秋なのに・・・3 | ノベルの森/アメブロ

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オリジナル小説、今はSF小説がメインです。今日からは「多次元文章世界」と題して、ノンフィクション(ショート・ショート含む)とエッセイを展開していきますのでどうぞ応援してください。

 

  秋なのに・・・3​​


 

 

 

 

 

 

 

 

「秋なのに・・・2」事件の次の日曜日、12時30分 B君の部屋


 

 

彼はたった今目覚めたところだ。
いつもの日曜なら出勤なのだが、夕べは運悪く新米歌手のレコーディング
でギタリスト担当に割り振られて赤坂のレコーディングスタジオ「ミントンハウス」で明け方近くまでお仕事。


と言っても新米歌手はボーカルのパートだけ仮録りして先に帰ってしまった。

「お疲れ様~」とか言っちゃって手なんか振りながら・・・。
疲れるんだよ・・・。


だが残されたミュージシャンたちは流石に本物のプロだけあって、キッチリ、テキパキ仕事をこなした。

そこへ社長が登場。B君の肩をポンとたたいて

「オ・ツ・カ・レ・Bちゃん、もう上がっていいよ。今日は一日ゆっくり休んでていいから」

「そうすか、じゃあお言葉に甘えてお先に失礼します」

と頭を下げて帰っていったのであった。



 

 

B君、寝起きの一服を楽しみながら昨日を思い出す。

(ワンフレーズずつしか録れないなんて、あれでも歌手か?・・・
さてと・・・下でモーニングでも・・・)


「キキッ! キキ―ー! ガシャ!!」

(こ、この音って・・まさか!またAがチャリンコ飛ばして来たのか!? 勘弁してくれよーもう・・・)

B君の無言の願いは叶えられなかった!




 

「トントントン、トン・・・」

(この能天気な足音は、Aだな・・・寝たふりするか・・・)

ドンドンドン!

「おーいBー!開けろよー!」

「今開けるから、んなにドンドン叩くなよー!」

ガチャ!

Aの顔・・・暗い。

「お前さあ、今度来る時は、『遊びに来いよな』って言ったろ!?
なに問題抱え込んで来てんだよー」

 

「悪い・・・そう思ってこれ・・・」

A君が差し出したのはマックの紙袋。

B君、何故か問い詰める気ゼロの顔になって受け取る。

「お!ビッグマックセットにマックシェイクLサイズ! お前気が利くじゃん! 

そんなとこに突っ立ってないで上がれ、上がれ!」


A君「夜ならビール、昼間ならマックセット。分かり易い奴」

B君「ん?なんか言ったか?」

A君「いや、とにかく喰おうぜ!」


 

 

10分後

B君「よし、腹ごしらえは済んだ。さあ、聞こうか・・・」

A君「うん、実は夕べな、うちの社長に頼まれて例のT会の仏教講座に行って来たんだ・・・」

B君「おいおい、大丈夫か?T会って問題あるって話だぜ」

A君「それは大丈夫。T会の幹部にうちの社長と大学時代にバンドやってた人がいて、社長から『みんな悪いけど交代で顔だけ出してやってくれ』って頼まれててね、みんな『お仕事』の延長で行ってるだけだから。


 

B君「そっか、それなら大丈夫だろうけど。・・・ところでまた此間みたいに青い顔してんのはどういう訳だ?」

A君「それがね、あの講座・・・つまんない話だしお仕事の延長だから、右から左へ聞き流してたんだけど・・・」

テーブルの上にあったマックの残骸を手早く片付けながらB君が言った。

「だろうな、あの手の話は退屈なもんだと相場が決まってる」

B君「うん、オレも思いっきり退屈してたんだけど・・・終わりかけて俺の中でフェイドアウトしかけてた話が今度はフェイドインしてきてね・・・」


 

講師「皆さんは、人が死ぬときってどんな風だかご存知でしょうか?
この話は書き物としては残っていないのですが、昔ある高僧が自らが見込んだ弟子に口伝えで残す『口伝』という方法で今に伝わるものです・・・」


A君「・・・何となく興味が湧いてきたんだ」
B君「・・・まぁ、分かるような気がする・・・」
A君「で、その講師が話した『人が死んでいく時のパターンの1つ』っていうのがさあ!」

B君「なんだよ!急にでかい声出して!・・・」
A君「ごめん、聞いてくれ・・・その講師の話の内容がな・・・」
B君「お、おう・・・」
A君「こないだ俺が体験した事とまったく同じなんだよ!!」

B君「!・・・・・ビール買って来いよ、ビール!!」
A君「全部ちゃんと聞いてくれたらな!」

 

B君「 分かったよ・・・けど、お前が聞いてきた『話』と『現象』の順番が問題だよな・・」

A君「そこなんだよ!あの話を先に聞いてたら、あの夜のことは事前に刷り込まれた俺の思い込みによる幻覚だと言えなくもないが、俺の体験した現象の方が先だった!って訳よ・・・」

B君「ううー・・・背中がぞくぞくしやがる! ビールじゃ物足りない!確
か前に社長からもらった日本酒が・・・」


 

ガサゴソ、ガサゴソ・・・「あった!」

 

B君「これをお湯割りで飲む!お湯を沸かすから待ってろよ!」
A君「おう!なるべく早いとこ頼むぜ!オレも思い出したら震えが止まらなくなってきたぜ・・・」







おー怖!・・・というわけで自己満足しながら
この話、これで完結です。ちなみにこの2人は後日、とある神社に詣でてお祓いを受けまして、その後何の支障もなく暮らしていますのでご安心を。







 

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