ある夏の日に Hope-3 | ノベルの森/アメブロ

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オリジナル小説、今はSF小説がメインです。今日からは「多次元文章世界」と題して、ノンフィクション(ショート・ショート含む)とエッセイを展開していきますのでどうぞ応援してください。




俺は、一体何時まで待たされる・・・いいよヨーコ、待つからお前の
気が済むまで、心の中でそうつぶやいてイスを引き腰を下ろした。

カウンターに一番近いテーブルでイスに腰をかけたまま、膝にヨーコ
の頭を乗せた姿勢を崩すことなく、チャーリーは優しさを湛えた眼差
しを俺に向けて

『そう、このまま、このままでいいさ。何があったのか話す気になれ
ば顔を上げてくれるだろ?』

白い歯を見せるだけで、そう伝えてくれる・・・
まるでテレパシーみたいだね、チャーリー・・・


5分ほど時をさかのぼるとしよう。
俺はヨーコを店の手前の路上に待たせたまま、チャーリーの店のドア
を開けた。

そこには、いつものようにカウンターに一番近い席のイスを店の入口
方向、正確に言うと、年代物のスピーカーから届く音が丁度いい具合
に聴こえる位置に置いて座り足を組んでいる。そうしておいて、毎日
開店前にかけることにしている

「SWING TO BOP」

に身を任せ、靴の爪先でリズムを刻む、懐かしいチャーリーがいた。

「チャーリー・・・」

呼びかける声に「邪魔して悪いけど」と想いを込めるのは『親しき中
にも礼儀あり』だし、音を愛する者として当たり前のこと。
それが伝わらないチャーリーではない。

チャーリーの目が開いた。

「やあ、勇一・・久しぶりじゃないか」

白い歯を見せて手招きをしてくれる

(この世界でもチャーリーは変わらず、優しい)

何だか胸の奥が熱くなってきた・・・

「何をしている?こっちへおいで・・・おや、今日はひとりなのかい
?喧嘩でもしたのかな・・・おっと、余計なことを言うのは年のせい
だな、悪く思わないでくれ」

ますます熱いものがこみ上げてくる。ヨーコならきっと泣いてしまう
よチャーリー・・・

「ネオンサイン、点けてもいいかいチャーリー」

チャーリーは、不思議そうな顔をするとポケットから懐中時計を取り
出した。

「オープンまで、あと15分あるが・・・訳ありだね、いいよ点けなさ
い」

「すまない、ありがとう」

「何を謝る?おかしな子だ・・早くヨーコを呼んであげなさい」

すっかりバレている・・・相変わらず隠し事なんて出来ない。
勇一は、大げさに肩をすぼめてからカウンターの中に入った。
ネオンサインを点けるとき、チャーリーと目が合った。

「レコード針を上げておいてくれないか」

俺は、しかめっ面してたと思う、チャーリーの意図が読めなかったか
らだ。

「勘だよ・今日は店を開けてる場合じゃない、そんな勘がするんだよ



お手上げだ、俺は両手を腰に当てて顔を横に振った。

チャーリーが大きな声を立てて笑い、そこへヨーコが飛び込んできて、
そのまま、目の前の光景が続いている。






今日は、好きな曲というより心動かされた曲です。
ブルーノートたっぷりのクラプトンのナンバーを探していたのですが
、この曲に心をつかまれてしまったようです。というのもこの曲はク
ラプトンが最愛の息子さんを亡くした絶望の淵から脱して歌い上げて
いる曲なのです。

実は私の従弟が今年の春に急逝し、その時の叔父夫婦の嘆き様とク
ラプトンの歌う姿が、人もケースも全く別の世界のできごとではあり
ますが、僕の中でダブり、今日、掲載しています。
決してただ暗い、嘆いてばかりではない曲です。



Tears In Heaven  [日本語訳付き]  エリック・クラプトン

MrMoonligttさん、Upして頂き、有難うございました。







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