こんなとき、待ってるだけじゃなぁ・・・そうそう!
独り芝居かよー、自分に気持ちわるっ!
ハンカチをジーンズのポケットから取り出してチャーリーに見せた。
ヨーコが顔を上げた時に、ハンカチを渡す役目を譲るつもりはない。
声には出さないが、そう伝えたかった。いくらチャーリーにだって
そこは譲れない。
チャーリーが白い歯を見せて頷いた。
(チャーリー!やっぱりテレパスなのか?)
「そうだよ。勇一は、薄々感じていたはずだよ」
「そうか、当たってたんだ俺の勘は・・・」
白い歯を見せると同時に親指を立ててみせるチャーリー。
「それで、チャーリーの場合、先天的なの?それとも修行した・・」
「あとの方だよ、第三の目を刺激するといいって、本で読んだのを思
い出してね・・・」
チャーリーが白い歯を見せて話を切った。膝にかかっていた重さが消
えたからだ。
勇一が差し出したハンカチで目の辺りを拭ったヨーコが一方的に話し
始めた。勇一が慌てて止めるのに耳を貸さず、これまでに俺たちが遭
遇したパラレルワールドの話を・・・
チャーリーに頭がおかしい、と思われたらどうするんだヨーコ、とい
っても、話しの中に『パラレルワールド』が出てきてしまった以上今
さら止めても仕方ない。チャーリーが真面目に話を聞いてくれるの
を祈るだけだ。
静かになった。ヨーコの話が終わったのだ。
チャーリーは椅子に背中をあずけ、テーブルの上においていた手でグ
ラスを持ち上げると、残っていたワイルドターキーを飲み干した。
「二人とも、しっかりテレパスの修行をしておくべきだな」
「え?」
二人同時に同じ言葉を口にして、顔を見合わせた。
「まだパラレルワールドの旅が終わったわけじゃなさそうじゃないか」
「それは、そうかも・・・」
「ヨーコの話によると、勇一のご両親でさえ、元の家族全員が知ってい
ることを知らなかった。そうなんだろ?」
チャーリーに向いてた視線を、バーカウンターに移して小さく頷いた。
まだ終わっちゃいない・・・
ヨーコは元気な父親に会えるまでこの旅をやめないだろう。
「チャーリーの言う通りかもな、第三の目を開発し、なれるならテレ
パスになっといた方がいい」
「さっきから何なの?第三の目とか、テレパスとか、何のことだかわ
かんない。説明してよ!」
「だから、今チャーリーが言ったように、同じように見えて実はお互
いの歴史に明らかな違いがある。そんな人に出くわしたら、俺たちの
事を疑ってないかどうか、わかってた方がややこしい事にならなくて
済むだろってことさ」
「さて、二人ともわかってくれたようだ。授業を始めるよ」
「でもチャーリー、そろそろ開店の時間じゃ・・・」
勇一の言葉をさえぎったチャーリーが、白い歯を見せて言う
「今日は君らの貸し切りだよ、勇一、表のネオンサインを消してくれ
」
「そんな、明日でも出直すよ」
くびを横に振ってチャーリーが言う
「善は急げって言うだろ、ヨーコ、ブラインドを下ろしてくれないか
」
「ありがとう、チャーリー」
「また君らと会えた。それだけでハッピーだ。君は違うのかい?」
本当に嬉しそうな顔でチャーリーは、そう言った。
ヨーコは、泣き出しそうになるのをこらえて満面に笑みを浮かべた。
そんな二人のやりとりを見ている勇一は、ほっこりした気分に浸れな
いでいる。
チャーリーの話の続きを早く聞きたい。
(「第三の目」って一体何のことだ?)
勇一は、気になって仕方がないのだ。
今日の好きな曲は、勇一のはやる気持ちを優しくなだめてくれる。
そんな名曲です。じっくりご堪能いただければ幸いです。
奏者: ジム・ホールで、「アランフェス協奏曲 」
eastend0003,thanks for up♪
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