統一教会による「日韓海底トンネル」は本気だったのか──再び「週プレ」9月22号の記事から | TABIBITO

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13日に「週刊プレ」の記事を紹介したときに、チラッと「日韓トンネル」のことを“触り”程度で書いたら、それを見た方から「『日韓トンネル』の記事が気になる」と言われたので、あらためて取り上げたい。
 
「週プレ」9月22日号の中の「悪化する日韓関係を改善せんと!あの統一教会が本気で日韓トンネルを掘り始めた!!」と題した4ページの特集記事だ。
 
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1990年代に合同結婚式で注目された宗教団体「統一教会」(世界基督教統一神霊協会)が、佐賀県唐津と長崎県対馬で広大な土地を買収し、韓国へとつながる海底トンネルを本気で掘り始めているというのだ。

そのトンネルは、佐賀県の東松浦半島(唐津)から壱岐(いき)、対馬を経て、韓国の巨済島(きょさいとう=コジェド)、そして釜山(プサン)に至る計画で、全長は約230kmとなる。

 
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しかも、朝鮮半島に上陸した日韓トンネルは、「国際ハイウェイ」としてソウルを経由した後、北朝鮮、中国、そしてアジア諸国までを結ぶという、驚くべき「計画」だという。

その彼らの“本気度”を示す証拠として、統一教会系の財団である「国際ハイウェイ財団」は、すでに佐賀県唐津市、そして対馬、壱岐に広大な土地を取得しており、唐津はすでにかなりの掘削が進み、より国境に近い対馬でも、この6月から作業が始まっているのだそうだ。

実際に、その工事現場を訪れてみると、対馬から、トンネルの経由地である韓国・巨済島までは、直線距離で約66kmで、意外と近い。

問題の「日韓トンネル」は、対馬の玄関口である厳原(いづはら)港から車で40分、対馬の西海岸にある阿連(あれ)という集落の北にある土地を財団は取得した。

イメージ 5工事現場にたどり着くと、小高い山の斜面にポッカリ開いたトンネルの広大さに驚かされる。マッチ箱のような作業員宿舎の横に巨大なトンネルが10mほど掘られている。この広大な土地は、阿連の集落の人たちから譲ってもらったのだという。

実際に自分の土地を国際ハイウェイ財団(売却当時は、共和開発)に売った集落の男性も、初めは「海底トンネルなんて本当かぇ~と半信半疑」だったという。

 
 
実は、この「日韓海底トンネル」構想を、統一教会は19イメージ 680年代からもっていたが、資金難などが理由で頓挫(とんざ)してきた。

もっと時代をさかのぼると、戦前の日本にも「大東亜縦貫鉄道」という計画(日本からアジアやヨーロッパへと向かう鉄道をつくるという大プロジェクト)があった。
そして戦後も、日本の一部国会議員が精力的に動いたこともあったが、全長約230kmものトンネルを掘るのは、並大抵のことではなく、やはり話が進展することはなかった。


現在、国際ハイウェイ財団のホームページを見ると、「国際ハイウェイ構想の実現を目指し、日本とアジア、世界各国との連携を深め、文化的、宗教的、経済的交流並びに科学技術的交流を促進し、
日本とアジア、世界の自由と平和と繁栄に寄与する」とある。

そして、統一教会の創立者であり、この構想の立案者であった文鮮明(ぶんせんめい)氏(1920~2012)の遺志を受け継いだのが、「国際ハイウェイ財団」の大江益夫理事長で、彼は、現在の日韓関係の悪化について、「今起きていることはどうってことない問題です。日韓の問題というのは、政府と政府の問題。国のトップが代われば、状況も変わるというもの。日韓トンネルは、人と人を結びつけるものです。人と人の交流が始まれば、状況は良くなっていくものです」と語る。
 
 
ここで、記事では念のため「統一教会」について振り返る。たしかに、週プレを手にする若い世代で「統一教会」と聞いても「それって何?」というところだろう。
 
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1990年代、壷や印鑑などを売る霊感商法や、歌手の桜田淳子氏や元新体操選手の山崎浩子氏が韓国で行われた「合同結婚式」に参加したことなどが大きな話題になるなど、日本では「カルト教団」として認識している人も多い。
 
