のなされた素晴らしいシーンだったと思う。


★★爽快なクライマックスバトル!サイリウムを振りたくなるラストステージ★★
3人は男としてもケジメをつけるため、
クライマックスで壮絶な戦いに身を投じる。

美少女としての姿とヤクザとしての姿を
行き来し混在させることでアクションクオリティーを保つだけでなく、
その容姿の変化がスピード感ともなり、
また、衣装のパズルギミックによって
「ヤクザ」と「アイドル」がひとつとなっていく、
自我が確立されていく3人の姿が
アクションシーン内で的確に表現されていく。

だからこそ、その果てに
「お前らいったいなにもんだ?」という問いに
自己紹介をしてみせるシーンには
「戦隊ヒーロー」で言う
変身シーンのような高揚感があり、
痺れるほどのかっこ良さを覚えた。


そして、彼らはステージに向かって走り出す。

ただこれまでと違うのは、
他者に強いられてステージに向かうのではなく、
自分の意思でステージに走っていくということ。

最後のステージシーンは大きなカタルシスを放っており、
その歌とダンスという華やかさで
気持ちの良く、感動的でもあるフィナーレを迎えます。

こんな清々しい映画の終わり方は久々に観たような気がする。

エンドロール後でのひと笑いも個人的には最高としか言いようがない。


★★ハマりキャスト!手腕を見せる監督の演出★★
とにかくキャスト陣は素晴らしい!
男性陣はかっこ良く、女性陣は可愛く気高い。
女優陣のヤクザのなりきりも
絶妙な「顔芸」もこの作品の魅力だ。

ただただ「ゴクドルズ」のファンになりました。
マリ推しです!
2月13日発売のゴクドルズのアルバム「IDOL Kills」は
初回限定版Bで即予約でした。

早く聞かせろ~。

脇を固める名俳優陣の存在感も見事で、
豪華に作品を彩る。

そして、この作品のクオリティーを上げているのが
原桂之介監督の演出力。

コメディ表現やアイドルカルチャーを用いた演出も見事でだが、
冒頭のカチコミのターゲットが小黒田であることを、
写真に写された彼の顔にタバコを押し付けることで説明する映像語りや、
(小沢仁志の顔面力があるからこそでもあるが)

ゴクドルズの人気推移を語る組長の衣装変化、

トイレシーンをホラーテイストに寄せることで
「自分でなくなる恐怖」「自我が対立する恐怖」の葛藤を印象づけていくなど、
的確でありながら、フレッシュな演出が
作品のクオリティーを確実にあげていたと思う。

「走る」シーンを持って来て置きながら、
「出来ねぇーよ!」っていう、
どこか邦画のお決まりを皮肉るような
演出ももうたまりませんでした!

原桂之介監督の今後気になってしまう。


★★総評★★
個人的には今年のダークホース。
「名作」ではないが、本作が打ち出すエンターテインメントに見惚れ、
「大好き」としかいいようのない作品。

★★★★★