女川 史上最大の復興 -8ページ目

<女川2号機>検討会「地震時安全の証拠を」

 東北電力女川原発2号機(女川町、石巻市)の安全性を検証する県の有識者検討会は23日、仙台市内で第4回会合を開いた。東日本大震災時の原子炉の状況に関する東北電の説明に対し、委員からは「再び地震が起きても冷温停止できるという証拠を県民に示すべきだ」との意見が出た。
 東北電は原子炉停止前後の炉内圧力、水温、水位のデータや、その後の目視点検結果を挙げて原子炉に異常がないことを強調。出席した8人の委員は「停止、冷却が正しく行われたか、再稼働しても次の地震に耐え得るのか、証拠がなければ県民は不安だ」などと、より具体的な説明を求めた。
 ヒューマンエラーの観点から目視の信頼性を問う意見もあり、「異常が『ない』ことを確認するのは本来難しいことだ」と詳細な点検の必要性を指摘した。
 設備点検記録に4000件超の不備が見つかった問題の再発防止策に対しては、「安全管理が劣化しない仕組み作りが重要だ」との声が上がった。

女川被災経験共有を 規制委東北電社長と意見交換

 原子力規制委員会は22日、原子力施設の安全性向上に向けた取り組み強化を目的とした会合を開き、東北電力の海輪誠社長と意見交換した。規制委は東北電に対し、東日本大震災で被災した女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の経験を他社と共有することなどを求めた。
 田中俊一委員長は、深刻な事故を免れた女川原発について建設当初に敷地高を14.8メートルとした経営判断や、東北電の震災対応を高く評価。貞観津波(869年)の調査結果などを津波対策に反映しなかった東京電力福島第1原発と対比し「女川の貴重な経験を他の事業者に定着させるよう努力してほしい」と述べた。
 海輪社長は、福島の事故が供給エリア内で起きたことを踏まえ「(再稼働へ)地域の理解を得るのは相当高いハードルと感じている。他社以上に安全に意を用いたい」と述べた。
 規制委はほかに、管内に他社原発を抱える事業者として、電源車や可搬式ポンプの接続口を規格化することの検討などを求めた。東北電は新規制基準の適用事例を文書化して審査を円滑化することや、原子力規制庁に発電所ごとの担当者を置くことを要望した。
 規制委は昨年10月から、原子力施設を持つ12事業者の経営トップと意見交換しており、今回が7社目。

<女川協定>仙台市長、異常時通報「範囲拡大を」

 奥山恵美子仙台市長は21日の定例記者会見で、女川原発(女川町、石巻市)の半径30キロ圏に位置する県内5市町と東北電力が異常時の通報などを盛り込んだ原子力安全協定を結んだことについて「一歩前進だが県全域で同一のスピードで情報提供されることが必要だ。(提供範囲が)もう少し広がればいい」と述べた。
 昨年12月の衆院選開票時に起きた青葉区選管の票不正集計事件をめぐる職員の処分に関しては、同日までに職員9人から聞き取り調査をしたと説明。処分の時期は「8月の市議選は信頼される形で実施すべきで、そこまではかからないと思う」との見通しを示した。

<七十七銀津波訴訟>津波予見 二審も否定

 東日本大震災の津波で七十七銀行女川支店(宮城県女川町)の屋上に避難した行員ら3人が死亡・行方不明になったのは、銀行が安全配慮を怠ったためだとして、家族が銀行に計約2億3000万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、仙台高裁は22日、津波予見を否定し請求を棄却した仙台地裁判決を支持し、家族の控訴を棄却した。

