映画レビュー「十二人の死にたい子どもたち」22点 俺、劇場間違った?全然密室ゲームじゃないじゃん | SayGo's 映画レビュー

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勝手に映画鑑賞して
ダラダラとレビューします。

「十ニ人の死にたい子どもたち」




公開日 2019年1月25日
上映時間 118分

ーーーーあらすじーーーー
安楽死を望み、廃病院に集まった12人。
しかし、そこには謎の13人目の死体が置かれていた。
彼は何者なのか?自殺なのか?他殺なのか?
12人の望む死は、目の前の死によって一変する。

冲方丁のサスペンス小説を堤幸彦監督で実写映画化。
杉咲花、新田真剣佑ら人気若手俳優陣が集結し、
密室リアルタイムサスペンスが展開されていく。


★★予告と全く別物のヒューマンドラマ★★
畳み掛ける「死にたい」という言葉を
「殺さないで!」という一言で打ち止めるインパクトある予告編。
「未体験リアルタイム型・密室ゲーム」と銘打たれ、
キャラクターに数字をふることでミステリーを匂わせるポスターデザイン。

そんな宣伝には多くの人は、
密室で展開される「誰が犯人なのか?」「次は誰が殺されるのか?」
といった観る者を疑心暗鬼にさせる
「シチュエーション・スリラー」のジャンル映画を期待することだろう。

しかし、本作は予告編とは全く別物の作品だった。
まるで、店頭の画像と実物に差があるマクドナルドのようなものだ(笑)

「世紀の駄作」とまでは決して言わないが、
集客のため「密室ゲーム」というキャッチーなコピーを用い、
いつの時代も若者の興味を示す「死」を
そこに連想される宣伝との落差に期待外れな印象を受けざるを得なかった。

劇場の入り具合から「宣伝」としては大成功だと思うが、
作品の質に関係なく非難が集まることだろう。


★★犯人不在のミステリー。都合のいいパズルゲーム★★
12人が廃病院に集い、ひとつのテーブルに集うまでのアバンタイトルは、
後に伏線になるだろうアイテムや出来事の散りばめられていることもあって、
「ひとつも見逃したくない」という思いに駆られ、
また、容姿だけでなく、口調や仕草にいたるまで
しっかりと個性を持たされた12人のキャラクターが次々に現れ、
それを人気俳優陣が演じているとなれば、「高まりゅ~」(SPEC)状態。
この中で、誰が死に誰が生き残るのかと...

しかし、一行に殺人は起こらず、密室ゲームが始まる気配すらない。
というより全く密室でもない!? あれ!?どうした?
 

反対に、まるで学園作品をみているような
「死」でなく「青春」の香りがどこか漂ってくるような映像演出が
次第に覗いていくようになっていく。

結果から言えば、この作品は密室ミステリーでもなく、
シチュエーション・スリラーでもなく、
「死」の望む若者たちが想い打ち明け、
「生」を見いだすヒューマンドラマでした。

まぁ、それはさておき、
この作品には一応にもミステリーが存在します。
それは12人が集うはずの集会の場に13人目の死体が置かれているという

映画「SAW」をどこか彷彿としてしまうミステリーだ。

12人の意見が一致しないと「死」を実行できないという決まりが、
すぐにでも実行したい人間と、
一応にも辻褄のあう理由をもって

13人目の死体の真実が明らかにならないと
賛成できない人間とを対立させ、
その協議の中で、死体が何者なのか?自殺なのか他殺なのか?
他殺なら誰が殺したのか?という「真相」を

12人は追求しはじめます。

作品は、冒頭に散りばめた様々な伏線を回収しながら、
13人目の死体の真実を紐解いていくのですが...

ピースがひとつひとつはまっていく毎に
「自分達でこと荒立ててない?」的な印象を受け始め、
パズルが完成されてみると、
「お前ら死にたいなら最初から言えよ!」
としか思えないこの上なくご都合主義なミステリーだった。


それぞれの自分勝手な行動が

12人の中に「犯人」の存在を作り出し、
それを「違います」と否定し、打ち明ければ
すぐに望む「死」を実行できただろうに、

永遠とうじうじうじうじ。

伏線ピースを回収し、パズルを完成させる映画には
時にご都合的で強引なストーリーテリングをしてみせる作品もあるが、
その多くは一応にも、パズルが完成したときに爽快感をもたらし、

そのパズルが完成されるカタルシスによって

エンターテインメントを演出してみせる。

しかし、本作は伏線ピースを回収し、ひとつの画を完成させるも、
驚きもこれといった展開力もなく、
ミステリーとしてだけみたら、

物語をスタート地点に戻してもしまう。

死にたいと願いながら、自ら死を遠ざけていくような展開に
「なに見せられてたんだろう...」と。

近年まれにみるほど無駄な時間を過ごした気がする。

そんなミステリーなんてどうでもいいのだ!
なぜならば、この作品ヒューマンドラマなのだから....


★★良く喋るなこの子たち。それが言えてなぜ言えないかなぁ~★★
この作品蓋を開けてみればヒューマンドラマで、
言わば「13人目の死体」の真相を追求する中で
自分をさらけ出し、次第に本当の自分を見つけるという作品だ。
要するに、若者が絶望から希望を見つけ出すいい作品な訳です。

ただ、12人みんなつらつら、つらつらと自分の事しゃべっていくわけで。
「私はこうでこうで、こうだから」と....
実写版キャシャーンよりキャシャーンかよ(笑)。

特別追い詰められた訳でもなく、
ふとしたきっかけで、
自分の事や隠していた事実を喋りだすご都合展開には興醒め。
「そんななんともないキッカケで喋れるんだったら最初から言えよ!」と。
 

感情の起伏によって方言を出てくる演出はよかったが...


「もっとみんなの話聞きたいよ」
と涙ながら、ある人物が感動的なスピーチするわけですが、
「もうお腹一杯です。聞かなくても大丈夫です。」状態。
 

そんなスピーチにみんななんやかんやで「死」から脱却してしまうとくる。
みんないつの間に現実と向き合ってたの!?
もうみんなが手を挙げるなら私も的な日本人的な感じで。

 

そりゃそうだよね。みんなやっぱ本当は死にたくないよね。

本当に死にたかったら、一人で死ぬもんね。納得です。


そして、くどいのが「もういいよ!」と叫びたくなる、
廃病院に入るときと出るときでは表情変わってます!
というそれぞれの変化を写し出す比較カットの羅列。

もうわかったから、みんな変わったんだよね。よかったね。


★★エンドロールはリアルタイムで★★
ラスト、「天使」と「悪魔」をある二人のキャラクターが担い
物語が締め括られます。
この終わり方だけは結構好感を持ちました。
次の集会の方がゲーム性が高そうに思えるからです。

そして、エンドロールに
作品内の13人目の死体ミステリーを
時系列順に整理し、時間テロップを添えて流していくます。
 

まぁ、なんて親切な答え合わせでしょう!
でも、それ、もう分かってますから~。答えだせてますから~
全然面白くないです~(笑)

ヒューマンドラマなのに、
なんで最後パズルギミックを押し出すかな~


★★総評★★
宣伝から持ったイメージとのギャップもあるが、
今年ワースト候補の一作。
自分勝手なキャラクターの行動が
「死」を遠ざけるミステリーを作り上げ、
「実は...」と一言言えば解決するところをひた隠し、
「えっ!急に」というタイミングで急に饒舌に喋りだす。
そんな人たちに囲まれていたら
まぁ疑心暗鬼にもなるか。死にたくもなくなるわな。