わにわに日和 「きれいなおかあさん」
善光寺にはたくさんの鳩がいる。鎌倉時代にはすでに住み着いていたのでは、という説も。寺と鳩は、長年の好みというやつで、切っても切れない縁になっている。本堂に掲げられた「善光寺」の額をご存知だろうか。「善」の字には、鳩のシルエットが使われているほどだ。
写真は善光寺山門脇の豆売りのおばあさん。豆は鳩用で、直径10センチほどの木の皿に盛られていた。一皿10円だったかな。
―中略―
これから50年を費やしてもいいから、世界遺産に胸を張って登録できるような善光寺にしてほしい。以前、写真の豆売りのおばあさんが見苦しいという意見があった。今はもうそのおばあさんの姿はないが、おれは見苦しいとはちっとも思わない。逆に善光寺らしい風景だったと思っている。RC三重塔が美しくて豆売りが見苦しいという感覚は、おれにはどうしても理解できない。
その2
風待月の庵 より
私が子供の頃から山門前の左右に1対の鳩の豆売りのおばあさんがいた。その時とまったく変わらない商売道具が並んでいる。ついたてとこたつ、豆を浸すためのバケツ、お皿。変わったのは豆の値段だけだ。どういうものかいつもふたりとも「おばあさん」だった。子供の頃見たおばあさんが生きているとは思えないから、どこかで交代があるのだろうけれど、いつ見ても同じくらい年取ったふたり組。「70歳以上に限る」という就職条件があるんだろうか。
善光寺の鳩もよく知っている。この台の上に並んでいる豆には冬場のえさのない時でも絶対手を出さない。・・・お二人を見ているとメアリー・ポピンズに出てくるウエストミンスター寺院の豆売りのおばあさんを思いだしてしまう。夕暮れになるとこの小さなこたつの中にすべての鳩をかくまっている・・・という幻想も悪くはない。
豆売りの声出さぬまま春炬燵
次回に続きま~す