1.慣れてきた
2.高額取引
3.痔の悪化
回想シーン
回想シーン
プリンターが一台、部屋の隅から旅立った。
メルカリで7900円。かつては紙とインクを吐き出していた機械が、今は数字としてスマホの画面に残っている。
彼はその数字を眺めながら、迷わずETHを買った。
売上全額を6360円分。手数料や相場の揺れを差し引いたあとでも、「不用品が資産に変わった」という感覚は確かだった。
彼にとってメルカリはフリマではない。
家庭内に眠るデッドストックを、流動性のある資産へ変換する装置だ。
さらにタイミングは良かった。
メルカリはキャンペーン中。配送料割引、ポイント還元。
彼はすぐに出品中の商品を見直し、
・配送料が重くなりがちな商品
・単価が高く、割引効果が大きい商品
を優先的にキャンペーン価格へ設定し直した。
「値下げじゃない。実質コストの最適化だ」
この工夫で、
買い手は送料込みでお得に感じる
売り手はポイント還元で実質手取りが増える
回転率が上がり、資金化が早まる
結果、彼の部屋は少し片づき、ETHの残高が増えた。
重要なのは額の大きさではない。
7900円は小さな数字だが、
「使っていないモノ → 売却 → 投資資産」
この流れが一度できると、家の中すべてがバランスシートに見えてくる。
キャンペーンは一時的だ。
相場も上下する。
だが、「不用品を資本に変える思考」は残る。
読者へのヒントはシンプルだ。
家にある使っていない物を棚卸しする
売却益は生活費に溶かさず、別の資産へ振り替える
フリマアプリのキャンペーンは“価格”ではなく“回転率”で使う
不用品はゴミではない。
まだ市場価値を持った、眠っている資産なのだから
回想シーン
バイトの現場へ向かう朝の車内。エンジン音の一定のリズムに合わせて、彼はスマホをスクロールしていた。
ポイ活。XtoEarn。言葉だけ見れば軽い遊びのようだが、彼にとっては立派な「資産形成の端材回収」だった。
レシーカを起動すると、見慣れない広告が流れた。
powl。
いつもなら即スキップする。だがその日は、なぜか指が止まった。
「広告も無差別じゃないんだな」
調べるほどに、ポイ活は“労働”というより“最適化”に近いとわかってきた。
位置情報を使う移動系アプリはバッテリーを削る。
バッテリーは電力で、電力はコスト。
つまり、スマホの消耗は見えない支出だった。
彼は設定画面を開き、バックグラウンド更新を切っていく。
不要な通知、不要な同期。
スマホを長く使うこと自体が、節約であり、稼ぎでもある。
その流れで辿り着いたのが「歩数ポイ活の併用」だった。
歩数はセンサー任せ。バッテリー消費は最小限。
しかも複数アプリで同じ一歩が複利的に価値を生む。
彼はメモに書き出した。
powl
エブリポイント
クラシルリワード
トリマ
ポイントタウン
共通点は、Vポイントに交換できること。
ポイントの出口を揃えることで、管理コストが下がる。
これは投資で言えば「通貨統一」だ。
現場に着くころ、彼は気づいていた。
ポイ活は小銭稼ぎじゃない。
時間・電力・注意力を、いかに価値に変換するかという経済行動だ。
一歩は小さい。
だが、その一歩を五重にカウントすれば、
ポケットの中には、確かに“鉱山”がある。
今日も彼は歩く。
給料表には載らないが、
確実に資産表の端が、少しずつ厚くなっていくのを感じながら。
朝、父が買ってきたマックを食べながら、私は今日の支出計画をぼんやり考えていた。
午後は家系ラーメン、プール、山登り。自然に触れて、体と頭をリセットする——はずだった。
だが、現実の資金の流れは、計画よりも感情に引っ張られる。
12時40分、家系ラーメンを完食。満腹感と塩分が判断力を少し鈍らせたのか、私はなぜかパチンコ店の自動ドアをくぐっていた。
1パチで4,000円。休憩札を初めて使い、自販機でアイスとパンとコーラを530円。ここまでで、**「娯楽費の見えない膨張」**が起きている。
一度冷静になろうと貯玉をお菓子に替えたが、人は損失を確定させた瞬間、リスクを取りたくなる。
行動経済学でいうプロスペクト理論だ。
私はヤケ気味に4パチへ、1万円。
選んだのはベルセルク。初めて見る台。
6玉目で大当たり。確変は入らない。それでも結果はトントン。
