橘外男の怪談
クソ暑いので、怪談の話を。
小説として書かれた怪談の中で、ズバ抜けて怖いのが橘外男の諸作だろうと思う。
実際に幽霊に出くわすとしたら、恐らくこういう形でなんだろうな、と思わせる強烈なリアリティーがある。
特に、「逗子物語」「蒲団」「棺前結婚」の三作品は、すばらしい傑作だ。
橘外男(たちばな・そとお)は知名度が低く、異端の作家として時々話題になる程度だが、直木賞も受賞している実力派だ。
軍人の子として生れながら、厳格な父親に反発して不良街道を突き進み、ある犯罪で塀の向こうへ行ってしまったという強烈な経験をしている。
出所後は改心して医療関係の仕事などに携わり、父に対する罪滅ぼしの意味で小説を書き始めたという。
怪談の他、人獣混交ものや自伝的作品など、様々なジャンルの作品を発表した。
本当に怖い怪談・リアルな怪談を読みたい方は、ぜひ上の三作品を。
私は「棺前結婚」が好きだが、タイトルが落語みたいで、なんとかならなかったのかと思う。
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深夜の猫祭り
先日「猫のまほう」の深夜コースを初体験しました。
夜中の12時過ぎに入店し、朝の5時半まで猫付き合い。
客は自分の他にカップルが一組いたが、1時過ぎ頃に帰ってしまったので、後は自分だけ。
さぞかし楽しいだろうと思っていたが、さすがに疲れました。
猫たちもなぜかイライラし、ケンカも多かった。
猫同士のケンカの仲裁をしているうちに、「オレは一体何しているんだろう?」と疑問を感じたりして。
明け方になると、猫たちが窓際に集まりだした。カラスの鳴き声に導かれたのだろうか?
人気者のレオンはトイレの入口で寝ていた。
5時間に及ぶ猫との交際は、さすがにキツかった。
でもまたしばらくすると、行ってしまうだろうな。
エッフェル塔の潜水夫(1)
小学生の時、教室の一番後ろに学級文庫があった。
そこには子供向けの本がたくさん並んでいたが、その中に「エッフェル塔の潜水夫」という本があった。
その本は、オリジナルを圧縮したダイジェスト版で、文庫サイズで数十ページあまりの小冊子だった。
多分、何かの雑誌の付録だったと思う。
漫画ばかり読んでいた自分には、活字を読むのが苦痛だったのだが、ある時その本を手にした。
なぜ読み始めたのか、その理由はもう思い出せない。
しかし、怖くておもしろいという思い出が残った。
その後、中学生になってからミステリーを耽読するようになり、乱歩を中心に手当たり次第に読んでいった。
そして20代も半ばになったころ、どういう訳か「エッフェル塔の潜水夫」を思い出した。
子供の頃の、怖くておもしろい物語の思い出。
「あれもミステリーだったんだよなあ」と思い、急に読んでみたくなった。
しかし、書店や図書館でもその小説はなかなか見つからなかった。
ミステリーの名作案内などにも載っていない。
自分の記憶では、エッフェル塔の展望台を、潜水夫姿の怪人がうろつきまわるというシーンがあったが、
エッフェル塔と潜水夫という組み合わせが異常である。
「オレは何か勘違いしているのだろうか?本当にそんな物語があったのだろうか?」
という疑問が湧いてきた。

