ツーソンショウ2012の入荷のロシア(Senduchen Verkhoyansk, Yakutia ,Siberia)産の石黄/Orpiment です。
石黄は「雌黄」とも呼ばれる、砒素の硫化鉱物です。
雌という文字を使用しているということは、雄という文字に替えた「雄黄」があるのかと想像できますが、実際に「雄黄」も存在し、これは鉱物名では「鶏冠石/Realgar」です。
昨年、『中世魔法藥局』のイベントを開催するにあたり、それまで趣味で集めていた薬草や毒薬などの書物・資料にも登場するものです。ただし、雄黄と雌黄はいろいろなところで混同されていたようで、実際に石黄は鶏冠石が変化したものもあるので、仕方がないことかもしれません。
中世頃までは黄色の顔料として用いられていて、これには雄黄色という名前として残っています。
石黄の化学組成式はAs2S3で、鶏冠石はAsS(As4S4) 。砒素と硫黄で、みるからに有毒であることがわかります。顔料としての使用もこの毒性のために止められていきました。
しかし、「口中雌黄」という四字熟語もあり、意味は「自分の間違いをすぐに正す」というものですが、これは雌黄が、黄色い紙にかかれた文字を消す、つまり黄色い顔料である雌黄を塗ることで修正インクの役割をしたためで、いつでも訂正できるように雌黄を口の中に含んでいたという故事によります。
砒素と硫黄の化合物を口の中に入れておくなんて、大丈夫だったのだろうかと心配ですが。
ただし、『魔法藥図鑑』にも書いたように、毒は用い方により、転じて薬となります。中医学では解毒剤や抗炎症剤として用いられていたようです。
中国では雌黄がOrpimentで雄黄がRealgarなのですが、日本の鉱物名では石黄=雄黄=Orpiment とされていて紛らわしいです。
前置きが長くなってしまいましたが、今回はこれをミニチュア試験管につめてみました。
石黄にもいろいろな状態のものがありますが、これは滑石をカレー粉で染めたような感じです。
透明度があり、石黄の標本の中では初めて見たハイランクで美しいものです。
これが元の標本。一番長い辺で4cmくらいの薄いものです。
今回は3つだけ入手し、2つのみミニチュア試験管仕様としました。
石黄についての毒、薬、顔料としてのエピソードについては豆栞にまとめて、魔法藥局カニバルの時に、魔法藥局的豆標本ブックレットに仕立てて販売予定です。
(先に試験管入標本だけご購入された場合は、後でブックレットだけのご購入も可能です)