数字だけ見れば、パチンコでは500円のプラスだった。
だが、家に帰って財布を見れば、今日の純支出はほぼ30円。
景品のおやつがそれ以上の価値を持っていたからだ。
ここで大事なのは、「勝った・負けた」ではない。
体験に対して、いくら払ったかである。
帰り際、トイレの個室でスマホを拾った。
拾得者の権利を調べているうちに、本人が戻ってきた。
「ありがとうございます」と頭を下げられた瞬間、私は思った。
——善行もまた、見えない利回りを生む。
この日はプールにも山にも行かなかった。
だが、30円で私は学んだ。
人は満腹時に判断を誤りやすい
損失後はリスクを取りやすい
娯楽費は「金額」ではなく「期待値」で考える
善意は信用という無形資産になる
もしこれを30円の授業料だと考えれば、利回りは高い。
経済とは、数字だけではなく、
感情と行動の記録なのだ。
回想シーン
1440分間分の奇跡に
24時間分の1億円に
『今日1日』に感謝を
夢の中で、私は逃げ場を探していた。
両親と激しく言い争い、感情の置き場を失って精神病院に駆け込む。けれど「病気ではない」と言われ、行き場を失ったまま街を彷徨う。角を曲がった先で、赤い暖簾のラーメン屋がやけに気になり、そこで夢は途切れた。
目が覚めると、喉の痛みはまだ残っていた。現実に戻っても、心には小さな疲労が張り付いている。
——逃げ場って、ちゃんと用意したことがあっただろうか。
通勤電車の中で、ふと気づく。
「逃げ場」とは、物理的な場所だけじゃない。経済的な余白もまた、立派な避難所だ。
たとえば生活防衛資金。
家賃や食費など、最低3〜6か月分の現金があれば、仕事や人間関係で行き詰まっても「今すぐ壊れなくていい」という選択肢が生まれる。これは増やすための投資ではない。壊れないための資産だ。
もう一つは、小さな逃げ場予算。
月に1,000円でもいい。「何も考えず心を戻すため」に使っていいお金を、あらかじめ確保しておく。罪悪感のない支出は、精神の回復を早める。私にとってそれは、あのラーメン一杯だった。
面白いことに、こうした余白を作ると、無駄遣いはむしろ減る。
逃げ場がないと、人は衝動的に高い買い物をしてしまう。逃げ場があると、人は冷静に選べる。心の安定は、家計の安定に直結するのだ。
夜、喉に優しいスープを作りながら、私は決めた。
資産を増やす計画と同じくらい、自分が壊れない設計を大事にしよう。
非常用の現金。小さな楽しみの予算。そして、好きなラーメン。
逃げ場がある人生は、前に進める人生だ。
暖簾の向こうにある一杯は、今日も静かに私を守っている。
回想シーン
****
1440分間分の奇跡に
24時間分の1億円に
『今日1日』に感謝を
夜中、喉の痛みと体の熱さで目が覚めた。時計を見るとまだ暗い。いつもなら4時30分に起き、少しでも前倒しで一日を回す。でもその日は違った。
「今日は6時まで寝よう」
それは怠けではなく、判断だった。
彼は知っている。資産1億円という目標は、奇跡ではなく“積み上げ”でしか到達しないことを。早朝バイト、工場仕事、帰宅後の家計管理と投資の記録。時間を切り売りする労働は、今の自分にとって最も確実なキャッシュフローだ。だからこそ、体調を崩せば一日の生産性が一気に毀損する。
朝やるはずだった用事を、仕事終わりにずらした。
起床後に風邪薬を飲み、工場仕事の昼休みにももう一度。喉の違和感は残ったが、体は軽く動いた。結果、その日は欠勤もせず、ミスもなく終えられた。
帰り道、彼は考える。
体調管理は「支出」ではなく「投資」だと。
無理をして早起きし、悪化して休めば日当が消える。最悪、数日分の収入が飛ぶ。それは株で言えば、無駄な損切りを何度も繰り返すようなものだ。一方で、6時まで寝た90分は、将来のキャッシュフローを守るための“保険料”だった。
家に着き、ずらした予定を淡々とこなす。
今日という小さな一日は、確かに目標に向かって進んでいる。
資産形成で大切なのは、派手な一発ではない。
毎日働ける体を維持し、収入の再現性を落とさないこと。
それができる人だけが、長期で市場に残れる。
彼は風邪薬の箱を片付けながら、静かに確信した。
一億円への道は、チャートの上ではなく、こうした判断の積み重ねの中にあるのだと。