 訴訟の争点は(1)銀行が津波被害を予見できたかどうか(2)屋上への避難の是非-など。家族側は「津波が支店を襲う可能性は予見できた。さらに高い場所へ逃げられない屋上を避難先に指定したのは誤りだった」などと主張。銀行側は控訴棄却を求めていた。
 昨年2月の地裁判決は、津波の予測最高水位を5メートル級とした震災前の県の報告書を挙げ、「支店屋上を越える20メートル近い津波を予測するのは困難だった」と指摘。「予想される津波の高さから屋上を避難先に選んだのは合理的だ」と判断した。
 控訴審は昨年6月に始まり、ことし1月に結審。高裁は和解協議を続けて和解の素案を提示したが、家族側が拒否していた。
 地裁判決によると、13人の行員らが震災直後、支店長の指示で支店屋上に避難したが、全員が屋上を越す津波にのまれ、支店長を含む12人が犠牲になった。

<七十七銀津波訴訟>あす控訴審判決

 東日本大震災の津波で七十七銀行女川支店(宮城県女川町)の屋上に避難した行員ら3人が死亡・行方不明になったのは銀行が安全配慮を怠ったためだと、家族が銀行に計約2億3000万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が22日、仙台高裁で言い渡される。仙台地裁判決は銀行が津波を予見できなかったと認定しており、「予見可能性」をめぐる高裁の判断が焦点となる。

 争点は表の通り。予見可能性と屋上への避難の是非、事前の防災態勢をめぐり、銀行の対策や震災直後の行動が問われた。
 家族側は(1)3人が避難した高さ約13メートルの屋上は支店近くの高台と違い、さらに高い場所へ逃げられない(2)内閣府の津波避難ビルのガイドラインも「高台への避難が大原則」としている-と主張、地裁判決の破棄を求めた。銀行側は控訴棄却を求めている。
 昨年2月の地裁判決は、津波の予測最高水位を5.3~5.9メートルとした震災前の県の報告書を挙げ、「支店屋上を越える20メートル近い津波の予測は困難だった」と判断。「予想される津波の高さから屋上に避難したのは合理的」と述べた。
 控訴審は昨年6月に始まった。高裁は地裁同様、現地を視察し、支店跡地から高台までの距離などを確認。訴訟はことし1月に結審した。
 高裁は和解協議を続け再発防止につながる和解の素案を示したが、家族側は「支店の被災を具体的に踏まえていない」との立場を崩さず、協議は3月で打ち切られた。
 地裁判決によると、13人の行員らが震災直後、支店長の指示で支店屋上に避難したが、全員が屋上を越す津波にのまれ、支店長を含む12人が犠牲になった。

女川原発 周辺5市町と東北電が安全協定締結

 東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)の半径30キロ圏に位置する登米、東松島、涌谷、美里、南三陸の宮城県内5市町と東北電は20日、原子力安全協定を締結した。5市町は併せて県と覚書を交わし、原発再稼働などにつながる設備変更時には、県を通じて東北電に意見を述べられるようにした。

◎設備変更時の「事前了解」盛らず

 ただ、協定に設備変更時の「事前了解」は盛り込まれなかった。5市町が再稼働に必要な「地元同意」の範囲に含まれるかは担保されず、一部自治体が主張していた「立地自治体並み」の協定からは後退した。
 協定は全13条で、東北電から5市町に対する「情報公開」「原発異常時の通報連絡」や、県が行う「立ち入り調査への同行」などを定めた。設備変更時の対応については県、立地自治体と事前協議した際に東北電が5市町に「速やかに報告する」との内容にとどまった。
 県との覚書は2条。東北電との事前協議に関して(1)あらかじめ回答内容を5市町に説明する(2)5市町の意見を付けて東北電に回答する-といった県の果たす役割を明記した。
 原発から30キロ圏は東京電力福島第1原発事故後、重大事故に備える防災の重点区域「緊急防護措置区域(UPZ)」に含まれた。5市町は2013年7月、UPZ関係自治体首長会議を設け、協定締結を目指してきた。


 宮城県庁であった締結式で、首長会議代表幹事の布施孝尚登米市長は「新たな出発点に立った。東北電は情報をわれわれと共有し、最大の安全対策を重ねてほしい」と求めた。東北電の海輪誠社長は「協定締結で災害発生時の(5市町への)連絡内容、方法が明確になった。連携強化を図り、高い安全レベルを目指し努力する」と約束した。

