細い道を進む。



背筋をピンと伸ばし、1点を見つめ黙る。



「やば、ねっむー」



「そうですね・・・すぐに眠れそうですよ」



そんなことないの分かってる。



平静且つ冷静に振る舞おうとしてる自分がいた。


部屋の前に車を停める。


ドアを開けると、急な階段が目の前に・・・



「なんだこりゃ!」



「わぁ、凄いですね!すぐ階段て・・・」



この階段を上りきったら私は・・・



私は・・・



私の気持ちは・・・



たっちーさんの気持ちは・・・?



一段一段階段を上る度に、胸の鼓動が高鳴り。



冷静さを欠いてゆく。



部屋に入ると、作りは普通。



大きいベッド1つと、普通のバスルーム。



ただ、バスルームと寝室を分ける扉が無いことだけが気掛かり。



テレビを付けると、サッカーがやっていた。



荷物を置き、整理するふりをして、どうすべきか様子を伺う。



たっちーさんはソファに座り、サッカーを見始めた。



・・・



「あのー、私先にシャワー浴びてきますね」



「いいよー」



あくまでも冷静に。



荷物を持ち、扉の無いバスルームへ。



そういえばたっちーさんの前でスッピンになったことないかも。



まぁ、でも化粧は落とさないとね・・・



変にかいた汗を流すためにシャワーを浴びに行くのでした。



シャワーを浴びながら、ふと、昔のことが鮮明に蘇ってきた。



急な雨に濡れて行ったたっちーさんの家。



パジャマを貸してくれて、バスルームで濡れた服のボタンを1つずつ外す。


この扉1枚の向こうにはたっちーさんがいるんだ。


変な緊張感に襲われた。


・・・・・・



懐かしい・・・



あの頃は化粧も落とせなかったからシャワー浴びなかったな。



シャワーを浴びて、バスタオルを頭からバサッと掛け、たっちーさんに顔を見られないようにした。



「お待たせしてすみません」



「じゃ、入ってくるわ」


「はい」



たっちーさんがシャワーに向かう。



この後、あたしはどうしてようか・・・
美味しい肉を頂いた後、気付けば夜の23時前・・・



「さぁ、明日はどこ観光に行こうかね」



「私、白川郷に行ってみたかったんです!」



「確か車の後ろにるるぶがあったはず・・・」



後ろの席をわさわさと探す様子を見て手伝おうと手を伸ばす。



「全然掃除する時間も無くて汚いから見ないで!恥ずかしいけぇ・・・」


可愛いたっちーさん!
意外と綺麗好きでは無さそうな感じに、きゅんときてしまいました。



るるぶを開き、車内で作戦会議。



「俺休みは大体車で京都か名古屋に行くから岐阜のことよく分からんのよね」



「岐阜に来てどれくらいでしたっけ」



「1年半くらいかな」



「逆にどこか行きたいとこはありますか」



パラパラとページをめくり、滝の写真が載っている所を指差し。



「ここ綺麗じゃね」



「うん、確かに!ここ行ってみたいです」



「かなり遠そうだから、夜のうちに行けるとこまで行ってみるか」



こうして夜のドライブへ・・・



市街地を抜け、灯りの少ない道をひたすら運転するたっちーさん。



流れる景色。



2人だけの空間。



異様に緊張してしまう。


色々聞きたいことがあったのだけれども。



ごくっ・・・



飲み込んだ。



他愛ない話をしながら、1時間程走った。



「そろそろ目的地まで半分くらいまで来たじゃろうし、そろそろ休むか」


「そうですねー。段々眠くなってきましたし」



「ここら辺に泊まる場所あるかな・・・」



「うーん、さっきから田んぼばっかりですもんね・・・あ・・・あれ」



田んぼの間に見つけてしまった、御休憩の文字。


「もう、あそこでいっか」



・・・



はい・・・



消え入るような声で返事。



あぁ、また、私は。



でも、もう大丈夫だよ。


もう大丈夫なんだから。


どこでもすぐに眠れるくらい疲れてるし!



平静を装いながら、キラキラと光る御休憩の文字を目指して車を走らせるのでした。
車を停めて、夜の岐阜駅周辺を歩く。



「会社の先輩に会ってしまうかも」



「あぁ、近いんでしたっけ」



「職場は大垣の方なんじゃけど、みんなこっちに飲みに来る」



「それはどきどきしますね」



「そしたら妹が遊びに来とるってことにしよう。彼女と別れたばっかりで、色々何か言われそうだし」



・・・



ふーん。妹、ねぇ。



どう見ても兄妹の雰囲気では無いような。



まぁ結局先輩にバッタリ会うことも無かったから良かったけど。



色々私がサイトで探したお店は混んでたり、たっちーさんが行ったことあったりで却下され、結局焼肉に行くことに。



ラストオーダーぎりぎりで、店内もがらがら。



でも高級そうな感じのお店・・・



「俺は車だから飲まんけど、すぅちゃんは好きなもの飲みな」



「ありがとうございます!頂きます」



「あーでも俺も飲みたいわ!そしたら運転出来なくなるけぇ、ここら辺でホテル探さないとな」



そうか・・・



今夜は、2人きりなのか。


誰にも何にも邪魔されることないんだ。



でも・・・だめだだめだ。



「すぅちゃん?どうした?」



はっ!



「いえ、お肉の種類があり過ぎて迷ってました」


「俺このセンマイが食べたい。すぅちゃんこういうの食べれる?」



「あー見た目がダメであまり食べたことないけど、チャレンジしてみようかな」



適当に肉を選んで、私の為にお肉を焼いてくれて、サラダをよそってくれて、私が気を遣う隙間が無い!



私が何も出来ないみたいじゃない・・・



そんな私の気持ちなど知らないたっちーさんは肉を焼き続けたのでした。


たっちーさんの仕事のこと、岐阜での生活のこと。私の最近のこと。



主にそんな話をした。



こんな風にちゃんと向き合ってご飯食べたの初めてだから、緊張してしまった。



ビールを飲んでも全然酔わない。



いや。たっちーさんにやっぱり酔ってるよ。



困ったな。



やっぱり・・・



たっちーさん・・・・・・










良いかも!