記事にはないが、1968年に日本と韓国で“共産主義撲滅”を旗印に「国際勝共連合」(機関紙「思想新聞)を組織し、保守タカ派の主張を掲げ、左翼やリベラルを徹底的に批判、選挙でも自民党の別働隊となっている。その設立には、岸信介や右翼活動家の笹川良一・児玉誉士夫なども参画した。
 
統一教会・勝共連合の政権与党・政治家との繋がりも深く、岸信介に続きイメージ 7、安倍晋太郎も深い金脈、人脈を持って支援していたが、現在の安倍晋三首相も切っても切れない深い関係があるとされる。
麻生太郎副総理、稲田朋美自民党幹事長など多くの自民党議員をはじめ、民主党や維新の会などにも協力関係にある議員がいる。
なお、麻生太郎副総理は「日韓トンネル研究会」の顧問を務め、衛藤征士郎衆院議員は「日韓トンネル推進議員連盟」代表である。
 
統一教会については、詳しくは「Wikipedia」などで調べてもらえばいくらでも出ている。
 
 
 
話を元にもどす。
大江理事長によれば、最終的には日韓トンネルの起点は福岡になる予定で、これが完成すれば、1988年に開通した青函トンネルの53kmや、1994年に完成した英仏海峡トンネルの49.2kmよりも長い、世界最長の海底トンネルとなるという。

そのあと、大江理事長にインタビューしているが、その中で「統一教会の創立イメージ 3者である文鮮明が亡くなって2年たちますが、なぜ今、このトンネルを掘ろうとしているのですか?すでに日本と韓国の間には空路も航路もあるのに……」との質問に次のように答えている。
「文先生の遺言だからです。先生は遺書のようなものを残しているわけではありませんが、世界各国を道路でげることで世界平和を実現しようとしていました。『日韓トンネル』を完成させることは、文先生の悲願だったのです。もともと『国際ハイウェイ構想』というのは、1981年11月に文先生がソウルで開催された国際会議で提唱したもので、その中にも日韓トンネルは含まれています」
 
また、これまでの工事は、韓国の法律が厳しいために「日本側だけ」でやっているそうで、今まで「唐津の調査斜坑で120億円」をつぎ込んでいるが、今回の対馬の工事も「寄付を募り1000万円集まったので10m掘った」として「今後このようなことを繰り返していく」という。唐津の工事も「540m堀り進め、第3期工事が終ったところ」だという。
しかし、「全体の予算は最低10兆円は必要」だが、「日韓両国の合意があれば10数年で開通させることができる」とも述べている。
 
最後に記事は、「日韓関係の改善を祈り、文鮮明氏の遺志を守り、そして日韓両政府の国家プロジェクトとなることを願って、巨額の寄付金を集めてトンネルを掘り続ける統一教会。このあまりにピュアな思いは、どこにたどりつくのか――。」と疑問を投げかけている。
 
 
 
今は目立たない「日韓海底トンネル」だが、祖父の代から統一教会と親密な安倍首相や、同じく関係が深く、麻生セメント社長だった麻生副総理らがその気になれば、大江理事長の言う、日韓両政府の「国家プロジェクト」にして、「10数年で建設」も“夢”とは言い切れなくなってくる。
問題は韓国政府だが、安倍首相がどうも「韓国大統領との会談を行いたい」と表明しているようだし、もしや、もしや、冷えた日韓関係修復のためのに“経済協力”として「日韓海底トンネル」を持ち出して両国共同の「国家プロジェクト」にする──なんてつもりではないだろうな……というのは、あまりに“深読み”しすぎだろうか。
 
いくら大型公共事業の無駄遣いが好きな「アベノミクス」とはいえ、そんな壮大な無駄遣いに“本気”になることはないだろう…と思いたい。が、しかし、これも祖父の岸信介氏の「遺志」だったりすると“本気”になることもあるかもしれない。
 
 
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