『響き合う俳句と書 下』(金子兜太監修/天来書院)より選句、習字
沢木欣一
八雲わけ大白鳥の行方かな
新潟県瓢湖にて平成元年一月、昭和天皇崩御の翌日の作。古事記にある『八雲立つ出雲八重垣』の歌謡や、日本武尊(ヤマトタケルノミコト)が亡くなって、大白鳥となり行方も知れず飛び去って行く場面を連想との解説。
昭和天皇崩御の時は、松江市に赴任していた。近くには、八雲村、八重垣神社があり、隣接市の安来市には、白鳥(といっても、大白鳥ならぬコハクチョウ)がたくさん飛来する。
白鳥のある句
安部宗一郎 白鳥来る虜囚五万は帰るなし
毎年、秋になるとシベリアから白鳥がやってくるが、シベリアに抑留されその地で亡くなった五万の人々は帰ってこない。
津田清子 千里飛び来て白鳥の争へる
安来にやってきたコハクチョウは、かたまってひしめきあっているが、しょっちゅう小競り合いをしてやかましく鳴いている。北に帰る時、飛べないのではないかと心配されるくらいすごく太っているので、食い物に困っているわけではなさそうだ。
白鳥のある短歌
若山牧水
白鳥はかなしからずや空の青海のあをにも染まずただよふ