<女川協定締結>再稼働の議論は棚上げ

 東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)の半径30キロ圏の周辺5市町が東北電と20日に結んだ安全協定は、原発再稼働の議論を棚上げする形で実現した。協定締結後、宮城県庁で記者会見した5首長は「これがスタートライン」「必要があれば改定ができる」と口をそろえたが、再稼働の判断に5市町の意見が反映されるかどうかには不透明さが残ったままだ。

 登米市の布施孝尚市長は「『今回の協定が全てではない』というのが5市町共通の認識だ。見直しが必要な場合は申し入れる」と総括。東松島市の阿部秀保市長は「協定は再稼働の同意手続きではないことは確認済み」と強調した。
 協定では、周辺5市町は再稼働に向けた原発の設備変更の是非を判断する立場になれない。協定と同時に県と交わした覚書に基づき、県を通して東北電に意見を伝えられるだけ。しかも覚書を文面通りに解釈すれば、設備変更に対する県の判断にも関与できない。
 美里町の相沢清一町長は「文面上はそうなっているが、これまでの事務折衝からわれわれの意見が県の判断に反映されると思っている」と主張した。

 協定当事者の東北電の海輪誠社長は「(覚書の)意見は真摯(しんし)に受け止め、誠実に対応する」と説明。再稼働の是非を判断する地元の範囲については「(安全協定で)事前了解を明記している立地自治体は確実に含まれる。(周辺5市町など)その他はどういう理解を得るべきかも含めて関係者と相談して決めたい」と述べるにとどまった。
 県環境生活部の佐野好昭部長は覚書締結後、取材に対し「今回の覚書と再稼働は別の話。仮に再稼働を議論する場合、まず国が具体的な手続きや考え方を示してほしい」と話した。

<女川協定締結>周辺自治体に権限を/過酷事故想定し改定必要

◎東大大学院 金井利之教授に聞く

 東北電力と女川原発(宮城県女川町、石巻市)の周辺5市町が20日、安全協定を締結した。焦点だった原発の設備変更時の「事前了解」は盛り込まれず、現状では周辺自治体が再稼働の可否を自主的に判断するのは難しい。協定の問題点や今後の改善点などを東大大学院の金井利之教授(自治体行政学)に聞いた。

 -立地自治体と同等の協定を求める周辺自治体と東北電との溝が、なかなか埋まらなかった。
 「想定する事故のレベルが双方で違っているためではないか。電力会社は事故の影響が原発の所在する自治体で収まると考え、周辺市町村は福島のような被害を想定しているのだろう」
 -妥協策として、宮城県が周辺市町の意見を聞く覚書を締結した。
 「意見が反映されるかは不透明だ。県が周辺市町の意見を反映しなかったときの対応策がない」
 -協定締結を踏まえ、東北電は原発事業とどう向き合うべきか。
 「過酷事故が起きた際は避難、帰還、復興など相当な困難が予想される。事故は事業経営に起因するのだから、電力会社は原因者責任に基づき、避難・復興基金を設立するなど事前の対策を真剣に検討すべきだ」
 -原発の立つ「所在自治体」と周辺自治体で権限に差がある。一般的に言われる立地自治体の範囲はどうあるべきか。
 「立地自治体イコール所在自治体との考えは、深刻な事故が起きないという安全神話時代の話。現実的に被害を受ける可能性のある自治体は立地自治体になりうる。どの範囲が立地自治体になるかは、各市町村が自己決定権に基づいて決めるべきで、国や電力会社が決めるべきではない」
 -安全協定は原発の安全性を高めると思うか。
 「ないよりあった方が高まると推論できる。ただ、所在自治体は事前了解のような事実上の権限があっても、経済的、財政的メリットとセットで議論してしまう。そうすると、安全性が高まらない可能性はある。メリットよりもデメリットの方が大きい周辺自治体に事実上の権限があるならば、安全性は確実に高まる」
 -今後、協定を改善する場合に留意する点は。
 「今回の協定は過酷事故が起きないことを想定したもので、過酷事故に対応する内容に改定すべきだ。そもそも前提になっている所在自治体と東北電との協定が、福島の原発事故後も改定されておらず不十分だ」

<七十七銀津波訴訟>家族を見守り支える人々

 東日本大震災で死亡・行方不明になった七十七銀行女川支店(宮城県女川町)の行員らの家族を支える人たちがいる。2012年9月の提訴から2年7カ月。家族の気持ちを受け止めてきた。

 支店跡地を臨む高台に、石で造られたモニュメントが立つ。スーツと制服を着た男女の行員がほほ笑む姿が刻まれ、各地から訪れた人々が手を合わせる。
 宮城県川崎町の彫刻家平泉さんが手掛けた。「残された家族の思いを何とかくみ取り、少しでも満たすことができれば、という思いを込めた」


 14年秋ごろ、家族側から制作依頼があった。慰霊の場にとどまらず、悲劇の記憶と教訓を伝えるにはどんなデザインがいいのか-。試行錯誤の末、3月の建立直前にやっと完成した。
 台座には「命を守るには高台へ行かねばならぬ」と文字を刻んだ。平泉さんは「ここで起きたことを身近に感じてほしい」と願う。
 石巻市のダイビングショップ代表高橋さんは女川町の高松さんらと海に潜り、捜索活動を続ける。高松さんの妻が行方不明のままだ。
 高橋さんは、一審仙台地裁で争われていた13年9月ごろ、来店した高松さんに直訴された。「ダイバーの資格を取りたい」。妻を捜し出すという。高橋さんは「思い詰めた印象だった」と振り返る。
 捜索では被災者の免許証やアルバムを見つけ、高松さんは明るい表情を見せるようになった。高橋さんは「高松さんたちが諦めない限り捜索する」と言う。7
 大崎市の佐々木さんは震災後、田村さんを傍らで温かく見守る。田村さんは長男で元行員の息子を失った。
 2人の親交は30年近い。佐々木さんの三男と、田村さんの息子は同級生。失意の底にいる田村さんを孤立させまいと、田村さん方を訪れ、お茶を飲み世間話をした。田村さんは「わらにもすがる思いで気持ちを吐き出し、優しく受け止めてくれた」と感謝する。
 佐々木さんは「犠牲を繰り返さないため、高裁には良識のある答えを出してほしい」と切望する。

女川町 地域交流センター…中心部に11月完成予定

 女川町中心部のにぎわい創出拠点となる(仮称)地域交流センターの本格的な着工を前に16日、女川浜の現地で安全祈願祭が行われた。同センターは町民有志で組織するワーキンググループのアイデアをもとに、町内外の各世代が活用できる多様な機能を備える施設。周辺のテナント商店街などと連動し、町民や観光客が気軽に立ち寄れる“まちの居間”として整備を進める。
          
 安全祈願祭には、町や工事関係者ら約20人が参列し、くわ入れなどで工事の安全と工期内での完成を願った。須田善明町長は「センターが完成する頃にはテナント商店街など町の姿も見える。長きにわたり人と人の交わりの拠点としての効果が期待される。関係団体と連携して、町の中核を作っていきたい」と期待を込めた。
        
 交流センターは、国道398号沿いの造成地(海抜6メートル)の約2800平方メートルに鉄骨造平屋で建設。「居心地の良い、まちの居間となるにぎわい交流拠点」をコンセプトに、施設中央の広いロビー(約300平方メートル)を囲むように多目的ホールや音楽室、調理室、キッズコーナーなどを配置。女川町商工会の事務所なども置かれる。
         
 施工は大和リース(株)仙台支店が担う。工事費は5億4500万円で国の復興交付金を活用。11月末の完成予定で、運営は指定管理者に委託する見通し。